第13話 ポピー
道路沿いの花壇に、ポピーが咲いていた。
花びらは薄く、風にふわりと揺れる。
ヒナゲシかもしれない。
見分けは難しい。
ポピーはケシ科の総称で、ヒナゲシはその一種だという。
ならば、とりあえず、ポピーではある。
「丘の上〜ヒナゲシの花で〜」と、母ちゃんが歌い出す。
昭和のアイドル、アグネス・チャンの歌。
続けて、「車にポピー!」と笑う。
唐突だ。
だが、反射的なこの流れは、母ちゃんの中に染み付いている。
花には、記憶を引き出す力がある。
ゆれるポピーに誘われて、母ちゃんはまた歌い出す。
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