第6話 初めての依頼

 ミュージャンと呼ばれる街に着いてから5日が経過しアウルダム城下町へ目指すための準備も大体整ってきた頃、今日はテオさんに連れられてこの街のギルド協会へと足を運んでいた。


「ようこそギルド協会ミュージャン支部へ!今日はどういったご用件でしょうか?」


「今日は私とアリアの正式なランク判定をしに来たのと、今から少しでも稼げる依頼がないか探しに来た感じだな」


 ランク判定…。そう言えばレーテさんが夢の中でそんなことを言っていたような気がする。冒険者として活動するようになったときはみんな一律でEランクスタートだから正確なランクを測るためにはミュージャンのギルド協会に行ってみると言いって。


「ランク判定ですね。かしこまりました!依頼に関しましてはランク判定が終わってからにいたしましょうか。ではこちらにどうぞ」


「よし、行こうか」


「う、うん」


 受付をしていた人についていくと中央にランクを測る機械?と思われるものが置かれた部屋へと通された。その機械自体はそこまで大きくはなく機械の中央には手をかざすような場所があるため、おそらくあそこに手をかざしてその人の適正ランクを測るんだろう。


 それにしてもこれまた、こういった異世界ではありがちなものが出てきたなぁ。でもこうして目の前で見るとちょっと緊張する。…どうせEランクなんだろうけども。


「それでは手をかざしてみてください」


「おう!あ、アリア、私からでもいいか?」


「はい、大丈夫です。私はまぁ…」


 テオさんは少し困った様子を見せたものの、「それじゃあ」と言って機械へと手をかざした。すると、『Cランク』という文字が浮かび上がってきた。テオさんはCランク相当の強さがあるという事らしい。次に私が手をかざしてみると機械からは『Dランク』という表示が出ていた。


「あれ…?私ってDランクだったんだ…」


「何を心配してたか知らないけどさ、意外と測ってみないとわからないんだって」


 これも名もなき図書館と繋がっているのが原因なんだろうか…?戦闘することに関しての経験が少ないだけで、実は初めからちょっとだけ強い状態で異世界に転移してきたのか、はたまた本当に自分の体がこの世界にかなり馴染んでいるだけなのか。どちらにせよテオさんの言う通りちゃんと測ってみないとわからないものだと痛感させられた。


「お二人ともお疲れ様です。テオさんはCランク、アリアさんはDランクでしたね。普通はEランク判定のはずなのでどちらもかなり優秀ですね。特にアリアさんに関しましてはその年齢でDランクは本当に凄いと思います」


「そ、そうなんですか…ありがとうございます…」


 自分の年齢についての話をされるたびにちょっとドキッとしてしまう、実年齢と今の年齢が違いすぎてその年で偉いねとかすごいねと言われるとどうしても意識してしまう。慣れの問題なのだろうが、この自分の年齢に関する問題は慣れるまでもう少しの時間を要しそうだ。


「そういえば王都にはアリアさんと同じくらいの子が活躍しているとか。確かレナさんという冒険者がリーダーを務めるギルド、『Rightness of the sky』、通称『ROS』という場所で活動してるとか」


「私と同じくらいの…そうなんですね」


 Rightness of the sky…おそらく英語なのかな?この異世界で英語というのかは一旦置いといて。英語読みだと直訳で空の輝きとかになるのかな?にしても長いギルド名だな…そりゃあROSなんて略されるだろうなぁ。


「おっと、無駄話が過ぎましたね。今すぐにこなせる依頼ですと、この街の近くに魔物の巣が出来てしまったらしいのでそれの駆除くらいでしょうか。依頼を受注されますか?」


「いいね、せっかくなら魔物退治と行きたかったから。私は全然受けるぜ。アリアはどうする?」


「え、あ…うん、私も行くよ」


 自分は半強制的に同行させられるものだと思っていたから、テオさんが私に参加するかどうか聞いてくるとは思ってもいなかったため少し反応が遅れてしまった。テオさんは大分好戦的な性格なのは知っていたがここまでとは…。まぁ、私ももっと魔法の使い方に慣れておきたかったからいいか。


「かしこまりました。では、手続きはこちらで済ましておきますので、そのまま出発されて問題ありません。依頼が完了しましたらこちらに戻って来てください」


「お、助かる。それじゃあ行ってくる。ちゃちゃっと終わらせて来るか!」


「楽に終わればいいですけどね…」


 どこか楽観的なテオさんに少し不安を抱きつつも、私の事を助けてくれた時のことを思い出して少し安心できた。対人戦であそこまで強かったのだが、この程度の依頼でやられるような人ではないか。


 テオさんの楽しそうな雰囲気とは違い、冒険者としての初めての依頼で緊張している私という、両極端の2人が受けた依頼をこなすために冒険者ギルドを後にした。



「えっと…、あ、依頼されていた魔物の巣はあそこですね。数にして…おそらく10匹ほどかと思います」


「へぇ、なかなか大きな巣なんだな」

 

