第17話
健太さんのワゴン車に乗ってダンジョンへ向かった。
三日月さんとはまだ打ち解けていなかったので、それぞれ前と後ろに分かれて座った。
「吉田さんはチームを抜けたようですね。他のチームに移ったそうです」
「あ、ええ……」
それ以上のコメントはなかった。吉田について長く話す必要はなかったからだ。
やがてダンジョンに到着し、前の席の春夜が車のドアを開けた。
「では、行きましょうか」
三日月が小さく頷いた。
ポータルを通ってすぐに10階層に足を踏み入れると、10階層のモンスターが現れた。
10階層のモンスターはリザードマン。剣と盾を持っている点では、スケルトンと共通する部分があった。
だがスケルトンより力が強く、重心も低いため注意が必要だった。人間とはやや異なる剣術を使うはずだ。
(人型ではないが、剣を使うモンスターか)
このようなモンスターは初めてだった。慎重になった方がよさそうだ。
「グルルルッ!」
慎重に足を踏み入れたダンジョンで、リザードマン4体に遭遇した。
リザードマンは非常に速い速度でこちらへ突進してきた。そして、その瞬間。
「アイスランス」
ドガガガンッ!
突進してくるリザードマン二体に、三日月の魔法が突き刺さった。
そして春夜は残りの二体に向かって駆け寄った。そして、その瞬間。
(軽い……?)
体がまるで羽のように軽く感じられた。
いつもよりずっと少ない力で素早く動くことができた。
リザードマンが振るう剣の軌跡が、以前よりずっと遅く見えた。敏捷性の力だった。
スッ。
春夜は最小限の動きでリザードマンの剣をギリギリで避け、懐に潜り込んだ。
そして自然に剣を振るった瞬間。
シュッ!
ただ一振りで、リザードマンを一刀両断した。
鎧のない箇所を狙ったとはいえ、これほど容易く一刀両断できるとは思わなかった。
(力が強くなったせいか?)
敏捷と力の両方が強くなった状況。体は軽く、剣筋も鋭くなった。
もちろん急な変化に適応しきれていない面もあったが、決して不快ではなかった。
(強くなった……)
驚いたのは春夜本人だけではなかった。三日月もまた驚いた表情で春夜を見つめていた。
春夜が血振りをして剣を鞘に納めて戻ってくると、三日月が驚いた表情で言った。
「春夜、強くなったのね……」
「ステータスを上げたら、少し変わりましたね」
「じゃあ、それまで上げてなかったの?」
「ええ。初期状態のままでした」
「……変な人」
(三日月さんも大概変だけどな)と思ったが、春夜はあえて口には出さなかった。
二人は再びダンジョンの奥へと足を進めた。
今度は以前よりずっと自信に満ちた足取りだった。
さほど時間をおかず、さらに多くのリザードマンの群れが現れた。今度は五体。
彼らは以前よりずっと組織的に動き、春夜と三日月を包囲しようとした。
「フリーズ!」
三日月が先制魔法で二体を凍らせると、春夜はまるで嵐のように残りの三体に襲いかかった。
リザードマンは素早く強力だったが、圧倒的に強くなった春夜の相手になるほどではなかった。
10階層まで難なくクリアした後、春夜が尋ねた。
「三日月さん、10階層も楽になったみたいですし、そろそろ下りませんか?」
「11階層へ?」
「はい」
「……だめ」
あれ?こんな返事が来るとは思わなかった。どうして駄目なんだろう?
「11階層に下りるには、クランの許可が必要なの」
「許可、ですか?」
「うん。11階層に下りるにはボス戦をしないといけないから」
ボス戦?ということは、今朝伊藤さんと一軍がやっていたボス戦を、俺たちもやらないといけないってことか?
「出たら、健太さんに相談しましょう」
「はい。わかりました」
そうしてその日は、10階層での狩りを終えた。
***
健太のワゴン車に乗り込むと、いつものように健太は元気な声で春夜と三日月を迎えた。
「お疲れ様でしたッス、お二人さん! 今日も順調だったみたいッスね! 懐がホックホクですな!」
魔石はインベントリに入るので懐が膨らむことはないのだが、健太なりのジョークなのだろう。
小さく笑って、春夜は健太に言った。
「健太さん、お願いがあるんですが」
春夜が真剣に切り出すと、健太は少し驚いたような顔をしつつも、特有の快活さを失わなかった。
「へいッ! 何なりとお申し付けくださいッス! この前田健太、春夜さんのことなら一肌脱ぎますッスよ!」
「10階層の次、11階層へ下りたいんです。ですが、三日月さんの話では、10階層にはボスモンスターがいて、それを倒さなければならず、クランの許可も必要だとのことでした」
健太は一瞬目を丸くしたが、やがて頷いた。
「なるほど、もう10階層のボスに挑戦するおつもりッスか! お二人の成長速度は本当に驚異的ッスね!」
彼は少し考え込むような素振りを見せたが、やがて意を決したように言った。
「わかりましたッス。まずはクラン長にご報告しますッス。おそらく前向きな返事が期待できると思いまっス。お二人の実力なら10階層のボスくらい問題ないでしょうからね! 念のため、ボスに関する情報も事前に調べておきますッス!」
「ありがとうございます、健太さん」
「いえいえ! これが俺の仕事ですからッス! それでは今日はゆっくりお休みになって、明日ご報告しますッス!」
車はクランの建物を離れ、春夜の家へと向かった。
三日月は相変わらず窓の外を見ていたが、いつもよりその表情は少し柔らかく見えた。
*****
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