あたたかいばしょ

@nyapsody

第1話「12月のベンチで震えながらファーーーw言うとる」

12月の上野公園、深夜2時。

ワイ(46)、ベンチの上で段ボールモコモコフル装備や。

足のつま先、感覚ゼロ。くしゃみで目覚めて、心まで冷えとる。


「ファー……今日の寒さ、ガチやん……」

って独り言つぶやいたら、向かいの植え込みから野良猫逃げてったわ。すまんな。



なんでこんなとこで凍えてんのかって?

ほんまはな、昔は普通の人間やったんやで。

就職氷河期世代、バブル崩壊のすぐあと、夢も希望も無事蒸発。


新卒逃してフリーター→派遣社員→派遣切り→ネットカフェ→追い出されて今ここや。



「ワイ、取り柄って何一つないんよ……」

って言っても誰も聞いとらんから、とりあえず自分で聞き返す。

就職もできん、結婚もできん、貯金もねぇ。

せめて“寒さに強い”とかいうスキルでも持ってりゃ、ホームレスRTA走破できたんやけどな。



足の指、ちょっとヤバい。

ギュッと握っても反応ねぇ。

下手したら凍傷コース。足の指もぎたてフルーツやん。


「いや、笑い事やないんやって……ファーw」



このまま寝たらワンチャン永眠エンド。

せやから選択肢は一つや。


「捕まるか」



毎年恒例、“越冬イベント”。

食費・光熱費・家賃コミコミ、空調完備で毛布つき。

ワイの今のステータスやと、刑務所(という名の冬用避難所)が最強なんや。



手持ちの小銭は113円。

パン買うには足りん。

よし、**“払う気ゼロの万引き”**で身柄確保狙い行こか。



立ち上がると、膝がミシッと音を立てた。

それすら愛おしい。


「行こか……冬の別荘へ」

ベンチに礼して、ワイはスーパーへ歩き出した。

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