第18話 縁日開催!

今日は縁日の日、それでも変わらず朝のルーティンは欠かさない。

あたしは朝早くからの境内の掃除をしながら色々考えていた。

なんか最近あたし、怒りっぽくなってる・・・?藍女ちゃんの時だって

「レイ、」

なんか・・・変な気持ちになったし、今だって、大邪様のことでモヤモヤしてるし。

「レイ?」

そもそもの原因雪なんじゃないの?いやでも・・・

「レーイ、」

なんかもうダメだ、あいつの考えてること何一つわかんない。どーいうつもりなのよ、藍女ちゃんだって・・・

「鈴ってば!」

「わぁっ!!?」

雪がいきなり上から降ってきた!?

「何驚いてんの。」

「そりゃ驚くでしょ!いきなりなんなのよ一体!」

「いきなりじゃないって、ずっと名前呼んでたじゃん。」

「えぇ?嘘だぁ。」

「ほんと。」

ちょっとした押問答をした後、2人黙った。あたしは立ち上がって袴をぱんぱんっと払い、掃き掃除をもう一度始める。

「なんか鈴怒ってる?」

「別に。」

「嘘だ。」

「怒ってないって言ってんでしょ。」

「最近なんか鈴変だし。藍の話する時なんか怒ってる。」

「だーかーら、怒ってないってば。」

「ほら怒ってる!」

「どこが!」

「もー、朝っぱらから痴話喧嘩やめてよねぇ。うさぎも食わんっての。」

「ウナも食べないよ。」

二人で睨み合っていたらマリーとウナちゃんが起きてしまった。

「ごめんごめん。」

あたしは一息置いて雪にしか聞こえない声量で言い放った。

「・・・雪が変な事言うから。」

「俺悪くないよ。」

「どーだかね。」


昨日と同じように雪に乗り物を出してもらってみんなで蛇代神社まで行く。各々自由に会話をしていたが、みんな話題は一貫して縁日のことだ。

「ねぇ、レイ。レイに出会わなかったらこんな経験できなかった。レイのおかげだよ。」

「そうだね、あたしもマリーがいなけりゃこんなことにならなかった。マリーのおかげだわホント。」

「ごめんてばー!」

「あははっ、冗談冗談。あたしも楽しいし、ほんとにマリーのおかげだなって感謝してるから。」

「・・・ほんと?」

マリーは1度騙されたから少し警戒している。

「うそ」

「!!!」

「なんてつかないって。」

「レイー!」


午前11時、縁日開催の時刻となった。

記念すべき1番目の狐の到着には、少しのお客さんしか招き入れなかった。

「まぁ、最初はこんなもんだよね。」

「1番最初だし・・・。もしかして、あたし達の宣伝足りなかった・・・?」

「大丈夫、大丈夫!きっとお昼時には来るってば。」


それから数時間たち、あっという間に境内は人で溢れかえった。皆縁日に飢えてるんだ。

良かった・・・これなら大邪様のショーもそれなりに上手く行けそう・・・。

そう安心するのも束の間、

「おいこれイカサマじゃねぇか!!!」

突然怒鳴り声が響いた。

怒鳴り声のもとを見てみると、1人のお客さんが射的の屋台の店主に向かって何事か怒鳴っている。その人のせいでそこの屋台の行列は無くなってしまった。染谷さんは他の対応に追われ、そこに手を回す暇は無さそうだ。

「あ・・・!」

「レイ、私がいってくる。ちょっと待ってて。」

「マリー・・・。」

マリーは勇み足でつかつかと屋台の方に向かっていった。

「すみませーん。お客様、どうなさいましたか?」

「何だこのガキ・・・」

「ただのガキと侮るなかれ!私はこの縁日の重役、責任者でございますよ。」

「ほぉ?」

「さ、お客様?どんなことにご不満が?」

「この屋台イカサマしてんだよ!何回やってもこのゲームが落ちねぇんだ!細工してるにちげぇねえだろ!」

「ほー…。」

「いやいや、俺は何度もこのゲームが細工されてないと証明してますが?!」

「…ならお客さん、」

マリーは不敵な笑みを浮かべながら、でもどこか自慢げな表情をしながら一歩前に出た。

「私が一度この屋台の真相を確かめましょう。」

「そして、私が一回分でこちらのゲームを撃ち落とせなかった場合…」

「お客様がこの屋台で支払った料金、全額私が返金いたします。」

マリー…?