 時間にして10分ほどの近くにある林のような場所があり、その中を少し進むと依頼にあった魔物の巣が見えてきた。…ちなみに魔物の数についてはレーテさんが教えてくれた。


「こういうのは先手必勝だな!行くぜ!」


「え、テオさん!?」


 先手必勝と言い手前に居た魔物に向かって猛ダッシュし一発パンチをお見舞いした。先手を与えた魔物は大きくノックバックしたもののまだ立っているようだ。魔物たちも一瞬驚いた様子を見せたが、直ぐに臨戦態勢を整えテオさんに威嚇をしている。


「助けないと…!えっと…大きなつららを作って…飛ばす…!氷結槍アイシクルランス!」


「お、いいねぇ私ら意外と相性いいんじゃないか?」


 氷結アイシクル、氷魔法の中級魔法の1つ…らしい。それを槍のような形にして相手に飛ばす魔法。一応自分で考えた魔法だが絶対にもう他の誰かがやっている魔法ではあるだろう。その魔法をテオさんが攻撃した魔物に向かって放ち見事命中。これであと魔物の数は9匹となった。


「も、もうそんな話は後ですよ!」


「はは、そうだな!まずはこいつらを片付けないとな!はぁぁ!」

 テオさんは近くの魔物に狙いをつけ連撃をかます。武闘家らしい素早い連撃で敵を翻弄していく。が、そんなテオさんにも弱点があった。それは武闘家という職業が故の弱点。という事だ。


「やらせない!サンダー!テオさん後ろです!」


「ナイス、アリア!うおりゃ!」


 前の魔物に気を取られているテオさんの後ろから別の魔物が攻撃を仕掛けようとしていたところを、雷魔法であるサンダーで撃ち落とす。すかさずテオさんに声をかけ、テオさんが見事なアッパー攻撃を決めこれで3体、残り7体。


「消耗戦になるとよくない…それなら…氷結の飛礫アイシクルバレット!」


 魔法の中でもかなり得意な方である氷魔法を広範囲にばらまいて、魔物全体にダメージを与えることにした。当たり所がよかったのかこの攻撃で1体倒すことが出来た。


「やるねアリア。私も負けてらんないね。………正拳裂波せいけんれっぱ!」


「範囲攻撃持ってたんですね…」


 テオさんが気合をためて拳を振るい、その拳が魔物に当たったとたん、文字通り空間に波がたったような衝撃が走り、近くにいた魔物をまとめて吹っ飛ばした。見た目はただの正拳突きなのだが威力が凄まじい。


『アリアちゃん!後ろ!』


「しまっ……」


 テオさんの攻撃に少し見とれていたら、魔物の動きを見ておらずレーテさんのサポートだあったのにもかかわらず一発手痛いのを貰ってしまった。自分の体は自分の思っているよりも軽いのか、大きくのけ反ってしまった。


『ごめんアリアちゃん!大丈夫!?』


「けほ…まだ大丈夫…」


 これが異世界での戦闘…杖を使いなんとか立ち上がったがそれ以上に痛みが強い。もし、私が普通の子供だったら今の一撃で死んでしまうんじゃないかと思うくらいの衝撃が来た。油断しているつもりは無いがこれはもう少し気合を入れないと駄目そうだ。


「流石私の相棒だね。さぁ、どんどん行くよ!紅蓮脚ぐれんきゃく!」


 これも魔法の力なのかは分からないがテオさんの足に炎が纏い、そのまま魔物を蹴り上げ少し浮かせ、そのまま叩きつけるような形で2連撃を与え、先ほどの攻撃に加えてこれで7体を撃破、残りが3体となった。


「わかってます。お返し行くよ!音速の風ソニックブーム!」


 杖に風を纏わせ杖を剣のように3回ほど振ると、そこから風の刃となって先ほど私に攻撃してきた魔物に向かって放たれる。その速度は簡単に躱せるような速度ではなく、魔物はなすすべもなく3発全て食らう事となった。


 残り2体となった時点で魔物たちは自分達では敵わないと悟ったのか、この場から逃げ出そうと私とテオさんかに背を向けて走り出そうとしていた。


「くそ、あいつら逃げる気かよ!?」


「逃がしません!テオさん合わせて下さい!いきますよ、下降風力ダウンフォース!」


「へぇ、なるほどな。任せろ、正拳裂波ぁ!」


 背を向けて走り出した魔物の上から強い風を吹き付け、その風の力で魔物たちを地面へと叩きつける。その行動の意図に気づいたテオさんがすかさず先ほど使っていた範囲攻撃を叩きこみ、見事すべての魔物を倒すことに成功した。


「はぁ…はぁ…おわった…?」


「おう、終わったぞ。お疲れ!一発貰ってたけど大丈夫か?」


「はい、とりあえず痛みは引きました」


 初めての戦闘は一撃手痛いのはもらったとはいえ内容から見たらかなり高評価だっただろう。こっそりレーテさんに手伝ってもらいながら魔法の練習をしていたのが功をそうしたような気がする。


