【三匹の子ブタ、住宅ローンで破産】


かつて狼に家を吹き飛ばされた三匹の子ブタは、決意した。


「もう草の家も木の家もごめんだ。人生100年時代、資産は“家”だ!」


金融系YouTuber「ブタノミクス」がそう言っていた。

「金利は今が底! フルローンで夢のマイホームをゲットだブゥ!」


長男は手取り月18万円。頭金ゼロで都心のコンパクトマンションを購入。

次男は副業に憧れ、郊外の古民家をフルリノベして民泊ビジネスを始めた。

三男は堅実派。住宅展示場を20軒回り、固定金利・35年ローン・団信つきの鉄筋3LDKを契約。


「俺たち勝ち組ブゥ~!」


最初の一年は幸せだった。

長男は推し活に勤しみ、次男はSNSで「#DIY暮らし」を連投、三男は家計簿アプリに悦に入っていた。


しかし――金融の世界には、いつだって“狼”が潜んでいる。


長男は変動金利にした。金利0.4%。最初は笑った。

でもその笑顔は、日銀の利上げ一発で吹き飛んだ。

月々6万の返済が、ある朝の通知で8万に跳ね上がった。


「金利が動くなんて聞いてないブゥ!」

「契約書に書いてあったブゥ」

「字が小さすぎたんだブゥ!」


次男は想定が甘すぎた。

民泊はコロナで壊滅。古民家はカビ臭く、クレームレビューが積み重なる。


「自己実現って高くつくブゥ…」


三男の家は一見、完璧だった。

でも彼の勤務先はまさかの外資系。ある日Slackで通知が来た。


「君のポジション、シンガポールに移転します」


退職金と再就職のあいだに、返済は止まった。


三匹は同じ金融機関の“債務整理窓口”に並んだ。


窓口のブタは無表情で言う。

「“マイホーム”と呼ぶから錯覚するんです。“マイ負債”が正確な表現です」


彼らはついに気づいた。

● 固定資産税は、毎年必ず請求される。

● 修繕費は予測不能。

● 住宅ローン減税は、所得税がなければ意味がない。

● フルローンは「お前に現金がない」と大声で叫んでいるようなものだ。

● 35年ローンは、人生の半分を“銀行の家に住む”ということだ。


結局三匹は、競売、任意売却、リースバックと、ローン用語のカタログを地で歩いた。


今では狭いアパートで三匹一緒に暮らしている。

壁のホワイトボードには赤文字でこう書かれている。


「家を買う前に、人生設計を建てよ」


三匹はそれを見ながら、今日も金融YouTubeを見ている。

今度は「NISA」と「iDeCo」の再生リストに切り替えたようだ。

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