第14話 潜入作戦
「嬢ちゃんここでおとなしくしてるんだな。おとなしくしてたら痛いことはしないからよ…?」
「やだぁ…おうちに返して…」
………レーテさんが大口を開けながら笑っているような気がする。今の私は囮役だから演技しているのだが、ここまで恥ずかしいものだとは思ってもいなかった。
何故私が今まで持っていた杖も持っておらず、黒いワンピースの様な服から少しボロい服装に変わっており、手を縄で縛られて拘束されているのかというと、話は3時間ほど前に遡る。
「よし、とりあえずこの町で休憩するか」
「おーやっと町についたー…そろそろふかふかのベットで寝たいですー…」
山を降りてから約1週間、距離的にはミュージャンからデラント村までの距離と変わらないはずだが、あの時はロンドさんもいて3人パーティだったのが今は私とテオさんの2人しかいないため、相対的に戦闘時の負担が増えているためあの時よりもかなり疲れた印象だ。
「はは、まぁわかる気もするけどな。ロンドがいかに強かったがわかるよなぁ。私ももっと精進しないとな」
「テオさんはいいですよねぇ…魔力を使わなくても戦えるんですから…体力とは別に使わないといけないものがあって大変です」
『今更何言ってんの。魔法使いなら慣れなきゃダメだぞー』
魔法使いになりたくてなったわけじゃないんだけどなぁ…。でもこの体で剣を振ったり、テオさんみたいに殴ったりは出来なそうだから、よかったといえばよかったんだけども。…軽い短剣とかなら何とか使えそうかも?
「私は私で疲れるんだよ?まぁ私に魔法は打てないから魔力ってのが何なのか分かんないから何とも言えないんだけどな。…にしてもなんか静かだなこの町」
「そうですねミュージャンより小さい町ではあると思うんですが、それでも遠目から見てそこそこ大きな町だとは思いますし、ここまで閑散としているのはちょっと違和感がありますね。この町ってどんなところか分かりますか?」
人は歩いているのだが、どことなく覇気がなく人の流れもまばらで人の会話が聞こえてこなかった。少し眺めた感じ開いているお店も少なくテオさんの言う通りかなり静かだ。
「この町はエンフトって言う町で昔は普通の町だったんだが、5年くらい前の戦争で戦線孤児がかなり増えた時にこの町はその戦線孤児を受け入れ始めたんだ。だからこの町の人口が大人より子供の方が多くなったって町なんだ。この町では子供でも店を経営出来るんだと」
「はぁ…子供でもしっかり生きて行けるようになっているんですね。という事は子供のための町って感じなんですね。………にしては子供の姿が見えないですね」
「そうなんだよなぁ、そこは私も気になるんだよな」
なんか不安になってしまう。自分も子供の体をしているからっていうのもあるのかもしれないが、それ以上に今までの町が活気がありかなりざわざわしていたこともあり、この町の静かさがちょっと気になってしまう。
「何があったのか歩いている人に聞いてみますか?」
「ああ、そうだな。もしなんかの事件だったなら冒険者として助けるべきだしな!」
「………冒険者?あなた方は冒険者の方なのですか!?」
話を聞くために近くの人に話しかけようとしたところ、冒険者という言葉に反応して聞きに行こうとしていた女性の人がすごい勢いで近づいていてきた。よっぽど大変な状況なのか、かなり前のめりであのテオさんですら少し驚いていた。
「おぉ…確かにそうだが…とりあえず一旦落ち着いて話してくれないか…?」
「あ…す、すいません…つい興奮してしまって…。今この町は大変な状況になってまして…私が説明するよりもここの町長の家に行けば詳しいことが聞けるので、一緒についてきてくれませんか?」
「私たちは元々そのつもりでしたから大丈夫ですよ」
町で出会った女性の方に連れられてこの町の町長さんの家に行くことになった。そこまで向かう途中町の様子を見るついでに軽く何があったのか聞いてみたところ、どうやらこの町で子供の誘拐事件が多発しているらしく、その影響で店が閉まっていたり町に活気がなかったりしているとのこと。確かに昼にも関わらず、カーテンが閉められている家が多かった気がする。
「ここが町長の家です。そのまま入っても大丈夫ですのでどうぞ…」
「わかった、町長ー、家に居るかー?」
「テオさん…ここでもため口なんですね…なんか肝が据わっているというかなんというか…」
この人本当に16歳なんだろうか…明らかに年上の人に対してもため口だし話し方もどことなく高圧的だし…この人が現代日本に居たらどうなるのか…。ここまで高圧的な人は漫画とか小説の中でしか見たことがないんじゃないかなぁ。
テオさんがノックしながら喋りかけると、優しそうな声で入ってどうぞと声をかけられた。ゆっくりとドアを開くと、おそらくベランダと思わしき場所で座っている50代から60代くらいの男性が座っていた。
「その姿を見るにお二人は冒険者の方ですかな?いやはや何もおもてなしは出来ませんが、どうぞ座って下さい。イドラもここまでありがとうね、君も座っていきなさいな」
「じゃあお言葉に甘えてっと、それで?具体的に何があったんだ?軽い事はイドラに聞いたけど詳しい事はまだ聞いてないからな」
「テ、テオさん!この町の偉い人ですよ!もっと敬意を払わないと…!」
