第5話

【フレア視点】


 私は思い出すように話を再開した。

 シンシの指導を終えて3人でギルドの食堂に行く。

 そして3人で丸いテーブルの席に座った。


「フレイの魔法、凄かったわね。私は基礎がまだだって」

「私はたくさんお金が貯まりました。シンシさんのおかげです。顔を覚えられればもっと回復魔法を頼んでもらえますよ」

「シンシさん、思ったより良い人だったわね」

「約束さえしなけれないいんでしょ? なら、問題無いわ」


「また会いましたね」


 シンシが私の隣に座る。


「シンシさん」

「フレイさん、大丈夫でしたか? あの訓練は体に負担がかかります。負担をかけすぎたかもしれないと心配していました」


「大丈夫です。すぐ元気になりましたから」

「それは良かったです。みなさんのお昼を奢らせてください」

「で、でも」


「いえ、ダメです。奢ります」

「何にしますか? じゃあせーので言いましょう。せーの」


「「ウインナーセット」」

「みんな同じですね」


 4人で笑った。


「シンシさんも一緒に食べませんかあ?」

「ニナさん、ありがとうございます。よろしいですか?」

「ええ、奢ってくれるんでしょ?」

「もちろんです」

「ええ、一緒に食べましょう」


 みんなで食事を食べた。

 


「ああ、美味しかったです。シンシさん、ご馳走様でしたあ」

「シンシさん、ありがとう」

「ありがとね」

「どういたしまして」


「シンシさん、嬉しそうですね」

「僕もウインナーセットが好きなんですよ。3人の反応はとても嬉しそうで自然と笑顔になります」


「お腹が一杯になった所で、私のメガネ、その真の力を使うわ。このメガネはマジックアイテムで相手の魔力が大体わかるの」


 剣士も身体強化で魔力をオーラに変換して戦っている。

 前衛も広義では魔法使いと言えるのだ。

 なので人の魔力を見ればおおよその強さが分かる。


「その前にあそこに座っている角の生えた兜に背中に剣を背負っている方は剣聖です。そのメガネは使用者より極端に魔力が高い場合壊れますよね?」

「そうね、私の3倍以上の魔力があると壊れるわ。剣聖は無しっと」


「それとあのフード付きのマントの背が小さい方はシーフマスターです。あの方もダメです」


 3強の内2人もここにいる。

 でも、本当に会いたいのは賢者グランロード。

 教えて貰うシンシ相手にグランロードさんの事は聞けなかった。

 あの時はそう思っていた。


「ブレインネルさん、ダメです。メガネを使う際は相手に確認を取ってからにしましょう。強さを見せたがらない人もいます」

「確認してならいいんでしょ?」

「そう、ですね」


「ブレインネルははしゃいでいるわね。いつもはもっと落ち着いているのに」

「後で街を見に行きたいです。わくわくしますよ」

「その前に、ダンジョンに行った方が良いです」


 ブレインネルが戻って来た。


「やっぱりみんな私より魔力が高いわ。少し頑張らないと」

「わ、私もこのままではまずいです!」

「毎日の積み上げが大事です。それで、観光の前に1回はダンジョンに行きましょう」


「とその前にシンシも魔力チェック」

「私もそこそこ魔力が」


 ブレインネルのメガネがパリンと割れた。


「申し訳ありません」

「いや、何かごめん、紳士のせいじゃない。私が確認しなかったから悪い」

「いえいえ、私の説明不足でした。壊れる危険性はあったのですが、私は、迷ってしまいました。剣聖やシーフマスターのようにもっとはっきりと言っておくべきでした。そうですね、私の魔力はそこそこに高いです。そうだ、もっといいメガネを作って貰いましょう。お金なら私が出します。ただ、次は剣聖のスラッシュさん、そしてシーフマスターのフライシャドーさんには絶対に使わないようにしましょう」


「シンシさんにはいいんですか?」

「いえ、やめておきましょう。1回壊れた相手に使うのはよくありません。あまりメガネに負荷をかけすぎない方が良いです」

「うん、許容範囲内でも強い人に使うと壊れやすくなるからね」


「マスター、ブレインネルさんに新しいメガネを」


 中年のおじさんがブレインネルのメガネを作った。

 そして料金はシンシさんが作った。

 その日、シンシとダンジョンに行く約束をした。



 ◇



【次の日・ダンジョン前】


 柱が4つある神殿のような建物の中心に魔法陣があった。


「はい、魔法陣に乗る前に手を、繋ぎましょう。ワープしたいと思えばワープですが、1人だけ先に行くのは危険です」


 シンシが私の手を握った。

 

