第33話 フィンからのお願い

 ミオンちゃんたちに戦闘技術を教え始めて3日がたち、今日の模擬戦闘では3人がかりで私に3回被弾させることが出来た。うん、まだオーンくんとアランくんがいないとはいえ3日でここまで動けるようになっているならすごい事だろう。


 今日もミオンちゃんたちと子供たちのための相部屋に戻ろうとしたところ、テオさんとフィンさんがやってきて、話したいことがあるから来て欲しいとのことでご飯の支度などはミオンちゃんたちに任せてフィンさんに着いていくことになった。


「集まったみたいだね、まず3人ともあの子たちに戦闘の仕方を教えてくれてありがとう。特にアリアくんはあの子たちと一緒に過ごしてくれてかなり仲良くなったようだね」


「いろいろありましたけど、ミオンちゃんたちと仲良くなれてよかったです」


「アリアは本当に人と仲良くなるのがうまいよな。どこにいても大体誰かと仲良くなって帰って来てる気がするよ」


 今回に関してはミドちゃんの時と違って本当にずっと一緒に居るからだと思うけどね…。おはようからお休みまでずっと一緒にいる子もいるし。


「それはいい事じゃないか。ロネットの事を思い出すよ。さて、本題なんだが、あの子たちを学院へ行かせてあげたいと思っているだが…」


「不安があると、んで俺たちにあいつらの事を見極めて欲しいと」


「まぁそんなとこだ。これでも俺はあの子たちの親に託されている。5人とも学院に行きたいと昔から言ってたのは親も俺も知ってたからな」


 学院で冒険者としての知識を得たり、鍛えていくという事はそれ相応のやる気とある程度の技量が必要になる…らしい。少し前にサマさんに聞いたことだけど。だからこそミオンちゃんたちの親はもちろん、ミオンちゃんたちの師匠であるフィンさんも不安があったという事なのだろう。


「少し前にロネットって言うやつが冒険者として村を出て行ってんだ。だからあの子たちも余計やる気になったって感じだ。それに関しては俺は嬉しくも思うし、頑張って欲しいとも思う。ただやっぱり俺1人だと限界があってな…」


「だろうな、剣を使ってるアランやリィン、オーンならまだしも魔法を主体として戦っているミオンとティティはどうしようもないだろうな」


「2人とも魔導書見たいなのを持っててそれをみて頑張ったらしいですからね。私が言っちゃいけないんでしょうけど、あの2人も結構凄い事をやってますよ」


 私たちが教える前はフィンさんが基本的な事を教えていたみたいだが、フィンさんは魔力を魔法に使えない方の人のためミオンちゃんとティティちゃんは偶然立ち寄ったらしい商人の人から貰った魔導書を見ながら独学であそこまで頑張ったらしい。


「あの子たちは今12歳だから次の年から学院に行くと高等部として入ることになる。しかももし最速で入学するとなるともう2か月もないことになる。だからこそいま冒険者である皆さんに助力を求めたんだ」


「なるほどな、てかそうかもうそんな時期だったか。高等部となると実技試験もあるだろうから焦るのも無理はないな」


「私はそう言うのにあんまり詳しくはないけど、あれだな大変なんだな学生?ってやつは」


「実はそんなことはありませんよ?大変な事もいっぱいありますけど、それ以上に楽しい事もいっぱいあるんです。それは世界外人ボーダーレスである私が保証します」


 学生だった頃の記憶はまだ全然残っているためこれに関しては断言できる。大変な事も楽しい事も、そのすべてが子供にとっては大切な経験になる。そんなことを中学の時の先生が言ってたような気がする。あの時はよく分からなかったが今になってようやくあの時言っていたことが間違っていなかったと気づけた気がする。


「流石世界外人ボーダーレス、いいこと言うね。それで俺たちは何をすればいいんだ?まさかこのままあいつらが入学するまで教えてくれとは言わないだろ?」


「もちろん、わかっている。3人にはあの子たちが冒険者としてやっていけるかを見定めて欲しいんだ。俺や親ではなく、いま冒険者である皆さんにお願いしたいんだ」


 私たちがミオンちゃんたちを見定める…?どうなんだろう、冒険者としてやっていけるかどうかという事だけならミオンちゃんたちはもう全然やっていけると思うけど、フィンさんが言っているのはそういう事じゃないんだろうなぁ。どうしたらいいんだろう?