「ふん、じゃあやってみろや、お嬢ちゃん。俺は30回も挑戦して損してんだ。」

やりすぎじゃない…!?

「30回…ふふ、6000円ですか…え!?6000円!?」

「あぁ、これでもゲームの原価より安いよ。」

「さすがに損し過ぎでは…?他にも屋台ありますけど…?」

「まぁな、でも俺はこれに命かけてんだ。さ、お嬢ちゃん俺にさっさと6000円をくれや。」

「ええ、もし失敗したら、の話ですがね。」

マリーは財布から200円を取り出した。

「はい、一回分ね。」

「払わなくてもいいよ凛ちゃん。」

「いえいえ、これは慰謝料みたいなもんです。」

そう格好良く言うけど、あたしの稼ぎなんだよなぁ…。

「ありがとね。はい、玉6発ね。」

「はい。」

マリーは鉄砲を構える。その姿勢は控えめに言っても貫禄がにじみ出ていた。

「よーく、見ててくださいね。」

そう言ってマリーはゲームの箱に照準を合わせ…

【パンパンパンパンパンッ】

【ゴトッ】

マリーは見事ゲームの箱を撃ち落とした。

「ふぅ、こんなもんですね。あ、玉一個余った。」

【パンッ】

最後に一発、他のゲームの箱に当てて終了。

「……な、なんてこった…。」

お客さんはあっけらかんと立ち尽くしていた。一方当人のマリーは落ち着いた様子で、屋台の店主に話しかけていた。

「光圀のおじさん、私の落としたゲームはそのまま置いといてください。うちじゃ使えないんで。」

悪かったわね…ゲームのできない家で!

「それじゃあ、これで無実証明できましたよね?それでは私はこれで…」

「ね、姐さん!!俺に射的の修行をつけてください!!!」

「え…」

マリーは一瞬戸惑った顔をしたけど、すぐ得意げな顔を浮かべた。

「私は弟子は取らない。それに弟子になりたいんならもっとうまくなりな。あんな小さいものに30回も挑戦してる時点で資格なんて無いよ。」

「あざっした!!!」

「…でも、今日限りだけなら〜…してあげても、いいですけど。」

マリーは少し照れ気味に言った。多分、ちょっと恥ずかしくなったんだろう。


手持ち無沙汰なあたしは、雪の様子を見ようと思い立って、鳥居のところまで歩いていった。人は多かったけれど、通行に困るほどじゃなかった。

雪は宙に浮いて、麓と神社の入口が両方見れるようにして妖術を使っている。

「おーい、ゆきっ…」

一声かけてやろうと思って声を張り上げたが、雪に近づく小さな影が一つ。藍女ちゃんだ。

『雪ちゃん!』

『わ、藍。』

『来ましたわよ。雪ちゃんはこんなところで何を?』

『人の送迎。』

『大変そうね。』

『今は平気。ちょっと前はすっごい人だったから疲れた。』

『雪ちゃんも大変ねぇ。』

『別にいいよ。』

『そう…。』

『藍、今日はお願いね。』

『…ええ。』

藍女ちゃんは不満げな顔を浮かべすっと雪の前を横切った。

『藍、頼りにしてる。ありがと。』

『…ふんっ。』

藍女ちゃんはぷいっと雪から顔をそらした。


たぶんこういう会話をしてたんだろうな。

ふわりと藍女ちゃんは境内に降り立った。

「あ、藍女ちゃん…」

「勘違いしないで、わたくしは雪ちゃんのためにに来ただけですの。」

「…ほんっと可愛くないわ。」

「なぁに?」

「なんでもないよ、頼んだからねー。」

藍女ちゃんは境内の人混みに紛れに行った。あたしはその様子を見届けて、雪に話しかける気力もなくなっているから少し境内から逸れた人混みの少ないところに移動した。

「うぇーん!!!ままー!!」

俯いて歩いていると小さな女の子の泣き声が耳に届いた。

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