とある図書館の異世界探査記録
Aria(エイリア)
第0話 名もなき図書館
夢を見ているのかそれとも死んでしまったのか。それは分からないが取りあえずここが図書館のような場所だという事だけは間違いない。かなり古めかしい図書館だが綺麗ではあり、明かりが少ないのにも関わらず何故か暗いと感じることは無いくらい明るい。
図書館に並んでいる本を1冊手に取ってみたが見たこともない言語で書かれていた。日本語でもなければ英語でもない。どちらかと言えば古代文字のような感じだろうか。
「あれ?もしかして迷い込んじゃいましたか?」
何をするでもなく歩き続けていると、1人の小さな少女が話しかけてきた。少女はゲームの世界にいるような服を身にまとい、その体には似つかないほど大きな本を抱えていた。
「なるほど~、ではちゃんとご挨拶をしないとですね!ようこそ、そしてこんにちは。ここは『名もなき図書館』と言います。私はこの図書館の司書のアリアと申します!」
…名もなき図書館。やはりここは図書館ではあった。それにしてもこんな小さな女の子が図書館の司書を務めているのか。
自分が今どういう状況なのか、ここはどういう場所なのか気になる事をアリアと名乗る少女に聞いてみることにした。
「ここは夢と現実の狭間のような場所です。正確にはちょっと違うんですけどね。今あなたは夢を見ているんです。たまに妙に現実的な夢を見る時がありますよね?今はそういう状況なのです」
夢を見ている…。死んでいる訳では無さそうで安心した。夢と現実の狭間、アリアはこんな空間に住んでいるという事か?それともただ自分の夢の中だけの存在なのか。
「私ですか?私はここに住んでいますしあなたと同じで生きていますよ。折角ですから何か本をお持ちしましょうか?ここにはあなたのいる世界の本だけではなく、いろんな世界の本が揃っています。剣と魔法の世界や機械化学が発展した世界、ゲーム技術が発展した世界など本当にいろいろな本が揃っていますよ!」
色んな世界、つまるところ異世界って事か?ここも自分からしてみたら異世界みたいなものなのだが。…そうかここが本当に夢と現実の狭間なら自分の世界とは別の世界の人と繋がってもおかしくはない。
異世界の話も気になるが、もしまたこの場所に迷い込むことがあった時のためにアリアの事もしくはこの図書館のことを知っておきたいという事を伝えてみた。
「わ、私のことですか!?えっと…と、とりあえずこの場所は、私のほかにも何人か司書として働いている人がいて、その人たちがいろいろな世界に赴いて世界の事を調査して本にしているんです。それで…私の事なんですけど…私が初めて異世界に探査をした時の本ならすぐに持って来れますけど…」
異世界に行って異世界を調査する。ここはそんなことが出来るのか。自分はこの場所の住人ではなく、あくまで客の立ち位置であるから異世界に行ったりは出来ないだろうが、語彙力は無いがとてもわくわくする。
アリアが初めて異世界に行った時の本ならこの図書館の事ももう少し知れる可能性がある。少し恥ずかしそうにしているアリアには申し訳ないがアリアの言う本を持って来て欲しいと伝えた。
「分かりました…。いえ、大丈夫ですよ!?ここは図書館ではありますからあなたの望む本を持ってくるのが私の仕事ですから。少しここで待っていてください。読めそうな本を探して読んでいてもいいですよ」
アリアは持っていた本を元にあった場所に戻した後、隠そうともせず空を飛びながら奥の方へ行ってしまった。本当に不思議な場所に迷い込んでしまったようだ。アリアの言われた通り読めそうな本を探しながら待っていると、また飛びながらアリアが帰ってきた。
「お待たせしました!これは私が初めて行った世界、『クレドラス大陸』でのお話です。他の本よりは短いんですけど、あなたが目覚めるまでの間ならおそらく読み切れると思いますよ」
そうか自分は今夢の中にいるんだった。確かにさっき手に取った本と比べてかなり薄い本だ。軽くパラっとめくって見たが、しっかり日本語で書かれているため自分でも問題なく読めそうだ。
「それでは私は仕事に戻りますね。あなたが目覚める少し前にまた会いに来ますね。それではごゆっくりしていってくださいね」
アリアはぺこりとお辞儀をした後また飛び去ってしまった。静かになった空間で、受け取った本のページを捲る。
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