「えぇ~?私から見たらもう十分強いと思うけどな。全然やっていけると思うぜ?」


「俺らの教えたことを忘れなきゃ、少なくとも学院には入れるだろうな。学院に入れるだけの実力があるなら冒険者として十分やってける。が、そんな事はフィンだってわかってんだろ?さしずめあいつらにもう少し緊張感を持って欲しいってとこか?」


「あはは、そういうことだな。ただそれだけじゃない。あの子たちはあの子たちが思っている以上に強い子たちだ。だからこそ自信を持ってもらいたいんだ。そして―――」


「そして、冒険者の厳しさってやつを教えてあげて欲しい。つまりあの子たちと本気で戦ってほしい」


 冒険者になるという緊張感と自信を持って欲しい。そう告げたフィンさんはそれからさらに続けて言葉を出そうとしたが一度止まり、息を吸ってから再度言葉を紡いだ。本気で戦ってほしい。私が毎日何回かしてあげる模擬戦のように手加減は出来ない。


「おぉ、思ったより厳しいんだな。それなら適任がいる。アリアだ」


「んえ!?私ですか!?」


「私も本気で戦うならアリアがいいと思うよ。私たちだと多分本気でやってもちゃんと負けちゃうと思うし」


「多人数戦はなぁ、いくら子供でかつ戦闘経験が薄いとはいえ連携力が凄まじいからな。まじで相手になる気がしない」


 えぇ…ほんとに私がやるのぉ…?別に私もそこまで強い魔法使いじゃないしなぁ…。確かにテオさんとサマさんとは違ってどちらかと言うと多人数戦は得意だしいい勝負は出来ると思うけども。


「はぁ、わかりました。私がやればいいんですね…。でも最初から全力は出すつもりはありません、全力を出すのは私がみんなを認めてからです」


「そこはアリアくんに任せるよ。なにからなにまで申し訳ない…!」


「ふふ、大丈夫です。私も結構楽しみになってきました」


「さっすがアリア。昔マッチと戦うって言った時もそうだったけど、アリアってこういうちょっと無謀な戦い好きだよな。おしとやかそうに見えて好戦的なんだから」


 無謀な戦い…いやまぁ無謀ではありそうか、ミオンちゃんたちと戦うって事は3人ではなく5人同時に相手取るという事だ。いくら私が多人数戦が得意とは言えども流石に限度を超えている。私も少し考えながら戦わないと簡単に負けちゃうだろうなぁ。


「なら、もう少しハンデがあった方が面白いか?明日からはバラバラで集まるんじゃなく、全員集まって訓練をすりゃいいんじゃないか?それぞれの戦い方を理解する時間は必要だろうしな」


「いいですね。オーンくんとアランくんがどういう動きをするのか分かっていればミオンちゃんもティティちゃんも合わせやすいと思いますし」


「アリアはどこまで行ってもアランたちの事のほうが大事なんだな」


 5人で1つのチームを作っている以上だれがどういう動きが出来て、どうやって動くのか分かっていないと個々が強くてもぐちゃぐちゃになってしまう。それだとここまで練習してきた意味も薄い。それに折角やるならミオンちゃんたちも全力で来て欲しいからね!


「アリアくん重ねて悪いが、本当にありがとう…!そしてこれからもあの子たちと仲良くしてあげてくれ!」


「もちろんです、私もしばらく王都に滞在する予定ですからきっと王都でも会うことになると思います。…ふふ、そろそろミオンちゃんたちの所に戻りますね」


 かなり長いこと話していたようで家の外から何個か足音が聞こえてきた。おそらくあまりに遅いから心配になって聞きに来た人が何人かいるのだろう。私は気づいていないふりをして部屋を出ようとすると、焦ったような足音が聞こえてきたかと思うと一瞬で足音が消えてしまった。


「別に悪いことしてないのに。ではテオさん、サマさん、フィンさんおやすみなさいです」


「あぁ、また明日」


 私が相部屋まで戻ると、何事もなかったかのように5人が遅かったねと声をかけてきた。気づいていたよと言おうかなとも思ったが、時が来るまで秘密にしておくことにした。


 明日からもっと大変になるし、私も気合を入れないとね!

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