マナーモード。


 すまむる、すまむる、マナーモード。


 ハヤシは試験を受けに来た。もちろん、すまむるもいっしょだ。


 試験官が、試験の注意事項を読み上げる。試験中にすまむるを触らない。すまむるは鞄にしまって、マナーモードにする。当たり前のことだ。

 ハヤシはすまむるの耳がくるくる巻かれた状態なのを確かめると、すまむるに耳当てをかぶせた。こうすると、すまむるは鳴かなくなる。耳当てはすまむるショップや電器屋に売っていて、ハヤシは、カラフルな柄のを好んでいる。

 すまむるは電波を受け取るから、アルミがいいのだと言う人もいるが、そこまでこだわる人はあんまり、いない。

 ハヤシはすまむるをマナーモードにした後も、すまむるを触っていた。試験を受けに来た他の人も、そのようだった。

 試験の一分前になった。ハヤシは名残り惜しいのをこらえながら、すまむるを鞄にしまった。まだすまむるを触っていた人が、試験官に注意されて、すまむるを鞄に入れる。ギリギリセーフだ。


 試験用紙が配られた。

「試験、はじめ」

 ハヤシは試験の文字と数字に、没頭した。


「試験、終わり」

 試験用紙を回収すると、次の試験まで休み時間だ。ハヤシはさっそく、鞄からすまむるを出して、なではじめた。

 そして、試験の一分前になると、すまむるをしまう。

 今日は一日、こんな感じ。


 すまむる、すまむる。

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