「シバザクラが咲いてるね」と言うと、母は少し無言になった。

そして、「あれ、やっぱりシレネだね」と、どこかほっとしたように言った。

シレネ？

聞いたことのない名前。

淡いピンクの花が、地を這うように低く広がって咲いている。

遠目には、やはりシバザクラによく似ている。

もしかしたら、これまでにも、何度もこの花を見ていたのかもしれない。

そのたびに、僕は「シバザクラだ」と呼んでいたのだろう。

シレネ。

ナデシコ科の宿根草で、多年草。

寒さにも、強い日差しにも耐えられる。

園芸品種としても人気になり、各地で植えられ、増えてきている。

名前を知ることは、相手を知る第一歩。

「始めまして、シレネさん」……いや、お久しぶり。になるのかな。

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