【明治の新聞記者、禁断の真実】
明治二十六年、東京。
帝都新聞の若き記者・高瀬信一は、ある記事の差し止めを命じられた。
記事の内容はこうだ。
「政府、内密に“電波盗聴装置”を試作か。
某工部大学校にて、外国技師と共同研究の形跡あり」
上司は目も合わせず言った。
「命が惜しければ、忘れろ」
しかし、高瀬は諦めなかった。
夜ごと工部大学校(現・東京大学工学部)に通い、外国人技師・メイヤー教授に接近する。
教授はうつむいてこう言った。
「あなたの国は、光の速さで支配しようとしている」
高瀬は意味がわからなかった。
だが、のちに“真実”は現れる。
教授は、極秘裏に開発されていた新型装置「遠聴筒(えんちょうとう)」の設計図を高瀬に渡す。
それは、空中を飛ぶ“電波”を捕まえ、人の声として再生する装置――
言い換えれば、「盗聴ラジオ」のようなものだった。
「このままでは、日本は言葉すら自由でなくなる」
高瀬は真実を記事にした。
だが、発行当日の未明、新聞社は火事に見舞われた。
出火元は、印刷機の下。
原因不明。証拠も証人もすべて灰と消えた。
以後、高瀬信一は消息不明。
彼の名は、新聞史からも抹消された。
令和のある日。
旧新聞社跡地の発掘現場から、焦げたノートの一部が発見された。
そこには、震える字でこう記されていた。
「言葉を持つ者は、いつの時代も狙われる。
だが、沈黙は抵抗にならない。
書け。記せ。たとえ焚かれても、火の中で光る真実がある――」
高瀬信一の遺した最後の言葉だった。
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