第12話 1件目:大邪様
「なんで引き受けちゃうかなぁ!?」
「だってぇ、大邪様困ってたし⋯」
「それでもねぇ⋯!」
「だって、見た?引き受けた時のあの大邪様のうきうきぶりを!」
「見たよ、見た。すっごいうっきうきだった。」
「でしょ!」
「それでもさぁ⋯あまりにも無謀すぎでしょ、やる宛てもないでしょ。」
「まぁ⋯はい。」
「⋯はぁー、あたしらはいつからそんな何でも屋になったんだろうか⋯。」
「うんー⋯。」
あれ、万事屋開業したのって⋯
「「⋯今日からだ!!」」
「なにあれ。」
「わかんない。」
とりあえず居間に4人で座り会議を始める。
「信仰ってどうやったら集まるのかなぁ⋯」
「ねぇねぇ、マリー信仰って実際なんなの?」
ウナちゃんがマリーに尋ねるけどマリーは上手く表現出来ないようで困っていた。
「んと、信仰っていうのは平たく言えばその神様の存在を信じることとも言えるの。」
「へー。」
「信じてもらうってどうしたらいいの?ウナよくわかんない…。」
「んー、一番手っ取り早い方法は開運とか運気アップだけど。」
「でも雪、それは多分無理だよ。大邪様の能力は邪気払いだし…開運とは言い難いかもだし…」
「でも邪気払いなら眉唾もんでも信じてくれる人いそうじゃない?」
「んー、ギャンブルすぎるかもなー…。」
「確かに…。」
雪とあたしで話している間、マリーとウナちゃんはこそこそとなにか話していた。
「ねぇ、蛇さまってマリーの魂食べてタタリ神にならないようにしたかったんだよね。ならそれとおんなじ方法でなんとかならないのかな。」
ウナちゃんが言う横で、マリーが力強く頷いている。多分ウナちゃん自身の作戦だから大いに賛同しているのだろう。でもあたしの中に少しの悪戯心が生まれた。
「ということは、ウナちゃんはあたしの魂を食べてもらえって言いたいの?」
「わー、そういう事を言いたかったわけじゃないの!違うもん!」
「ふふふっ、冗談冗談。」
「いじわる!」
ウナちゃんでちょっと遊んでいると雪が横で神妙な面持ちで喋りだした。
「でもありかも。レイとマリーの魂を半々で食べてもらえば…」
「流石に死にはしないけどだいぶ重症になるよ?」
「…確かに。」
あたしがすかさず反論すると雪は神妙な面持ちのまま肯定した。
「「「「あ”ーーー…。」」」」
「んもう!一体どうすればいいの!」
ウナちゃんは怒ったように大きな声を出した。
「もうさーいっそのこと『この白蛇の神様なんですよ!』って言って回れば?」
「マリー、何を血迷ってんの…そんなん信じる人居ないって…。」
「頭使うの疲れた〜…もう無理!」
そう言ってマリーは後ろにばたっと倒れた。
「はぁー、一旦この議論はおしまいね。買出し行ってくる。誰か一緒に来てよ。」
「んー動けなぁい…」
「なぁい。」
この自堕落コンビめ…。
「雪。」
「…わかった。」
雪は気だるげに立ちがった。ついてきてくれるそうだ。やっぱ持つべきものは雪だな〜!
