借りパク異世界魔道具師の気楽なダンジョン無双 ー え? こっちの世界ってモンスターもまともに倒せないの?ー

山親爺大将

第1話 転移

「無理だよぉ」

「諦めないの!」


 私たちに目の前には二匹のゴブリンがいた。


 ある日突然、平和なこの世界にダンジョンが現れた。

 そこから出てくるモンスターには近代兵器が全く効かなかった。


 人間たちは蹂躙される以外の選択肢が無い状態を余儀なくされる。


 そんな中、ある研究家がダンジョンに人が入り続ければ、モンスターはダンジョンから外に出てこない事を多大な犠牲と引き換えに発見した。


 真っ先に犯罪者、社会的弱者がダンジョンに送られたのだが……。

 生還率の低さからこのままでは送り込む者が不足する事が明白だったため政府は、比較的弱いモンスターのダンジョンだけでも生還率を上げようと考えダンジョンに専門に潜る者たち『探索者』を養成する事を決定し探索者協会を設立、全国民に探索者従事の義務を宣言した。


 その上で免除試験に合格した者は探索者従事を免除するという制度を作った。

 ダンジョンを利用して落ちこぼれを生贄にして排除するシステムである。


「絶対無理だよぉ」

 ゆるふわカールのピンク髪、すぐ無理って言って諦めちゃう。

 香坂花凛って子はそんな娘。


 どうしてもこの子と組むと命令口調になっちゃう。

 可愛いのは分かるけど、男どもが甘やかしすぎなのよね。

 無理〜って言えば、鼻の下伸ばしたオッサン達が、どれどれ俺が何とかしてやろうって寄って来るんだもん。


「ゴブリンなら隙を見つけて逃げ出せばなんとかなるから! ちゃんとして! もっと考えて!」

 すぐ弱音を吐き、そうすれば周りがなんとかしてくれると思ってるこの女を私は大嫌いだった。

「でもぉ」

「貴女だって死にたくないでしょ!」

「でもぉ」


 お話の中ではやられ役のモンスター『ゴブリン』だけど、私達には絶望的な存在。

 何をしたって倒せないから、私達に与えられた装備には『攻撃』を目的とした物は無い。


 強烈な光を出す『フラッシュボム』と音で撹乱する『サウンドボム』だけだ。

 これをタイミング良く投げて、怯んだ隙に逃げる。


 探索者に課せられる一日の就労時間は四時間。

 その時間分ダンジョンに滞在すればノルマクリアとなり、帰宅できる。


 ただし、一定箇所に滞在するのはNG。

 一度通った場所を引き返すのもNG。


 四時間かけてダンジョンの奥へと進まないとならない。

 今日のノルマは既にクリアした。


 今はこの目の前のゴブリンさえ何とかすれば、あとは出口に向かうだけで良い。

 行きは極力ゆっくり、分岐も一つ一つ丁寧に歩いたが、帰りは一直線に全力疾走だ。

 途中休憩しても四、五十分あれば安全地帯まで行ける。


「考えて! 行動して!」

 私だって余裕がない。

 手に二つのボムを持って牽制してるけど、いつ襲ってくるか分からない。


 タイミングを間違えればそれで終わり。


「分かりました! えい!」

「え……」

 いきなり、フラッシュボムを投げつけた。


 しかも、ゴブリンと私の中間辺りに。


 バシュゥという破裂音と共に強烈な閃光が辺りを撒き散らす。

 私とゴブリンを巻き込んで……。


 咄嗟に目を瞑ったが間に合わなかった。


「じゃあ、逃げますねぇ、後頑張ってくださぁい」

 ゆるフワ馬鹿女がそんな事言って遠ざかって行く音が聞こえた。


「ちょっと待って! 待ってって! 目が、目が……」

 目が見えないままで、一人取り残された私に出来ることはない。


 私の目が回復するのと、ゴブリンの視力が戻るのはほぼ同時だった。

「ギャギャギャギャァ!」


 いきなり閃光をくらったゴブリン達は明らかにイキリたっていた。


「ひぃぃぃ!」

 逃げなきゃ!

 でも、そんな思いも虚しく、私は腰を抜かしてしまった。


「ギャギャギャァ!」


「フグッ……助けて……」

 涙が頬を伝う感触だけやたらハッキリ感じる。


「嫌だ……死にたくない……死にたくないよぉ……」

 もう何も出来ない。

 心が絶望で埋まる。


「ギャッギャッギャ」

 いやらしく嗤うゴブリン達。


「いやぁぁぁ!」


「うわぁ!」

 いきなり頭上から叫び声が聞こえた。


「え? お尻?」

 その声につられて上を見上げると。


 ファンタジーゲームに出て来る学者の様な姿をした女の子が降ってきた。

 我儘で自分勝手な愛すべき相棒との初邂逅は、彼女のお尻の下だった

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