第23話 巨鳥ガルーダ

「流石に今まで戦ってきたやつらとはわけが違うな」


「そうですね…」


 戦い始めてからどれくらいが経過したのだろうか。こちらの攻撃事態は当たってはいるため、全くお話にならないというわけではないがそれでも今のペースだと超長期戦になるだろう。


「どうにかして隙を作らないといけないのに…!っ音速の風ソニックブーム!」


 やはり空を飛んでいることもありテオさんの攻撃も通りにくく、かといって私が空を飛んで攻撃しようにも空中での機動力に差がありすぎるためすぐに撃ち落とされそうになる。さらにガルーダ自身も風を扱う力があるようで、ちょっと時間をかけると風の攻撃が飛んでくる。


「風魔法…使われとほんとに厄介ですね…。撃ち落とすだけで精一杯なんですけど」


「撃ち落とせるだけ助かるけど…な!っち…にしても攻撃が当たんねぇ!」


「やっぱり私が飛んでどうにかするしか…!」


 どうにかして数秒でも地面に叩き落とせればテオさんの攻撃が届くようになるんだけど…。あんだけ大きな魔物を風で押さえつけるのは流石に無理だ。となると氷魔法で無理やりやるしかないか?


「テオさん、一回やって見るので合わせて下さい!」


「おっけー、何やるか分からないけど任せな!とりあえず突っ込んでみる!」


 そこそこな時間ガルーダと戦っていて何点か分かったことがある。1つは高い所にいる時の機動力は高いけど低空飛行している時の機動力大したことがない事。もう1つは風を使った攻撃をした後は近接攻撃を仕掛けてくること。おそらく連発して使えないのだろう。

 つまるところ氷魔法で撃ち落とすなら低空飛行している今がチャンスだということだ。


「いい感じにテオさんがヘイトを買ってくれてる今しかない…!最近ようやくたくさん打てるようになった氷結槍アイシクルランスを食らえ!」


 テオさんが地上でガルーダと相対している隙にガルーダの後ろまで風魔法を使い飛んでいき、そのまま氷結槍アイシクルランスを3発作りガルーダに飛ばす。


 完全に不意を突いた攻撃だったのもあり、氷結槍アイシクルランスは見事にガルーダに命中しガルーダは大きな声をあげて倒れこんだ。


「テオさん!」


「わかってるって!紅蓮脚ぐれんきゃく!…打ち上げてからのもっかい寝てな先天落としせんてんおとし!ほら今度はアリアの番だぜ!」


 テオさんは紅蓮脚で流れるように2撃加えた後そのままの勢いでガルーダを蹴り上げそのまま数メートルほど打ち上げた。かと思ったらテオさんはガルーダの頭付近まで飛び上がりそのまま思いっきり頭を殴りそのまま地面に叩き落とした。


「む、無茶苦茶だ…。氷の剣アイスブランド、そのまま凍り付け!氷の棺アイスコフィン!」


 テオさんの攻撃に少し呆れながらも空中で氷の剣アイスブランドを作り出し2回切りつけ、そのままガルーダを氷で包み込み完全に動きを封じた。


「おー、こりゃまた豪快な魔法だな」


「あの巨鳥を打ち上げた挙句そのまま叩き落したテオさんに言われたくはないです。魔力消費が激しいのであまり使いたくはないんですけどね」


 魔力量がかなり増えたとはいえ流石に魔法を使いすぎた。まだもう少しなら戦闘できたかも知れないが、それでも戦えて5分くらいだろう。こんなに魔法を使ったのはいつぶりだろうか。


「いやー、流石に疲れたな。ま、これであの村の物流もよくなるだろ」


「そうだといいんですけどね。一旦村まで戻りませんか?報告ついでに休憩もしたいですし」


「だな、アリアもかなり魔力を消耗してるだろうし、1日あの村で休んでもいいかもな」


 氷魔法は時間が経過すればちゃんと溶けてなくなるし、魔物も時間が経てば消えてくれるためこのまま放置していても邪魔にはならないだろう。

 村を困らせていたガルーダを討伐できたことを報告するために一度村に戻ろうと凍り付けになったガルーダに背を向けたその時だった。


「クァアァァァァ!!!!」


 後ろの氷が勢いよく壊れた音がしたのとほぼ同時に、ガルーダの咆哮が轟いた。後ろを振り返るとさっきまで戦っていた時よりも明らかに風の力が強くなっているのが分かった。簡単に言えば怒っている。