「はっはっはっ、別に構わんよ。元気がよくていい事だ、君はまだ子供なのにしっかり者なんだねぇ」
流石にテオさんの話し方が気になってしまいツッコんでしまったが、町長さんはこういったことに慣れているのか軽く流されてしまった。今考えてみるとこの町は子供が多いんだからテオさんみたいな大人はともかく、私と同じくらいの子供たちなら町長さんだとしても敬語で話す子の方が少なそうだから慣れてはいそうだな。
「さて、今のエンフトで起きていることはイドラから聞いたのだったかな?エンフトでは1週間ほど前から子供たちの誘拐事件が多発している。今までで合計15人の子供たちが攫われている。残念ながらこの町には冒険者協会はないため、この事件に対応してくださる冒険者の方が居なくてなぁ…」
「1週間で15人も攫われたんですか!?この町には守ってくれる人っていないんですか?…あ、冒険者協会がないのか…」
基本的に町を守るのは冒険者協会の人たちがやるらしく、冒険者協会がない町は自分たちで町を守らないといけないらしい。町の中に魔物が入らないように結界のようなものがなされているため魔物の脅威がないが、人間に対してはそうはいかない。だから冒険者協会がない町は魔物以外の防衛システムが弱い町が多いらしい。ましてやここは子供が多いためなおさら防衛システムが弱いんだろう。
「そのとおりです。私たちもある程度抵抗したのですが、やつらは夜に家に侵入して攫って行くためすべての家を守るのは難しく、私たちの手ではどうしようもなくなってしまったのです…」
「はい…私の家にいた子供も1週間前に攫われてしまって…。お二人の口から冒険者という言葉が聞こえてきて…王都に使いを出してこのことを伝えているのですが…いつこの町に王都からの支援が来るかは分からずでして…」
「なるほどな、それで私たちに助けを求めたって訳か。ただなぁ…この町の広さを2人だけでどうにかするのは難しいからなぁ…せめて敵の根城が分かってるなら何とかできそうなんだが」
テオさんの言う通りこの町はミュージャンほど広くないとはいえそこそこの広さを有しているため2人でどうにかすることは難しく、魔物相手ならともかく今回は対人戦になるため図書館の助けを借りることも出来ないからどうしたものか…。
「やっぱり王都からの助けを待つしかないんですかね?」
「それなのですが…実はこのような手紙が私の家に届きまして…。内容を言いますと『子供たちを返してほしかったら30000ゴールドをよこせ』とのことです。期限は明日の朝まで…」
「はぁ!?なんでそれを先に言わないんだよ!?」
期限は明日で30000ゴールド…王都からの助けがいつ来るか分からない現状私たちが何とかしないといけないが、この広い町を守るのは難しい…。………いや、もしかしたこの方法ならいけるんじゃないのだろうか…でもテオさんが同意してくれるかどうか…。
「一つ聞いてもいいですか?その…誘拐犯は今日もやってくると思いますか?」
「おそらく今日も来ると思います。この手紙が届いたのは2日前なのですが、事実昨日も2人攫われていますから」
「なるほど…でしたら1つ作戦があります…そしておそらくこれが1番いい作戦だと思います…。それは―――」
そして私は町の子供になりすまし、わざと誘拐され今敵のアジトに1人で来ている。こっちの位置は魔力玉というアイテムで知らせているため、しばらくしたらテオさんが助けに来てくれるだろう。それがどれくらいかかるか分からないため、バレないようにしないといけないのだが…さてどうなるか。
「おい、なんかあのガキがいっぱいいる町に冒険者らしきやつが歩いていたんだがなんだあいつ」
「ちっ、まさかあの町長のやつ冒険者を雇ったのか…?なめたことをしやがって…それなら俺たちも約束を守る筋合いはないよな?」
「ひぃ…!?やめてこないで!?」
まずい…テオさんの事がバレたかも…。まさかこっちじゃなくて、町にいるテオさんの方がバレるなんて…。男は近くにいた女の子に近づき、乱暴に腕を掴もうとしたところを1人の女の子が腕を広げてかばった。
「さ、させません!それに町長さんはそんなことしません!あなたたちみたいな悪い人は冒険者の人がやっつけてくれるもん!」
「うるせぇな!ここには助けなんか来ねぇよ!静かにしろよ!あぁ…くそこれだからガキはよぉ!」
かばった子供は必死に抵抗したが、もちろん普通の女の子が大人の男性に勝てる訳もなく簡単に投げ飛ばされ、そのまま男は怒りに任せて女の子に殴りかかろうとした。が、殴る直前女の子に拳が届く寸前、男の横を炎の玉が横切った。
「はぁ…本当は戦いたくなかったんだけどなぁ…やっぱりこうなるかぁ。でも流石に幼気な女の子に殴りかかるのは見てらんないですからね。さておとなしくしてくださいね?お兄さんがた?」
男が炎の玉が飛んできた方を見ると、そこには少しボロイワンピースを着てと拘束していたはずの女の子がそこには立っていた。しかし、その女の子は周りにいる子供たちとは違い明らかに様子が違う。にやりと笑った少女に男たちは戦慄を覚えた。
「あなた…もしかして…!」
「うん、任せてみんなは私が守ってあげる!この冒険者である私が!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます