『ピヨピヨ聞き込み中!相談役ユイちゃんと街角バズ探し』
休日の商店街。スマホ片手に軽快な足取りで現れたのは、キャップを後ろにかぶった大学生風の男。手には自撮り棒付きのスマホ、胸には「ハルピヨちゃんねる」と手書きの札。服の袖からピヨピヨ鈴が鳴る謎の小道具も。
「どーもー!本日も開店、誰得ストリート人生相談!聞き役はこの無言系JK、ユイちゃんでーす!」
……うるさい。
カナメは目をそらしながら横に立つユイをちらりと見る。彼女はいつも通り無表情だが、今日はなぜかこの企画に頷いた。いや、なぜ。
「いや〜、喋らないって逆にバズるっすよ。マジで。静寂の中にこそ真実があるってやつっす」
「それ、君が昨日見た自己啓発動画の受け売りだろ」
そうこうしているうちに、最初のインタビュー相手が現れた。
「え、悩み……あー、まあ最近、美容室の指名が減ってて……。やっぱ動画で選ばれる時代なんすかね」
美容師の女性はぽつりぽつりと話し出す。ユイは相づちも打たず、ただ静かに見つめる。だがなぜか、それだけで女性はどんどん語り出す。
「……でも、話を聞いてくれるお客さんもいるんです。そういう人に救われてるのかも」
話し終えた彼女は、なぜか肩の荷が下りたような顔で去っていった。
「え、今の録れてた!?録れてた!?スピリチュアルすぎて逆にエモいっす!」
二人目はタクシー運転手の老人。
「孫と遊びたいけど、息子と気まずくてな……。もう十年、会ってねぇ」
ユイ → うんともすんとも言わない
老人 → 涙目
三人目は営業マンの青年。
「怒鳴られてばっかで、自分が何のために働いてるのか、わかんなくなるんすよ。あと最近、家のWi-Fiが激遅で、それもキツいっす」
四人目、カフェの店員。
「舞台、好きなんです。でも夢、叶いそうもなくて……。あと店長がめっちゃサブスク課金してて話が合わない」
皆、なぜかユイにだけは話せた。
撮影後、ハルピヨは言った。
「なんか……俺も話していいっすか?いやこれ、台本じゃなくてガチで」
カメラを止めて、ぽつりぽつりと話し始める。
「俺、昔、ちょっとネットでやらかして。炎上とかじゃないけど……学校、行けなくなったっす。動画撮るのって、自分がここにいるって証明したかったのかもっす」
ユイは変わらず、黙って彼を見ていた。ピヨピヨ鳴る風鈴がシュールに鳴る。
「……なんか、しゃべったら、ちょっと楽になった気がするっす」
動画は後日アップされ、タイトルは『聞き役は喋らない!?謎の女子高生に話してみたら…』
コメント欄にはこうあった。
「なんでこんなに泣けるんだろう」「話せるって、すごいことなんだな」「ハルピヨ、ピヨってたけどええ奴」
「うわ、これ……地味にバズってるじゃん」
カナメのぼやきに、ユイは少しだけまばたきをした。ハルピヨの袖の鈴が、またピヨっと鳴った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます