#30 ご飯ができるまでに

「所で俺、昨日から飲まず食わずなので」

「何か食べ物を恵んでは貰えませんか」(落ち着いたら風呂も入りたいな)


「ばあちゃんがアラちゃんの好きな物を作ろうかね!」


「やったー!」


ばあちゃんが食事を用意している間に、

ブルーさんから事の経緯を説明してもらえる事になったので、

ダンススタジオの2階にある会議室に移動した。


「ふう…生き返った…」←水を貰って飲んだ根尾

「ガルさんをスカウトするとかって」

「ダンスバトルの選手が足りないからスカウトしたってパターンじゃないですよね?」

「大会が近いのにメンバーが何か脱退したとかで!」


「おお!ダンスバトルであるか!」


「そういうのやりたい?」


「いや!特には!」(無理だったダンスの授業!)


説明されれば事の経緯は単純で都合の良い話だった。

ガルさんが偶然話しかけたブルーさんが、ばあちゃんの知り合いで、

ばあちゃんは俺達が神界に来た事をブルーさんに話していて知っていたってだけ。


「なるほど、ばあちゃんは俺が地上界に来てからずっと見守ってくれてたんですね」


「測定の結果を送る時は喜んでたよ」


「測定の結果…?」

「あの神殿でやったやつの結果って、ばあちゃんが送ってくれたやつだったの!?」


「自分の当番の日じゃないのに孫の測定は自分がやるって言って」

「わざわざ代わって貰ってね」


「当番制なのあれ!?」

「…裁縫職人になれってアドバイスを聞かないで心配かけたかな」


「職人にならず外へ出てドラゴンとの戦いでは危うく死にそうになったからな!わはは!」


「かなり心配かけたよね…」


「魔界では飢え死ぬかもしれなかったしな!わはは!」


「ガルさんの魔力と引き換えになんとか助かるとか」

「ばあちゃん気が気じゃなかっただろうなぁ」


「為せば成るものだな!」


「そういえば、ガルさんの魔力は戻りそうなんですか?」


「うむ、魔力についてはブルー殿に相談したのだが」

「戻す方法は無いとのことだ」


「あんなモンない方がいいんだよ」


「ど、どうしてですか?」(いきなり暴言吐いたー!)


「本来、魔力は他者を傷つける為に使うものではないんだよ」

「魔族を創造した人は生活を豊かにする為に与えた力なんだ」

「それを悪用しているのに攻撃魔法などと言って発展させ」

「あまつさえ強い攻撃魔法が使える者を崇めるなど!」


「そ、そうなんですね」(スイッチ入っちゃったよコレ!)


「本来の魔法とは生活の中で使うものだったのであるな」

「ソレガシも料理の時に火を熾したり洗濯に使う水の用意していたぞ」


「そうそう、ガルちゃんの使い方が正しいんだよ」


「環境適応スキルは便利なものであったな」

「魔力の続く限り、どこへ行っても快適であった!」


「ガルちゃんみたいな魔力を正しく使っているコから魔力を奪うなんて」

「魔剣は酷い事をするもんだね」


「そういえば魔剣というか、魔具って何なんですか?」

「それに魔力を欲しがる理由ってなんですか?」


「あれは趣味の悪い魔族が創造したものでね…」


ブルーさんの説明によると魔具は寄生生物のようなものらしい。

魔族を宿主として魔力を貰い活動する。

魔具が成長するのには別の魔具もしくは地上人から魔力そのものを吸収する必要があって、

その吸収も何やら色々と制限があって誰でもいいとは行かないらしい。


「まぁ、バトロワよ」


「ああ、バトロワやってるんですね」

「魔族って魔物以外にも魔具を作り出して戦わせて遊んでたんですね」


「バトロワとはなんであるか?」


「一番強い人が決まるまで複数が戦い続ける、みたいな感じです」


「おお!では魔剣が一番強い魔具に決まったということであるか!」


「そうだね」

「魔王の強さの大半は魔剣による所だった程にね」


(魔王自体はそれほど強くなかったってこと!?)


「魔具最強の魔剣に打ち勝った名犬こそが真の勝者であるな!」


「名剣…あっ…」


「どうしたネオ殿?そういえば名犬はどうしたのだ?」

「落下した時に無くしてしまったのか?」


「いやぁ、ええっと」

「そ、そういえば三界に伝わる伝説の剣の内の二振りは見ましたけど!」

「神剣も本当に存在するんですか!?」


「あれは地上界の人達が思ってるような代物じゃないんだけどあるよ」

「今は確かオハ…」


「ごはんができたわよ~」←ばあちゃん


「うわーい!」←根尾


何やら色々とお盆に乗せて、ばあちゃんが部屋に入って来た。

なんだか昔に戻ったようで、いつものように返事してしまったのが少し恥ずかしい。

ばあちゃんの作った飯を食べるなんて小学生の頃以来だ。

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