運動音痴令嬢は転……ばない

@159roman

運動音痴令嬢は転……ばない (前編)

 なぜだかわからないけれど気づいたら、

大好きだった乙女ゲームの世界に転生していた。

 

 「愛の園に愛は集う」


 よくある明るく可愛いヒロインが攻略対象のイケメンたちに好かれて、

その中の一人を選んでハッピーエンド。


 乙女ゲームの中でもヌルゲー。

 イベントを取りこぼしても好感度が上がっていくので簡単にクリアできて、

スチル回収のための周回も余裕。


 攻略対象キャラにトラウマや闇があるわけでもなく平和。

 キャッキャウフフと過ぎていく学園生活でイケメンたちと戯れるだけの簡単なお仕事。


 ちなみに魔法もないし魔物も出ない。

 魔物はいらないけれど魔法がないのはちょっと残念。


 ゲーム内容は控えめに言って面白みに欠けていたけれど、

攻略対象キャラが魅力的で大好きだったことをぼんやり思い出した。



 そして、悲しいかな私が転生したキャラは悪役令嬢。

 しかも攻略対象のロルフ・サザートン侯爵令息ルートの悪役令嬢こと

 キャロル・ホロウェイ伯爵令嬢こそが今世の私。

 

 私が現在10歳なのでゲームが始まる5年前というところ。

 まずはゲームがどう転んでも将来破滅しないようにと考えて自己研鑽を

することにしたのでした。



 前世では異世界転生ものの小説も嗜んでいた私は期待していた、

転生チートに。


 フフフ、何もなかったよ。

 それどころか、もともとスペックが高いはずの悪役令嬢なのに

前世から引き継いで運動音痴とはこれいかに。


 もとからの運動嫌いに運動音痴。

 カーテシーでは足がプルプルするし、ドレスが重くて動きづらくて転ぶ。

 靴も歩きにくくて転ぶ。


 そういえば小さなころからよく転ぶ子でしたわ。

 運動音痴はもう諦めて、せめてお勉強とマナーは頑張りました。




 そうこうしているうちに12歳になりました。


 今日は婚約者候補とのお見合いのお茶会。

 ついにゲームの攻略対象とリアルで対面。

 

 ゲームでは私ことキャロル・ホロウェイ伯爵令嬢の婚約者だった

攻略対象のロルフ・サザートン侯爵令息。


 「マッ!」

 (マジで攻略対象が目の前に生きている!)


 なんなのこのキラキラオーラ!

 藍色の髪の毛はサラサラツヤツヤ!

 瑠璃色の瞳は知性的!


 語彙力失うわー。

 脳内お祭り騒ぎですわー。


 まだ少年なのに声もいい。

 かわいらしくも理知的なお声。

 小さな紳士がいる!

 ニッコリ微笑んでくれた表情にハートを撃ち抜かれましたよ!


 転んだ。

 物理的じゃなく推し変的に転んだ!


 前世の私はメインヒーローの王子様が好きだった。

 金髪碧眼のいかにもなキラキラ王子様が推しだった。


 そう、だったのです。


 今この時より私の推しはロルフ・サザートン様です! 

と宣言いたしますっ!



 推しを目の前に大量供給を浴びて記憶を失っているうちに婚約が決まっていました(白目)



 将来の破滅を避けるために考えていたことのひとつに、

攻略対象のロルフ様と婚約しないというのがあったけれど達成できなかった。

 気づいたら婚約していたからね。仕方ないね。

 

 婚約者になったのでこれからも推しを浴びることができるので

結果オーライということで。


 あと私にできることは、悪役令嬢っぽくならない。

 人に優しく、ヒロインに優しく。

 ロルフ様と円満にを心掛ける所存です。


 実際のところ、悪役令嬢の破滅はゲームの中で具体的に描かれていないかったのでちょっと怖い。

 楽観的に考えたら何もなさそうだけど。

 エンディングで婚約破棄されたら新しい婚約者探しに難航するだろうくらいなら

許容範囲かな。


 推しを間近で摂取できる幸せにくらぶれば!


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