天才科学者、魔術師を目指す。
不成モモ
第1話
天才科学者として名を馳せていた俺は、実験中の不慮の事故に巻き込まれて亡くなった──
気がつくと、魔法が存在する世界に転生していた。
オレは科学者として魔法がどういう仕組みで作用しているのか解明すべく、日々魔法の鍛錬や実験を行い研究している。
しかし、オレが今住んでいるこの村は、辺境の超ド田舎。
こんな村で手に入るのは「初級魔法大全」って初心者向けの魔導書だけ。
村長に譲ってもらったこの本では、魔法の仕組みを解明するには知識が到底足りない。
オレは六歳の時にその事に気づいていた。
そして、王都にある魔導学院に通いたいと思っていたんだ。
ただ、ド田舎の農家として暮らすウチの家計じゃ、魔導書を買ったり、王都の魔法学院に通うなんて夢は到底叶えられない。
だからオレは、手始めにド田舎村に現代知識をフル投入して、農業革命を起こしたのだ!
固くてパッサパサの栄養ない土・ボロボロの農具・ちっさくて味もしない作物・虫や動物に荒らされる農地……
このクソどうしようもない貧乏村を──
糞尿や食べ残し・灰など使った肥料を土に混ぜて、栄養満点の土に!
二毛作・二期作を広めて、生産効率も向上!
早く実って大きさもある、美味しい作物へと品種改良をすすめ!
深く掘り起こせて丈夫なクワを作成!
そして、ウチの農業が軌道に乗り始めたら、牛を買って牛耕なんかも始めたり、
香りの強いハーブを育てる他、カカシや丈夫な柵を設置して害獣対策なんかもした。
そしてそして、鍛え上げた魔法で地下を掘り起こして井戸を作り、岩や木をどかして農地の開拓や水路の開通を村全体に施したのだッ!
その結果!!! 今ではウチは豪農になり、ド田舎の何もなかった貧乏村は、農村地帯へと進化を遂げたのだった──
十歳の時、国の農務省の人が村の農業改革に興味を示して訪問してきた。
村を改革した少年と紹介してもらい、彼に気に入ってもらえた。
実は王都で魔法の研究をしたいことを打ち明けると、魔導学院への推薦状を書いてくれたのだ。
十二歳になり、収入が完全に安定し始めて、オレは父と母に打ち明けた──
「あのさ、二人に大事な話があって……」
「オレ、実は昔から王都で魔法使い目指したい! って思ってて……」
「父さんと母さんに許してもらえないかなって……」
「ですってよ父さん」
「そうか……」
「実はな、父さんと母さんは、アインが昔から部屋や森で魔法を練習してたこと、ずっと知っていたよ」
「いつかこんな日が来ると思ってた」
「アインが畑を良くしてくれてくれたから、今の裕福な暮らしがあるんだ……」
「お前には農家の才能もある。もし、王都で何かあったらすぐに戻ってきてもいい」
「父さん達はお前の夢を応援する」
「父さん……」
「人手のことも心配要らないわ。エルちゃんもこんなに大きくなったしね〜」
母の発言に妹のエレナは「なぁに?」って顔をしている。
「それからアイン、コレを持っていけ。父さんと母さんからの贈り物だ」
手渡された箱を開けると、中には立派な魔導師のローブが入っていた。
「え……⁈」
「母さん達ね、本当は十歳の誕生日に贈るつもりで買ってたのよ」
「俺も母さんも、なんだか渡しそびれちゃってだな……」
「いつかアインから相談された時に渡そうと思って、ごめんね」
「父さん母さん、ありがとう……」
「にーに! エルからもプエゼント!」
「はい! どーぞ!」
エレナは四葉のクローバーやキラキラした石をくれた。
「こんな大切なものもらっていいの? ありがとうエル! にいちゃんうれしい!」
ヨシヨシしてあげると、満面の笑みを見せてくれた。
「みんなありがとう……! どれも大事にするよ」
「……旅立ちはいつ頃にするんだ?」
「うん、来月になったら魔導学院の試験があるらしくて、前に村に来たフォズさんに推薦状を書いて貰ったんだ。」
「ああ、あの農務省の人か」
「父さんと母さんは田舎者だから、王都のこととか何もチカラになってやれなくて、すまんかったな」
「そんな……大丈夫だよ!」
「……そうだ! 今日はみんなでパーティーしなくちゃね!」
「ハハハ、そうしようそうしよう」
母の提案に父も賛同する。
「エルちゃん〜! 今日は楽しい楽しいパーティーですよ〜」
「ぱーてぃー?!」
エレナは目をキラキラさせていた。
皆んなで卓を囲み、最高の1日を過ごした。
そして……旅立ちの日が来た──。
「はい、手鏡は持った?」
「それから櫛、ちゃんと毎日髪は整えて」
「それから野菜とお肉とバランスよく摂る」
「夜更かしし過ぎない」
「もう大丈夫だよ母さん……」
「それじゃ……父さん母さん、今までありがとう……」
「ほら! 今日から新しい生活が待ってるんでしょ! シャキッとする!」
今思えば、この時の母さんは涙を一生懸命こらえていた気がした。
「アイン、手紙は欠かさずに書いてくれよ」
「うん」
「ほらエルちゃんもお兄ちゃんにお別れして」
エレナはどうやらオレが遠くに行ってしまう事を察知していたらしい。泣きじゃくって母さんにしがみついていた。
「エル、おいで」
ギューっと抱きしめてあげた。
「元気でね、エル。父さんと母さんのことよろしくね」
エレナは「嫌だ」と泣きじゃくってなかなか離れてくれなかった。
「じゃあ! 行ってくるね!」
「気をつけるのよ!」
「たまには帰ってくるんだぞ!」
こうして、オレは王都へと旅立った──
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