第17話 生意気な同級生
放課後の校舎裏。
芽衣亜が少しイライラした様子で尋ねてくる。
「それで、どこにいるのよ? そのツンツンしてるっていう子は?」
「ご、ごめんなさい……私もどこにいるかまでは……」
幸子が申し訳なさそうに言う。いや、幸子が謝る必要はないんだが。
まあ、気持ちは分かる。
俺たちが、美々歌を探し始めてから、かれこれ30分以上が経過してるしな。
ただ、学校にいることは確かだ。
ルカから聞いた話によると、美々歌は放課後になっても家に帰らずに、学校内をブラブラしているらしいし。
ったく、見つけるのが面倒なら、こっちから呼び出すか?
……いや、それはそれで警戒されそうだ。
俺が心の中で色々考えていると、俺の隣にいつの間にか浮かんでいたルカが口を開いた。
《……おそらく、あちらの中庭にいるかと。あそこは人が少なく、彼女が一人で過ごすのに好んでいる場所ですから》
急に話しかけられてビクッとしたが、かなり有益な情報を得ることができた。
《ルカ、サンキュー! でも、あんまり相手を驚かせないよう話しかけような。鳥肌が立ったわ》
俺が言うと、ルカは少し首を傾げたように見えた。
まあ、鳥ジョークが通じなかったとしても、気にしない。気にしない。
▽▽▽
ルカの案内で中庭に向かうと、白髪の少女――冬月 美々歌がそこにいた。
ベンチに座り、一人で本を読んでいる。
その横顔は、前回会った時のツンとした印象とは少し違い、どこか寂しげに見えたのは気のせいか?
「あ、あの……美々歌さん!」
幸子が意を決して声をかける。
美々歌は驚いたように顔を上げ、幸子と芽衣亜が一緒にいることを認めると、すぐにいつものトゲトゲした雰囲気を纏った。
「……なんですか? あなたたち、何の用です?」
幸子が話そうとすると、芽衣亜が手で制して前に出る。
「ちょっと話があるんだけど、いいかしら?」
美々歌は、そんな二人をじろりと睨み、ふいっと顔をそむけた。
「私、あなたたちと話すことなんてありませんけど? それに、馴れ馴れしくしないでいただけます?」
明らかに機嫌が悪い。
これは……嫉妬してるな?
あーもう、こいつ本当に素直じゃねぇな……。
直接話しても埒が明かん。作戦変更だ。
《ここは一旦引くぞ。後は俺に任せろ》
俺は幸子と芽衣亜に念を送った。
二人は不満そうだったが、渋々頷いてその場を離れていった。
▽▽▽
幸子たちが去り、中庭には俺と美々歌、そしてルカだけが残った。
「……で? 何の用ですか、クソ鳥さん。言っておきますけど、私はあなたたちの仲間になる気なんて、これっぽっちもありませんからね!」
美々歌は、まだ警戒心を解いていない。というか、むしろ敵意が増しているような……?
《クソ鳥じゃない……って、よく考えたら、お前とちゃんと自己紹介してなかったな》
そういえば、俺とルカが話している途中で、こいつが幸子に突っかかって行ったから、自己紹介出来てなかったわ。
《俺の名前は、羽鳥 蒼人だ。よろしくな》
「……ふん、冬月……美々歌です。別によろしくしなくていいですけど。それにしても、なんであなたの名前は、人間みたいな名前なんですか? 人間に憧れてるんですか?」
うっ、こいつ、人の弱点を的確にえぐってくる。
まあ、俺は大人だから飲み込んでやろう。
《人間にあこがれてるって言うか、俺はもともと人間だったんだよね……?》
「は? ……頭、大丈夫ですか?」
こいつ!!! マジでわからせるぞ?
小バカにしてるとかじゃなくて、まじめに心配してるのが、逆に腹立つ……。
《いえ、蒼人が言っていることは本当のことですよ。テティナーラ様からそう伺ったので間違いありません》
《そうですか……、あなたも意外と大変なんですね》
少し話がそれたが、ルカのおかげで信じてもらえた俺は、美々歌の説得に戻ることにする。
俺は単刀直入に切り出した。
《なあ、美々歌……本当はさ、幸子たちが羨ましかったんだろ? 二人で仲良さそうにしてるのがさ》
美々歌の肩がビクリと跳ねる。
「な、何を言ってるんですか! 全然羨ましくなんかっ……!」
必死に否定するが、その目は明らかに動揺している。図星か。
《強がってないで、素直になればいいじゃないか。一人でいるより、誰かといた方が楽しいぜ、きっと》
「わ、私は……! 一人の方が気楽なんですっ……!」
目に涙を溜め、声を震わせながら反論する美々歌。
強情なやつめ。
仕方ない、俺のぼっちエピソードを紹介してやろう。
そしたら、美々歌も少しは前向きになれるはずだ。
《美々歌……。少しだけ、俺の昔話をしよう……》
▽▽▽
数十分後。
今まで黙っていたルカが、静かに口を開いた。
「美々歌、意地を張るのはやめなさい。……彼女たちと関わることで、あなたが前に進むきっかけになるかもしれませんよ。それに、蒼人の自虐エピソードをこれ以上聞くのはつらいでしょう」
無言になった美々歌が、コクリコクリと首を縦に振る。
少し前までは、あんなにゴミを見るような目だったのに、今では可哀想なものを見る目で、俺を見るようになった美々歌は、幸子たちとの話し合いに向かうことを決めたのである。
《もう一度幸子と面と向かってぶつかり合おう。今度はお互いを知るためにさ。それでもし幸子が勝ったら、幸子たちの仲間になれ。もし美々歌が勝ったら、幸子たちから干渉することは禁止にするよ》
俺は真剣な口調で、再戦を持ちかけた。
美々歌はしばらく黙って俯いていたが、やがて顔を上げ、潤んだ瞳で俺を見た。
「……分かりました。その勝負、受けます」
こうして、幸子の二度目の決闘が決まったのだった。
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