「特に最初の内は手を繋いだままワープポイントに乗って、せーのでワープすると言いましょう。せーの」

「「ワープする」」


 ワープすると草原が広がっていた。

 奥には海・山・川、たくさんの自然が広がる。


「学園で習ったかもしれませんが国内最大面積と言われる『広大なる実りのダンジョン』です」

「シンシさん、私だけ手を繋いだままです」

「失礼しました。歩きながら話しましょう」

「はい」


「このダンジョンは冬でも暖かく、自然の実りが多くあります。そしてダンジョンの中に複数のダンジョンがある多重型ダンジョンです。パーティー白い雪玉は魔法使い2人、ヒーラー1人の偏ったジョブ構成です。今歩いている山には白い雪玉と相性のいいダンジョンがあります。ただ、他の冒険者が来ている場合、モンスターがあまりいないかもしれません。フレイさんは杖にまたがって飛べますよね? 少し遠いので飛んでも大丈夫ですよ」


「いえ、私も歩きます」

「……分かりました。ここはモンスターが少ないですが、出る時は出ます。慣れない道で知らず知らずの内に疲労が貯まります。出来ればしばらくの間3人だけではなく、誰か信頼できる人と一緒に行くようにしましょう」


 私達は山に向かって歩き、そして洞窟にたどり着いた。

 洞窟にダンジョンの魔法陣があった。


「休憩は必要ですか?」

「いえ、私は行けます。ニナ、ブレインネル、行ける?」

「行けます」

「行ける」

「分かりました。手を繋ぎましょう」


 こうしてダンジョンに入った。

 洞窟の魔法陣に入ると中も洞窟だった。


「ここはゴーストのダンジョンです。炎魔法が有効です。来ましたよ、ゴーストです」


 ゴーストは青白く光る人型。

 足の無いモンスターでふわふわと浮いている。

 そして状態異常の魔法を使ってくる。

 20体以上いる。


「当たりですね。さあ、3人で戦ってみましょう」


「ニナ! 下がって! ブレインネル! 一緒にファイアボールで攻撃よ!」


「分かった。ファイアボール!」


 ブレインネルが炎の玉をゴースト1体に当てるとゴーストが魔石に変わった。

 幽霊系は石や宝石に変わる事が多い。


「ファイアボール!」


 私の攻撃はゴーストに攻撃が当たると後ろのゴーストまで貫通して2体を倒した。


「これなら! ファイアボール!」


 次は3体を貫通して倒した。


 ゴーストがブラインネルに紫色の魔法を放った。


「ああ、毒にかかった。ニナ!」

「大丈夫です! リカバリー!」


 ブランネルの状態異常が治った。

 私とブラインネルでファイアボールを撃ってゴーストを全滅させた。


「お見事でした。今日の所は帰りましょう」

「魔石が20個もあります!」

「4人で分けましょう」


「お話の前に、一旦ダンジョンから出ますよ」

「はい」

「はい」

「うん」


 ゴーストのダンジョンから出た。

 

「フレイさん、失礼します」

「え? ひゃ!」

「おんぶしますね。ニナさん、ブラインネルさん、横に立ってください」

「え? よく分からないですけど、分かりました」


 シンシは2人を脇に抱える。


「フレイちゃんをおんぶして2人を脇に抱えるのは無理がありますよ?」

「大丈夫です!」


 シンシが走り出した。

 私が全力で走るより速く、そして体が軽い。


「こ、れ、は、そう、さ、まほう、です、か、ん!」

「はい、体を軽く浮かせて前に力をかけています。上下に揺れますよ」


 こうして私はあっという間にダンジョンを出た。

 そしてシンシは報酬を受け取らず3人で分ける事になった。


 今なら分かる、紳士は私と密着したいだけだった。 

 でもあの時の私はシンシに感謝をしていた。



 スラッシュが大きな声で言った。


「おま! 犯人はお前だ!」

「スラッシュさん、大声はよくありません」


「紳士、お前フレイに杖にまたがって飛ばせて下からパンツを見ようとしていたな?」

「それは否定しません」


「否定しないのかよ」

「考えてもみてください。もし目の前に至高の芸術品があったとします。目をつぶれと言われても誰しもが目を開いて見てしまうものでしょう」


「それとお前、フレイをおんぶして上下に揺らす事で服越しにフレイの体を感じようとしてねえか?」

「感じてはいます」

「そこも認めんのかよ」


「待ってください。まるで私が犯人のように決めつけるその言い方はおかしいです。物事にはコインの表と裏があります」

「出たよ、お前は頭がいい。そうやってもっともらしい理屈を付けてるだけだ! 紳士、お前が犯人だ!」


「まだ約束の話になってすらいません。フレイさんの濡れたようなエロスをも内包したその美声をもっと抱かれるように堪能しましょう」

「フレイ、シンシの口は、押える、続けてくれ」

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