「変なこと考えないでよ。」
「へ”?なになに?」
「なんかそんな気がしただけ。」
変に勘が鋭いな…。
「ははは…。」
商店街に行きつつ、問題を考えていた。一体どうすればいいのかなぁ⋯。気がつけば商店街の八百屋さんの近くまで来ていた。
「あ、こんにちは。」
「こんにちは、鈴ちゃん。今日は何が欲しいんだ?」
「えーっと、人参とさつまいも⋯あと⋯」
「玉ねぎと卵にキャベツ、じゃがいもも。」
あたしがつまると雪がすかさずフォローを入れた。確かに朝買いに行こうと言っていたものだ。
「あいよ。」
八百屋の八兵衛さんは野菜を取りに行ってくれた。
「⋯ありがと、雪。」
「ん。」
「ほい、これね。」
「ありがとうございます。お勘定はこれで。」
「うん、ちょうどお預かりします。贔屓にしてくれてありがとね鈴ちゃん。」
「いえ、こちらこそいつもお世話になっております。」
「雪くんも、いつもお手伝い偉いね。」
「別に。」
雪は素っ気ない態度で返す。全く⋯。
「あ、八兵衛さん、邪気祓いって興味あります?」
「ほぉ?邪気祓いかぁ⋯。あんまりピンと来ないし興味は無いかなぁ⋯。」
「そうですよね。ありがとうございました。」
そう言って立ち去った。やっぱり邪気祓いなんてマイナーなものあんまり人気ないよなぁ⋯。
「鈴、鈴。お肉屋さん。」
「え、あ!ほんと!」
考え事しながら歩いてたらお肉屋さんを通り過ぎかけていた。雪がいなければ多分忘れっぱだった。
「鈴ちゃんお悩み事?」
「⋯まぁ、はい。えっと、鶏肉もも400gとあと、鴨肉200gで。」
「はい。大変だねぇ。」
「⋯あの、松谷さん邪気祓いって興味あります?」
「へぇ?邪気祓い?あんまり興味無いねぇ。⋯もしかして、また面倒事に?」
「まぁ⋯でも、マリー《しんゆう》の頼みなんで。」
「あら、いいわねぇ。」
「え?」
「ふふふ、あたしにゃそんな人いなかったからうやらましい限りでね。」
「?」
困惑してたら雪がこそっと松谷さんに耳打ちをした。
「多分鈴、親友って言ったの無意識。」
「あら、まぁそう?」
「なになに?」
「いいえ、はい。これお肉。お会計は⋯」
はぐらかされて何も聞き出せなかった。
「なんだってのよー。なんで教えてくれないの?」
「何でもないったら何でもなーい。」
「もー。」
そんな小競り合いのような言い合いをしていたら、雪が
「あれっ、」
と素っ頓狂な声を上げた。
「ん?」
調子の外れたような事を言うんじゃないかと思い少し怒りを顕にした。のにも関わらず雪はあたしの方は見ずにあたしの奥を見て言った。
「
「はぁ?」
「あら、雪ちゃん?雪ちゃんじゃない!」
あたしの後ろで甲高くでも色気を感じる声が聞こえた。振り向くと1匹の小さな妖狐が浮いていた。
「え”?」
「雪ちゃん久しぶりね。300年ぶりかしら?」
「そんなに経ってない。まだ100年だよ。」
「またまたぁ、本当は50年よ。」
「あははは」「うふふふ」
2人して笑いあった。
「藍、なかなか会いにこないね。」
「ふふふ、このやり取り続けたくてね。雪ちゃんが忘れる頃を図ってるのよ。」
「なんだそれ。俺が忘れてたらどーすんの。」
「うふふっ、その時はその時〜。」
くるりとゆったり回った彼女はどこまでも艶かしい。
「ところで、お隣の方は?人間のように見えるけど?」
「人間ですけど?」
少し語気を強めて言ってしまった。でもまぁいいか。
「きゃあ」
作ったような悲鳴をあげる、それも狙ってるような感じがして気に食わない。
「鈴。」
「何よ雪。」
「いいわよ雪ちゃん。うふふ、あなたは見たことのない子ね。」
「ええ、あなたの話じゃ50年来の再会だもの。あたしはまだ16年の付き合いよ。」
「なんか、鈴きもい⋯。」
「何よ雪。」
一睨みすると雪は引っ込んだ。
「⋯あたしは邪魔みたいだし、先にお暇させていただきますわね。じゃあ、また後でね。雪。」
そう軽く突き放して足早にその場から立ち去る。あたしは邪魔みたいだから。いや、なんだかもやもやしてしまったから、ついその場から逃げ出したくなった。
「あ、え⋯鈴!ごめん、藍女また今度!」
「ええ、またね雪ちゃん。」
そんな会話を背中で聞きながら早足で歩く。
「鈴ー、ちょっと待ってよ。ごめんって、さっきは別に変なこと言ってないってば。」
「別にそれは気にしてない。気を使う必要なんかないから。」
「⋯。」
あたし達は商店街をぬけても、神社の階段を昇っていてもそれでも会話を続けやしなかった。
「あ!レイおかえりー。」
「おかえりっ!」
縁側に仰向けに寝っ転がりながらマリーは迎え、ウナちゃんはマリーの傍に立ってそわそわしながら迎えてくれた。縁側の方に歩いていくとマリーがころんと寝返ってうつ伏せの姿勢になって聞いてきた。
「レイ、甘味は買ってきてくれた〜?」
「お菓子は何も買ってきてない。」
「ちぇ〜⋯ってそんなことを言いたかったんじゃないんだった!」
「え?」
マリーは上半身を起こし、ウナちゃんに目配せをした。ウナちゃんもそれに応えるように頷いた。
「レイたちが買い物行ってる間二人で考えてたんだけどね、せーのっ」
「「縁日をするのはどうかなって!」」
マリーとウナちゃんは声を合わせて言った。それを聞いたあたしたちの反応は同じで重なっていた。
「「縁日ぃ?」」
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