くっころ女騎士を本当に殺そうとしたら土下座で命乞いしてきた件。

ナガワ ヒイロ

第1話 くっころ女騎士と転生者





「くっ、殺せ!!」



 大きなおっぱいを「ぶるんっ♡」と揺らしながら俺をキッと睨む綺麗なお姉さん。


 真っ赤な長い髪を束ねてポニーテールにした、黄金の瞳の美女だ。

 銀色の鎧をまとった、如何にも女騎士らしい出で立ちの美女による本物の「くっころ」に俺はテンションが上がった。


 ここがエロ漫画の世界なら、きっと俺が竿役に違いない。


 だって今の俺、ゴブリンだからな。


 元々は平和な日本で生まれ育った大学生の俺がゴブリンとして異世界に転生してしまったのには、ちょっとした事情がある。


 だが、その事情を話す前に――



「死ネ――ッ!!!!」


「え? きゃっ!?」



 俺は女騎士にトドメを刺すため、短剣を振り下ろした。

 しかし、女騎士は悲鳴を上げながら俺の攻撃を咄嗟に回避する。


 ちっ。仕留め損なったか。


 追撃するために俺が再び剣を構えると、女騎士は慌てた様子で叫んだ。



「な、ま、待て!! 本当に殺すのか!?」


「オマエ、殺セ、言ッタ」


「い、いや、あれは女騎士の決まり文句のようなもので!! ここは普通、嫌がる私を組み敷いて孕ませるところだろう!?」


「……オマエ、敵。殺ス、普通」



 まだゴブリンに転生してからそれほど時間は経っていないが、俺は何度も命を狙われた。


 この世界でのゴブリンは、スライムに次ぐ最弱の魔物。

 新人冒険者が初めての戦いの相手に選ぶくらいには弱い存在だ。


 ゴブリンか、あるいは男の本能か。


 顔のいい女を見るとめちゃくちゃにしたいという欲求はたしかにある。


 しかし、優先するべきは生き抜くことだ。


 そのために襲ってくる奴らは人間だろうと構わず殺す。

 ましてや人間はすぐに相手を学習し、対策をしてくる生き物だ。



「人間、油断ナラナイ。敵、殺ス」


「ひっ、ま、待ってくれ!! い、命だけは、命だけは助けてくれ!! この通りだ!!」


「エェ……」



 女騎士は土下座で命乞いしてきた。


 さっきは『くっころ』してたくせに本当に死ぬとなると命が惜しいらしい。


 俺は考える。


 この女騎士を生かして帰したところで、更に強い騎士がやってくるだけだ。

 俺の知能が人間並みであることが唯一の強みである以上、その情報が漏れるような真似はしたくない。


 やはり殺すしかないだろう。


 そう思って俺が女騎士に近づくと、殺気を感じ取ったらしい。


 女騎士は次の行動に出た。



「ま、待て!! 頼む、待ってくれ!! ほ、ほら、私は胸が大きいだろう!? しかも腰は細く引き締まっていてお尻もデカイ!! こんなエロい女、滅多にいないぞ!? この身体を好き放題したくはないか!?」



 したいかしたくないかで言えば、したい。


 女騎士は俺を誘惑するように大きなおっぱいをばるんばるん揺らす。


 その淫らな光景を眺めていると、まるで催眠にかかったかのように俺の思考は性欲が負けてしまった。



「分カッタ。オマエ、殺サナイ」


「ほ、本当か!?」


「ケツ、コッチ、向ケロ」


「あ、う、うむ!!」



 鎧を脱ぎ捨てる女騎士。


 おっぱいに負けず劣らず大きなお尻をこちらに向けてきて、何故かニヤリと微笑む。



「ふっ、所詮はゴブリンだな。魔物に辱しめられるなど生涯の恥だが、このまま救援が来るまで生き残って――え? で、でっか!?」



 何やら俺の息子を見て驚愕していたが、俺は構わず女騎士を抱いた。


 ゴブリンの本能には抗えない。


 そのまま朝まで女騎士を堪能した俺は、賢者の時間に突入する――ことはなかった。


 ゴブリンの底無しの性欲には賢者の時間など存在せず、ただ目の前の極上のメスを隅々まで味わいたいという貪欲さだけがあった。



「あっ♡ ちょっ♡ 待っ♡ だ、だめっ♡ これ、堕ちりゅっ♡ ゴブリンに負けりゅっ♡ 強すぎりゅっ♡」


「マダマダ、イクゾ」


「ひいっ♡ ちょ、本当にもうっ♡」



 初めて味わう感覚。


 ゴブリンに転生して、襲ってきた人間を初めて殺した時とはまた別の高揚感。


 俺がゴブリンだからこそ感じる優越感だろう。


 その優越感を味わいながら、俺はゴブリンとして異世界に転生した時の出来事を思い出すのであった。















「ええと、要約するとね。君はボクの手違いで死んじゃったんだよね」


「……」


「で、それが上司にバレるとまずいから、君をゴブリンに転生させて誤魔化したってわけ」


「……」


「あれれー? 反応うっすいなー。ま、別にいいけどさ。何か質問とかあるー?」



 俺は水溜まりに映る自分の姿を見て唖然としてしまう。

 緑色の薄汚い肌と醜悪な顔、成人男性の腰の辺りくらいの身長……。


 その姿はまさに、ファンタジー系のライトノベルで必ず出てくる雑魚敵――ゴブリンそのものだった。


 俺は夢でも見ているのか?