「うそだろ…あれで倒せてないのかよ」


「困りましたね、あれさっきよりも強そうですよ」


 困惑する2人をよそにガルーダは空中で大きくそして速く回転しだした。初めはまた風の攻撃をしてくると思っていたが、今回のはさっきまでの風の刃のような物を飛ばすだけなんて優しいものではなかった。


「まずい、テオさんこっちに来てください!」


「竜巻!?おいおい、それはやり過ぎだろ!?」


 気づけば目の前には巨大な竜巻が目の前にあり、躱そうとするには行動が遅すぎた。とはいえ

 巨大な竜巻が2人を包み込みしばらくした後、竜巻が綺麗に消えた。ガルーダは脅威とみなした2人の方をじっと見つめ、脅威を排除できたと思い飛び去ろうとしたが、すぐにまた戦闘態勢になった。


「おお…あぶねぇ…」


「1回だけの奥の手ですけどね。流石魔道具です」


 使ったのは少し前にテオさんから受け取っていた魔道具。『結界の魔道具』…そう名付けただけなんだけど。雨や風を防げるのならと思っていたが予想通りの効果を示してくれた。ただこの魔道具は1回使うとしばらくは使えないため、正真正銘1回きりの奥の手だった。


「とはいえこれなにも解決してないんですよね。ただあいつの大技を1回防いだだけですから」


「あんだけ頼りにしてたアリアの魔法も今の魔力残量的にあまり頼れなそうだし、さっきアリアが頑張ってくれた分私が頑張んないとな」


 幸いガルーダが纏っていた風の力も今は収まっている。確かに攻めるなら今の内だが、テオさん1人で攻め切れるとは思えない。それなら私がやる事は決まってる。


「テオさん、今度はテオさんが隙を作る番です。私も手伝うのでガルーダを無防備な状態で打ち上げて欲しいです」


「まだなんか策があるんだな。アリアは何をするんだ?」


「私はこれを使ってテオさんに支援魔法をかけます。支援魔法くらいなら今の私の魔力残量でも余裕を持って使えますから」


 持っていた杖を背中に背負い、ポケットから小さい箱のような物を取り出して展開する。展開したのは少し前にロンドさんに買って貰った魔導ギター。まだまだ練習不足で杖を使っている時よりも魔法の精度は落ちるが、支援魔法に関しては問題ないのは検証済みだ。…というか何故かギターじゃないと支援魔法が使えない。


「そんなの持ってたのか…って、うお!?突っ込んできた!?」


「任せて下さい!防御の演奏ディフェンス・ビート!」


 ガルーダは私より前にいるテオさんを狙って、足の爪を立てながら勢いよく突進してきた。強敵を前にのんきに会話をしていたテオさんは不意に防御姿勢を取った。


「い…ったくないな!?これなら押し返せるぜ!」


「一時的なの物ですから慢心しないでくださいよ。攻撃の演奏アタック・ビート!今度はこっちの番ですよ!」


「これが支援魔法か、いいねぇ演奏のせいかもしれないが乗ってきた!1発貰っていきな、疾風突き!」


 ギターを思いっきりかき鳴らし、テオさんに力を分け与える。演奏の効果もあってかテオさんのテンションも上がってきたようだ。実戦で支援魔法を使うのは初めてだがやはりギター、というよりは楽器との相性はよさそうだ。


 テオさんの攻撃をもろに食らったガルーダはたまらず空に逃げ、そのまま風を用いた攻撃に切り替えた。今更だが魔物にしてはかなり戦略的に戦っているような気がする。今までの魔物よりもかなり戦いずらい。


「風の攻撃くらいなら撃ち落とせるよ!風の刃ウィンドエッジ!それ、いち、にー、さんってね!」


 ギターを3回引くのと同時に風の刃がガルーダの放った風の攻撃に飛んでいく。威力は弱くとも風魔法と相殺するくらいなら魔導ギターでもできなくはない。むしろ杖を使っている時よりも攻撃間隔と弾速は速い。


「そのまま地上の近くまで来てもらうよ、それ追尾魔法サーチ・マジック!どこまでも追いかけるよ!」


「ほえぇ、そんな事も出来るのか。なんて感心してる場合じゃないな、よしタイミングを見て…今!!」


 どこまでもと言いつつも結局数秒もしたら追尾性能なんてなくなるんだけども。それでも地上近くにいるとテオさんの攻撃を食らうと学習したガルーダを何とか地上付近まで近づけることが出来た。いくらのんきなテオさんだとしてもこの機会を逃すほど経験が浅い冒険者ではない。追尾性能を失った魔法弾を躱しながらガルーダの懐まで潜り込んだ。


