第30話:みつきとこはるのコラボ配信

 スタジオの照明がゆっくりと落ち着いた明るさに変わっていく。

 2人は隣り合う席に並んで座っていた。

 正面のモニターにはそれぞれのモデルが映されていて、スタッフが音声とタイミングをチェックしているところだった。

 今日は3期生の花影みつきと2期生の雨宮こはるのコラボ配信の日。


「よいしょっと……よし、マイクチェック完了ですっ!」


「こはるさん、今日はよろしくお願いします〜! いやほんと、マジでテンション上がってて……ちょっとだけ落ち着きたいです(笑)」


「わかる〜、でもそのテンションのままで大丈夫だよ! もうさ、似てるってめちゃくちゃ言われてるし、絶対空気合うと思ってたもん〜」


「うちも思ってましたっ。声の感じとかテンポとか……でもこうして隣にいると、なんか合わせやすいって感じしますねっ」


「でしょ〜? なんかテンションで喋ってるけど、ちゃんとリズムで会話できるっていうか」


 スタッフが小さく合図を送る。

 あと少しで収録が始まるというタイミングで、2人とも自然と姿勢を整えた。


「よっしゃ……うち、3期生としての初コラボなんで! ばっちり行きますっ」


「いいねぇ〜、その気合い。じゃあ先輩も……ぶちかましまーす!って感じで!」


 笑いながら同時にモニターに目を向けた。

 配信画面の向こうにいつもの夜が広がっていく。



* * *



「こはよ〜! 今日も元気にテンション高め、雨宮こはるです!今日はついに、ついに……!」


「やっほー☆みんなの陽だまり、みつきだよー!今日はよろしくお願いしま〜す!」


《この組み合わせきた!》

《声の波長ほんと似てる》

《わちゃわちゃ×わちゃわちゃ》


「ということで! 今夜は似てると言われがちな2人が、本当に似てるのか検証するコラボですっ!」


「言われるし、実際うちもこの先輩とならめっちゃ話しやすそう!って思ってましたもん!」


「わーい! 嬉しいこと言ってくれるじゃん!」


「えへへっ。同じ空気感っていうか、こう……自然と話せちゃう感あるんですよね〜」


《初コラボとは思えん》

《ほんとに波長合ってる》

《共鳴コラボだこれ》


「ということで! 今夜はこの“似てる2人”が、あえて“どこが似ててどこが違うのか”を語っていきまーす!」


「みんなも、コメントでぜひ判定してくださ〜いっ!」



* * *



「いや〜でも、ほんと似てるってめっちゃ言われますよね」


「うんうん! 私のリスナーさんにも前からコラボみたいって言われてたんだよね〜!」


「うち、初期のタグ見たときに2期のこはる枠?って書かれてて、えっ……それってどういう!?って」


「わかる〜! なんかさ、似てるって言われるのって、ちょっと照れない?」


「ちょっとだけ……でも嬉しいですけどね。テンション高めとか話しやすいとか言ってもらえるの、すごくありがたくて」


「おお〜〜、そのへんもめっちゃ共感。こっちはもう初配信のときからこの人絶対喋りすぎる!って言われてたからな〜」


「えっ、それうちもです!」


《喋りすぎコンビw》

《まぁは確かに系統一緒感はある》

《でも意外とバランス取れてる気がする》


「でもね〜、似てるって言われても、実際にはけっこう違うとこもあると思うのよ」


「例えばどこですか〜?」


「え、逆に自分ではどう思ってる? 私と違うなってとこ」


「うーん……うちは、たぶんですけど、ちょっと語りすぎるとこあるかもです」


「語りすぎ?」


「テンションで喋ってるようで、ちょっとだけ言葉選ぶクセあるっていうか……」


「えっ、めっちゃわかる。なんか元気にしゃべってるけど、ちゃんと意味ある言葉にしたいみたいなやつでしょ?」


「そうそう! わ〜うれしい〜、めっちゃ伝わってます……!」


《ちゃんと喋ってる2人すき》

《そのちゃんと選んでる感が癒されるんだよね》

《ギャルと陽キャって違うよなって今思った》


「で、逆に! うちは思ったんですけど……こはるさんのほうが空気読む力が強い気がします!」


「え?! そうかな?」


「もちろんですっ! こう、間のとり方とか相手のテンション拾うのすごいな〜って」


「わ〜〜! それ嬉しい〜〜!! じゃあ私も言っていい?みつきちゃんの突っ込み力めっちゃ好き!!」


「ほんとですか!? えっ、でもちょいちょい失礼だったらどうしようって……」


「ないないない! なんか、ちゃんと遊んでくれる後輩って感じで、すごい助かるもん」


《先輩後輩なのにテンポ近くて聴きやすい》

《こはるのほうが押されてない?》