 いや、夢じゃない。頬を引っ張ると痛いし、何より俺はゴブリンになる前の出来事をハッキリと覚えているのだ。


 俺はトラックに轢かれて死んでしまった。


 サッカーボールを追いかけて道路に飛び出した子供を庇い、頭から大量の血を流して。



「女神サマ」


「ん? 何々?」


「子供ハ、ドウナッタ?」



 思うように動かない口で女神を名乗る少女にそう問いかける。

 八重歯が印象的な銀色の髪の美少女は、目を瞬かせて驚いているようだった。



「君さ、もうちょっと自分の心配とかしたら? ゴブリンだよ? この世界じゃスライムに次ぐ最弱の魔物なんだよ?」


「子供ハ?」


「……無事だったよ。本当ならあそこで子供が死ぬところだったけど、代わりに君が死んだわけだからね」


「ナラ、良カッタ」



 俺は子供が助かって一安心する。


 ……いや、子供の安全が分かったら今度はトラックの運転手さんが心配になってきたな。

 俺が死んだことで仕事を失ったりしていないだろうか。



「女神サマ、トラック、運転手ハ?」


「いや、あのさ? ボクが言えることじゃないけど他人のこと気にしすぎだって!!」


「……運転手ハ……」


「ああもう大丈夫大丈夫!! ボクの失敗だからそこも何とかしとくよ!!」


「良カッタ」



 今度こそ俺は心から安堵した。



「君はあれかな、お人好しなのかな? なんか手違いで君を殺したボクが悪者みたいになりそうじゃないか」


「ソレハ、ソウ」


「……ああもう!! そんな目で見ないでよ!! ボクだってわざとじゃないんだから!! ごめんね!!」



 女神様は俺の視線に耐えられなかったのか、その場で謝罪してきた。


 そして、俺の額をトンと指先で小突いた。



「君に特別な力を授けた。どういう力かは覚醒しないと分かんないけどね。ボクなりの謝罪の気持ちだよ」


「……許ス」


「別に許してもらう必要はないけどね!! あとこっちの世界じゃ魔物は人間の天敵だから、仲良くなろうとか思わない方がいいよ!! 殺されちゃうから!!」


「親切ニ、ドウモ」


「別に親切とかじゃないから!! すぐに死なれると上司に誤魔化そうとしたことがバレちゃうからだし!! じゃあね!!」



 それだけ言い残して女神様は姿を消した。


 俺は静かな森の奥で独りに、いや、一匹になってしまった。


 それからしばらく豊かな自然の中でボーッとしていたが、いつまでもそうしているわけにはいかなかった。


 敵が、人間がやってきたのだ。



「おい見ろ、ゴブリンがいたぞ!!」


「一匹だけか? 楽勝だな」


「さっさと殺して街に帰ろうぜー」



 きっと彼らはファンタジー系ライトノベル定番の冒険者か何かで、ゴブリン退治の依頼でも受けたのだろう。


 俺はその人間たちを殺した。


 森の地形を利用して隠れながら、頭を狙って何度も石を投げたのだ。


 人間は頭に石が軽く当たっただけで簡単に死んでしまう。

 殺した人間から武器を奪い、その武器で再び襲ってきた人間を殺す。


 人を殺しても特に何とも思わなかった。


 これがゴブリンに転生したからか、それとも俺とこの世界の人間は根本的に違うからか、理由は分からない。


 そうして、襲ってくる人間たちを殺すだけの日々が始まった。


 しかし、殺しすぎたのだろう。


 遂には安っぽい装備をまとった冒険者ではなく、ガチガチに武装した強そうな騎士たちが俺を殺しにやってきた。


 正面から戦えば結果は分からなかったが、不意打ちと離脱を繰り返して俺は勝利した。


 そして、時間は冒頭に巻き戻る。







―――――――――――――――――――――

あとがき

どうでもいい小話


作者「生き汚い女の子っていいよね」


ゴ「……ソウカ……」



「女騎士がチョロすぎて笑う」「ボクっ娘女神は最高」「こういうシチュ好きやで」と思った方は、感想、ブックマーク、★評価、レビューをよろしくお願いします。

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