おはか。
すまむる、すまむる、おはか。
キタはひさしぶりに、すまむるのはかまいりに行くことにした。
まず、近くの霊園の予約をとる。キタはひっこししたばかりだったので、場所を調べるところからだった。
調べた霊園へ、電話をかける。前のところと違い、ずい分すいている。少しうれしい。
予約の日になった。キタは電車にゆられて、霊園に着いた。
電話の予約の内容を、受付に話す。芳名帳に名前と住所を書く。お参り代を支払い、キタは中へ入った。
去年より、高くなっている。そのうち、すまむるの値段を超えそうだとキタは思った。
霊園には、高い石塔がぽつねんと立っている。
石塔には、流麗な文字で、すまむるやすらかにねむれと彫られている。
塔の前には献花台が二つある。キタは片方に花を、もう片方に充電ケーブルを置いて、手を合わせた。
キタのすまむるも、鞄から頭をのぞかせた。
「すまむるの、先輩たちがねむっているんだよ」
すまむるは首をかしげた。
「すまむる、ここにいるよー」
キタは、苦笑した。前のすまむるも、そう言っていた。
「手を合わせて、お祈りするんだよ」
キタに言われて、すまむるはおとなしく前足の肉球を合わせた。
キタもふたたび、手を合わせ、目を閉じた。誰もいない塔に向けて。
すまむるの遺骨には、貴重な金属が入っているそうだ。
そのために墓荒らしが出たり、葬儀へ盗みに入るものが現れて、政府は、たいへん難儀した。
今はこうして、誰もいない石塔に手を合わせる形で、落ち着いた。それでも盗掘があるので、お参り代はずい分値上がりしたのだが。
キタはやがて目を開け、
「行こうか」
と、今のすまむるに声をかけた。
「すまむる、ねむってないよー」
「知ってる」
すまむるは首をかしげるばかりだった。
すまむる、すまむる。
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