第二話 荷重
突如机に置いてるスマホが揺れる。瞬間、閑静な部屋からジリジリと高い音が響き渡る。目覚まし……セットしていたんだった。
「あっ、バイト」
いつしかTVで観た自衛隊の規律を思い起こすようにして椅子を抜け出す。本日もろくに勉強せずボーッと窓の外にある桜を眺めては机に這う幼虫を創造していた。結局今日も数学の三平方の定理の意味が覚えれなかった。答えや計算式ではない。意味が、わからなかった。
「あーーーーー、めんどくせえ」
立ち上がって着替えに動き出したのも束の間。極限な堕落を述べたあたしは真っ先に極限の重力を全身が襲う。今日もまたあのデブ社員に怒られるんだろうなあ。というかアタシだけ怒られてるのなんで!?
「ああ、そっか」
高校の時から始めたバイトだけど未だに品出ししかできないんだった。その品出しすら賞味期限ぐちゃぐちゃにしてるし。何回注意されてんだか。
「まあ、いいか」
まともに働く方がバカらしいし。時給なんて他の人と対して変わらんし。繰り返し荷重を受けつつ何とか着替えを済ませる。茶色い鞄をゆったり持ち階段をゆっくり一段ずつ降りる。廊下から玄関へ向かう。
「いってきまーす」
「………」
返答はない。父も母も立派に朝から仕事をしていて家にはいつもあたしだけ。今年は浪人生ということもあってか、特に日中の自宅の虚しさが一層感じる。平日はこうも静かなんだよなあ。靴を履いてドアを開ける。間に合うか間に合わないかギリギリの時間を狙ってトボトボ歩む。狭い住宅地の上には青い空が冴え渡っていた。
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