「今はまだアリアの支援魔法が残ってるからな、一気に打ち上げるぜ。正拳裂波政権れっぱぁぁ!!ふぅ、自分でも分かるくらい火力が違うな。アリア!」


「テオさん流石です!私が今の魔力残量で使える大技は2つ…その2つを一気に使います。マッチさんの魔法をお借りします!衝撃波インパクトサージ!急いで杖に持ち替えて…よし、もう1回凍り付け!氷の棺アイスコフィン!」


 テオさんが懐に潜り込んだのを確認してから私は空に飛び上がり、ガルーダが飛んでくる場所で待機をしていた。それをテオさんが見ていたのかどうかは分からないが、丁度ドンピシャで私の真下まで飛んできた。

 その位置からマッチさんが使っていた魔法の1つ衝撃波インパクトサージを使いガルーダをまた地上に叩き落す。そのまま急いでギターをしまい杖に持ち直し、ガルーダが起き上がってくる前に氷の棺アイスコフィンで再度閉じ込める。


「テオさん、あとは頼みました…。さっきみたいになっても嫌ですから…そのまま思いっきり殴って下さい…!」


「なるほどな、そのまま休んでな。支援魔法も残っててここまでお膳立てされたんだったら私も全力でやらないと失礼だよなぁ!全力で行くぜ…?私の奥義候補の内の1つ…食らってオマエも休んじゃいな!拳脚炎舞けんきゃくえんぶ!うぉぉりゃぁぁ!!」


 テオさんは氷を力強く殴り氷を破壊した後、今まで足にしか纏わせていなかった炎を足だけではなく両手にも纏わせた。そのままノックバックして困惑しているガルーダに近づき目にも止まらぬ連撃を浴びせた。その動きはただ暴れているようにも見えるが、その名の通り踊っているようにも見える。

 ひとしきり暴れた後テオさんはとどめと言わんばかりにガルーダの頭を蹴り降ろした。


「これで…どうだ…?」


 ガルーダはピクリとも動かなくなったが、さっきの事もあるのでレーテさんの監視をしているネイジャーさんに少しお願いをしてガルーダの様子を確認してもらったところ、今度こそちゃんと倒せているとのこと。


『……見てなかったからあれだけどよく2人で倒せたね』


『テオさんも私も超限界ですけどね…。ネイジャーさんも忙しい所をすみません』


『いやいや、大丈夫よ~。そもそもアリアくんのサポートが出来てない方がおかしいからね。あぁ、それで思い出した。あと2日くらいでレーテが帰ってくるからまたサポート出来るよ』


 ネイジャーさんはそのままレーテさんの監視に戻った。テオさんにようやくガルーダを倒せたという事を伝えたのと同時に、1度経験したことのあるキーンという音と同時に頭痛が起きた。魔力酔いだ。


「ぐぅ…すみませんテオさん…私の事を背負えますか…」


「いや…悪い、私も流石に限界。5分だけ待ってくれ…」


 だよねぇ…。支援魔法をかけていたとはいえ継続戦闘し続けて推定30分。そりゃこんだけ戦っていたら疲れるよ。私も魔力切れを起こさないように節約しながら魔法を使っていたから余計時間がかかった印象だ。

 2人してガルーダの近くで倒れていると、複数の足音がこっちに近づいてきているのが聞こえてきた。


「まさか魔物ですかね…?」


「おいおい、まじかよ。ったく…私がやるしかないかぁ…?」


 近づいてくる足音に緊張しながら待っていると、現れたのは魔物ではなくさっきまでいた村の村人だった。


「本当に倒したのか…。いや、今はそんなこと言ってる場合じゃないな。おい、あの2人を村まで運ぶぞ!」


「お嬢ちゃん大丈夫かい?ほら、おばさんの背中に捕まりなさい?」


「あ、すみません…お願いします…」


 私は村の人に担いでもらって村に行くと、私を担いでくれていた女性はベットまで運んでくれて私を寝かせてくれた。頭痛の痛さと今まで感じたことのないくらいの疲労感に襲われ、直ぐに眠りについてしまった。

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