妖霊調査官の受難記 ~砂漠に昇る災禍の星~

平本りこ

妖霊調査官の受難記

序文

 今は昔、二本の大河に挟まれた砂漠の肥沃地帯には、人間に似て人間にあらざるモノが住んでいた。妖霊ようれい――ジンと呼ばれる存在だ。


 妖霊の容貌や能力は多種多様。ある者は人間のように振る舞い、ある者は獣や砂塵となって荒野を駆ける。しかし皆共通して、瞳は紫の色合いを持っていた。


 彼らを妖霊たらしめるのは、血液の代わりにその身に流れる炎と、超常現象を引き起こす妖力ようりょくの塊である魂だ。


 妖霊は人語を介するが、時に人を騙し、時に人肉をくらう。当然人間は彼らを恐れ、距離を置くようになる。


 そうして幾星霜。


 ある時、茫漠とした砂の世界に一人の覇王が現れる。彼は砂漠に都を築き、周辺国家や遊牧部族を平定し、やがてここに、聖国せいこくと呼ばれる帝国が勃興する。


 時が過ぎ、人間の世では敵なしの大国へと成長した聖国だが、妖霊の存在には手を焼いた。そこで聖王は、妖霊の住まう砂漠にとある官吏を派遣する。


 その名を、妖霊調査官ようれいちょうさかん


 これは、初代妖霊調査官の受難を記した手記である。

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