「にしても強いな!Dランクとは思えないくらい強いんじゃないか?」


「そ、そんなことないですよ…私が倒した数3体ですよ?しかも1体はたまたまいい所に当たっただけですし…」


 いろいろな魔法の使い方には慣れてきたけど威力の高い魔法は氷結槍アイシクルランスくらいなのがどうも気になる。風の刃ソニックブームは1撃の火力が高いわけではないし、氷結の飛礫アイシクルバレットは言わずもがな。雷魔法はサンダーしか使えないし、炎魔法もまだまだだからなぁ…。


「いやいや、なにも倒した数が多ければいいってもんじゃないだろ?ほら、最後の2体なんてアリアがいなかったら倒せなかったんだからさ。だからそんなに落ち込むなよ、な?」


「うん…わかった…」


 テオさんはそう言いながら私の頭を優しくなでてくれた。その優しさに思わず子供っぽく反応してしまったが、正直気にならなかった。ここらへんは大分毒されてきたなと感じてしまう。接続を切り忘れているのかクスクスと笑い声が聞こえてきたため、一旦黙らせるために頭の中で怒っておいた。


「さ、これで依頼は完了したから帰ろうか。私らの初めての依頼達成記念になんかうまいもんでも食おうぜ!」


「それは、できない事なんだなぁ。譲さんよぉ?俺の事を覚えているかぁ?」


 いつから居たのかは分からないが、声のする方を見ると私の事を攫おうとしていた人が立っていた。周りを見るとあの時よりも多くの人を連れてきたそうだ。ざっと見える限りで5人見えた。


「あなたはあの時の…!」


「そうだ、あの時お前を攫おうとしたおじさんだよ。あの時は2人しかいなかったが、今日は5人でかかるんだ諦めた方が身のためだぜ…?」


 うわぁ、明らかに弱いやつのセリフだなぁ…。なんかまともに相手をするのもめんどくさくなってきたため良くないと思いつつもレーテさんに目の前の人たちの戦力がどれくらいなのか聞いてみた。


『んー、魔物相手はともかく対人戦の時はあんまりサポートしたくないんだけど、ぶっちゃけめんどくさいから言っちゃうね。さっきの魔物たちより弱いよ』


「なるほど…テオさん、サクッと終わらせますか」


「お、やる?いいよ~んじゃサクッっと終わらせるか」


「身の程知らずが…やれ!」


 と、息巻いていたのもつかの間。文字通りサクッとやられた闇商人たちはあの時と同じように逃げ出そうとした。流石にこれ以上付きまとわれても嫌なので、まとめて下降風力ダウンフォースで捕らえテオさんが全員を気絶させた。


「え、こいつらよわ…。これで私らと戦おうとしたの?」


「まぁ、私たちは最高のコンビなので当たり前です。でしょ?テオさん」


 さっきの魔物との戦闘でテオさんが言ったことを肯定するようにテオさんに質問をしてみた。テオさんは珍しく照れたような表情をしてから「だな!」と声を出した。



「お二人ともお疲れさまでした!依頼に合った魔物の巣を駆除するだけでなく、賊も捕まえてしまうなんて…本当に素晴らしいです!」


「賊に関してはあいつらが勝手に因縁をもって、勝手に突っ込んできただけなんだけどな」


 こう言葉にしてみると本当にひどいな。そもそも一度完膚なきまでにやられた相手に人数を増やしただけで勝てるなんて思ったのだろうか。それにあの時はテオさん1人だったけど、今回未熟ながらも魔法使いが1人増えていたのにも関わらず勝てると思った神経がすごいと思う。どの世界にも馬鹿は居るんだなぁ…。


「いえいえ、だとしてもですよ!おっと、話が脱線しそうですね…。これが今回の報酬になります。今回は本当にありがとうございました!」


「おお、すごいあんな弱い賊を捕まえただけでこんなに。ありがとな、私らは後数日もしたら王都に向けて旅に出るから、またここに寄った時はよろしくな」


「はい、お二方の旅が良きものになるよう、わたくしも応援しております!」


 受付の人から報酬金を貰い、旅に出ることを伝えてからギルド協会を後にした。思いがけない収入があったからかテオさんはどこか満足げだ。


「よっしゃ、旅立つには十分すぎるくらい稼げたな!」


「ですね、ふぁ…流石に疲れて眠たくなっちゃいました…」


 魔法を使ったからか、この街へ向かう時よりも動いていないはずなのに体に疲れが溜まっていることを体が教えてくれた。正直立ってるのがやっとくらいには疲れていた。


「アリアは頑張ってくれていたからな。よしほらおぶってやるから捕まりな」


「いいんですか…すみません…それでは背中をお借りします…」


 テオさんは私が捕まりやすいようにしゃがみ私の事をおんぶしてくれた。相当疲れていた私はそのまますぐに眠ってしまった。


「寝ちゃったか…はは、やっぱりアリアもまだ子供なんだな。強いのに可愛いとこあるのがずるいぜ。…最高のコンビ…か。初めて言われたな…そんな事…」


 テオは背中で可愛らしい寝息を立てながら寝ているアリアを起こさないように小さくそして少しうれしそうにそう呟いた。

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