【完結】海に投げ捨てられたデブス聖女は暴れん坊国王に溺愛される
🐈️路地裏ぬここ🐾
第一章
第1話 デブスの偽物聖女は殺処分だ!
「デブスの偽物聖女が! 貴様を即刻処刑してやる!」
憤怒に満ちた表情でそう告げる王太子は、乱暴に
「偽物も何も、私は聖女だなんて一言も言ってないじゃないの!」
「黙れ! 魔物一つ浄化出来ず、聖石一つ生み出せない無能が! おい、召喚師、貴様も同罪だ!」
芽衣同様に召喚師のおじさんも突き飛ばされ、涙目で王太子を見上げた。
「本当にメイ様が聖女なんです! この水晶玉がっ!」
「そんなガラス玉はいらん!」
王太子は思いっきり振りかぶって、水晶玉を床に叩きつけた。
水晶が砕け散る音に、芽衣の心臓は震えあがる。
「……しかし殿下、せっかく異世界から連れて来たのに――」
「思いとどまってくださいよ。見た目が気に入らないからって処刑はちょっと……」
王太子の側近たちは思いとどまるように腕を掴むも、王太子は側近たちを振りほどく。
「こいつがいる限り、新たな聖女が呼べないじゃないかっ!」
王太子が芽衣を処刑したがるのには、そういう事情があるのだった。
◇◆◇
ここは海に囲まれた島国、サーペントリーフ王国。
近年、海からの瘴気の濃度が増し、魔物が多く出没するようになった。海辺の町が壊滅的な打撃を受け、騎士や魔術師達が総出で対処するも追いつかない。
そこで古代魔術と召喚師の出番だ。
召喚魔術の力で魔を払う――そう、聖女。聖女を召喚しようということになったのだ。
五百年前も聖女召喚の儀を取り行った。召喚された聖女は美しく、時の国王の妻となり国の発展に力を尽くした。
王太子は胸を膨らませた。どんな美女が召喚されてくるのか、と。
しかし聖女召喚の儀は失敗した。現れた聖女は聖女と呼ぶにはおよそ相応しくない女だったからだ。
「なんでこんなデブスを連れて来ちゃったんだっ! この無能が!!」
王太子は召喚師を蹴り飛ばす。慌てて芽衣が割って入るも芽衣も蹴飛ばされてしまう。
「ちょっと! 女の子に暴力振るうなんて最低なんですけど! このDV男!」
「うるせぇ! お前みたいなデブス、女じゃねぇ! 女を名乗るな! 俺はぜーーーーったいにこんなデブスとなんて結婚しない!」
芽衣は身長は150㎝に満たないのだが、体重が70kgとまるまるとしてたっぷりとした脂肪に包まれている。一方、王太子は引き締まった美しい筋肉を持つ女性を好む。まさに真逆のタイプなのだ。
「で、でも。殿下……いくら習わしだからといって、デブス……いえ、メイ様と結婚しなくてもいいじゃないですか。それならデブス……いえ、まるくても、いや、ふくよかでもいいでしょう?」
側近がそう
「こいつは聖女として呼ばれたのにも関わらず、聖魔術一つ使えないじゃないか。意味がない。それにこいつが生きていると新たな聖女が呼べないんだ。それじゃ困るんだ!」
そう、聖女召喚には制約がある。
召喚された聖女が生きている限り、新たな聖女が呼べないのだ。召喚しようとしても『もういるでしょう?』と時空を司る女神から拒絶されてしまう。
「だったら元いた世界に戻してよ! ねぇ、戻せるでしょ?」
横で転がる召喚師に
「…………戻し方を知らないんです」
芽衣は愕然とする。脳裏に浮かぶのは残してきた田舎にいる家族、友人。
(なんで? どうして私がこんな目に遭わなくちゃいけないの? お母さん……お母さんに会いたい)
芽衣の涙が床に落ちた。
「しかしですね、仮にも聖女として呼ばれた女性を処刑など、前例がなく国が乱れるようなさらなる国難が襲うかもしれません。国民に知られたら――」
側近たちが思いとどまるように王太子を説得するのだが、王太子は頑として譲らない。
「それならばこっそりと海に沈める。スピリト大陸側の海には精霊達が豊富に生息している。この女が本物の聖女なら精霊達を従えて浮き上がってくるだろう。そうじゃないのなら偽物だ。偽物を殺したところで祟りもないだろ」
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