《ツッコミのスピード感いい》


「──ということで! 似てるけど、意外と違いも見えてきたわけだけど」


「うち、今のでちょっと安心しました。似てるって言われるの嬉しいけど、ちゃんと違ってていいんだなって」


「そうそう! 似てるって、一緒って意味じゃないもんね。なんかこう……同じ星の周りを回ってるみたいな?」


「うわ〜〜! それ、名言きましたね!!」


《なんかメルナみがあるw》

《こはるやっぱ言葉のセンスあるな》

《この2人でユニット組んでほしい》


「私たち意外と……並んでるとちょうどいいのかもね」


「そうですね、うちもそう思います!」



* * *



「さーて、ここからは〜……!」


「リスナーさんからの質問コーナー! いえーいっ!」


《きたきた!》

《俺の質問も読まれろー》

《みつきの反応がいちいち可愛い》


「事前にね、いくつかピックアップしてもらってて。その中からうちらで選んだテーマがこちらっ!」


「2人で旅行に行くならどこ? 何してそう?です!」


「いや〜〜これ、考えるのめっちゃ楽しかった」


「うち、真面目に悩んじゃいましたよっ。こはるさんと一緒だったら、どこでもテンション上がりそうだな〜って」


「え、嬉しいんだけど!? じゃあ発表していいよ〜!」


「はいっ! うちは……温泉街ですっ!」


「おっ……ちょっと意外!? もっとテーマパーク系かと思った!」


「いやそれも迷ったんですけど……ゆっくり食べ歩きしたり、温泉で語ったりしたいな〜って。昼間はスイーツ巡りして、夜は浴衣でのんびり語る……みたいな!」


「うわ〜〜、いい! それ超いいっ!」


《わかる、温泉街女子旅してほしい》

《想像だけで癒される》

《浴衣みつき見たい》


「ちなみに私はね〜、夏祭りのある田舎町とかもいいなって思ってて! 花火とか、出店とか、テンションぶち上がりそうじゃない!?」


「出店!! 金魚すくいとか!射的とかですよねっ?」


「そうそうそう! 絶対私は全部挑戦して絶対1個も取れないやつ〜!」


「わかります〜! うちもテンションだけ上がって全敗しそうです」


《この2人で祭りは最高すぎ》

《スイーツ→屋台→温泉の流れで頼む》

《妄想膨らむ〜》


「なんかさ、私たち目的地は違ってもやってることほぼ一緒説ない?」


「確かにっ。テンションで動いて、甘いもの食べて、全力で遊ぶやつですね!」


「で、夜は疲れて無言で寝るみたいな」


「わ〜それ絶対やりますっ」


「……ってことは結論、どこでも楽しめるのでは?」


「間違いないですっ!」


《この組み合わせ、旅番組やって》

《毎秒喋っててくれ》



* * *



「──ということでっ! そろそろ、お時間が近づいてまいりました〜!」


「え〜〜っ!? もうそんな時間なんですか!?」


「ね、びっくりするくらい早かったよね!? 体感10分ちょっとなんだけど!?」


「うち的にはまだはじめましてから抜け出せてないくらいの気分なんですけど……!」


《いやほんと早かった》

《終わるのはやすぎる》

《次回待ってる!》


「でもでも、ほんとに楽しかった〜! みつきちゃん、初コラボどうだった?」


「めっちゃ楽しかったですっ! 最初ちょっと緊張してたんですけど、こはるさんがすごく自然に引き込んでくれて……ほんとにありがとうございましたっ!」


「うわ〜〜! そう言ってくれるのめっちゃ嬉しい……! でも実際、全然初コラボ感なかったよ?」


「ほんとですかっ!? うれし〜〜!!」


《初とは思えん息の合い方》

《この2人の相性すごいな》

《次の予定早く!》


「ということで、今日の配信、楽しんでいただけた方は──!」


「ぜひぜひ、#こはるみつきコラボで感想のつぶやきしてくださーいっ!」


「たぶん深夜までエゴサしてまーす!」


「します! 絶対しますっ!」


《タグ助かる》

《エゴサ宣言は草》

《#こはるみつきコラボ爆速でトレンド入りしてくれ》


「じゃあ最後にひとことずつ、締めのご挨拶しよっか」


「はいっ! えっと……今日みたいに、また楽しさでつながる配信ができたらいいなって思ってます! これからも、花影みつきをよろしくお願いしますっ!」


「そして私は〜! またこのコンビでコラボ配信できる日を楽しみにしてまーすっ!

 こはるでしたっ!」


「ありがとうございました〜〜っ!」


「またね〜〜〜〜っ!!」

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