麗華の戦歌
みきりはっちゃー
麗華の戦歌〜運命の黎明〜
邂逅
私は望月財閥の令嬢。
これは私が、とある男と出会う話。
「あなた…」
「若いのには勝てないな。この前俺は七強入りを果たしたばかりなのにもう…」
お父さんが悔しそうな声でそう言う。
七強…世界各国にある階級で、国内のガーディアン上位七名を指す称号。
私の家系は代々、七強入りを果たしてそれぞれ長い事務めていたのだが、ここ数年の代はかなり厳しいらしく、お父さんも齢三十九でようやく入る事ができたのだが…
その直後に二十歳になったばかりの青年が七強入りをして、お父さんは七強の座を奪われたのだと。
「後は…麗華に頑張ってもらうしかないか。」
「そうね、麗華はガーディアンに憧れているから、きっと耐えてくれるわ。」
遠くでそう話す二人。幼いながらに、私の背負う使命がわかった。
この日を境に私はガーディアンになる為の苦しい訓練を受けるようになった。
休む日など無かった。
友達との交流も次第に減って、私は孤独を感じていた。
だが、親からの愛情は強くなっていた。私が訓練として他のガーディアンや家族で魔物を討伐する時、私が活躍したり、それを聞いたりするとお父さん達はすごく喜んでくれた。それが何よりも嬉しかった。
…
ある日、いつものように訓練に出ると普段と様子が違う魔物と遭遇した。獰猛で、動きが全く見た事がなく読めないものだった。瞬く間に私を守ってくれるガーディアンは殺され、私は尻尾を巻いて逃げた。
逃げて、逃げて、私は必死に走った。逃げても追いかけて来るし、追いつかれそうだ。
そして私は石に足をぶつけて転倒し、死が迫るのを感じた。
「やだ!お父さん!お母さん!!」
そんな助けを求める声は魔物の咆哮の前に虚しく散る。
「あ…あぁ……」
死ぬんだ…私…
魔物が大きな口を開けて私へ迫るその瞬間…
「アルム!」
「まかせて!マスター!」
青年の声と機械音声の声が聞こえた刹那、無数の光線が目の前の魔物を貫いて青年がそれを殴り飛ばした。
「大丈夫。俺がやる。」
青年はそう言って魔物と対峙する。あんなに強かった魔物が彼によって圧倒されている。
そんな光景に私は目を奪われた。
あっという間に魔物は一人と一機の小さな浮遊しているロボットによって撃破され、彼は呆然としている私の元へと足を運んで「無事か?」と優しく声をかけてくれた。
「…転んだのか。安全な場所へと運ぶから、それまで我慢できるか?」
青年の問いに私は無言で頷いた。
私の反応を見た彼は暖かい笑みで「流石だな。」と言って私を担いだ。
安全な場所へと運ばれた後、応急処置をしてくれた。
「…ありがと。」
「気にするな。見た所、君は他のガーディアンと一緒に依頼を受けていた子だな。」
「…うん。」
青年は「ふむ…」と小さく息を吐いて拳に顎を乗せて思考を巡らせた。
そしてしばらくして、彼は「君を街に送ろう。」と言う。
「今回の魔物の事だが、俺も少し気になる事があったからな。これも巡り合わせだ。君にも情報の提供をしてほしい。」
「…わかった。」
「立てるか?」
青年は私の近くに来て片膝を着いてそう言う。私は頷いて立ち上がろうとするが膝が震えて立てなかった。
「っと。危なかったな。俺が運ぼう。」
私を支えてくれた彼はヒョイと私を抱えて街へと帰還した。
この青年は誰なんだろう。この人を見て感じたのは安心するという事だ。
私は思わず彼の顔をじっと見つめてしまう。
「そういえば自己紹介してなかったな。俺は
「私は望月 麗華。」
「いい名前だ。君と話したいが、そろそろ到着するな。少し忙しくなるが、いいな?」
彼の言葉に私は頷いた。
その後は報告や現場の様子など、様々な事を聞かれたが、彼のロボットが代わりに答えてくれた。
「終わったな、お疲れ様。君の親もそろそろ迎えに来るだろう。それまでは一緒にいよう。」
無言の時間が続く。彼はと言うと何かの資料に目を通していた。
「麗華!」
「お父さん!」
お父さんの声がして私はそこへと走った。
お父さんに抱きしめられて、私は安心して泣いてしまった。
「よかったな。」
彼は私の目の高さまで屈んでそう言って笑顔をかけてくれた。
「…まさか、君が娘を。」
「俺を知っているのですか?」
「…!」
私は何となく察した、誠也、彼こそがお父さんから七強の座を奪ったのだと。
お父さんは彼の事を覚えているが、本人は全く覚えていなかったようでお父さんはどこか敗北感を感じていたようだった。
家へと戻る途中、お父さんは暗い表情をしていた。かなりショックだったのだろう。
この日がきっかけでお父さんはおかしくなった。
連日続く虐待とも思える訓練に勉強。そして口を開けば「お前は国を背負う特別な存在だ。」と。それを口にした日から私はとある兵器を渡される。腕輪のような物を。それが
「お前はこれに従って戦え。このシステムがあれば、勝利は約束されている。」
「お父さん、でも…」
「従え。」
低い声で私にそう言う。
前のような優しいお父さんは消えた。
でも、このシステムを導入した日から、私に変化が訪れる。
なんでも、記憶力や理解する能力、様々な力がいきなり向上したから。
ガーディアンの訓練でも成果は伸びて、そこら辺のガーディアンよりは強いという評価になった。
それを聞く度にお父さんの様子がおかしくなっていく。
もう、彼を止められない。
お母さんも諦めてしまっている。
誰が悪い…?彼だ。藤方 誠也。あいつが、家族を狂わせた。
私は彼を打ち負かして、家族を取り戻す。そう決めた。
私は挑戦状を藤方 誠也に送った。
形式は対人戦。彼を直接潰せば、きっと…
「久しぶりだな。」
「…」
私は誠也の言葉に対して無言で彼を睨む。家族を崩壊させた元凶。絶対に許す訳にはいかない。
「その目は…なるほどな。俺が憎い。そういう目だ。」
「お前を倒して、家族を取り戻す。」
私はそう言い、先に戦闘配置に着いた。そして彼も静かに位置に着く。
私達をギャラリーが囲む。七強と私が戦う、それだけでも国の関係者には話題があるのだろう。
試合開始の合図があり、私は戦機システムを起動する。
「起動。
赤い甲冑に両肩に浮かぶ三本の刀それを見た誠也は「噂には聞いていたが…すごいな。」と呟く。
私はすぐに斬り掛かる。システムに従って確実な一撃を狙うが…
「甘い。」
そう言い放つ彼は私の攻撃を分かっていたように回避して鳩尾に一撃の拳を叩き込んだ。
私はすぐに反撃を試みる。全ての刀を使って攻撃をするが当たりもしない。システムは勝利に導くはずなのに。
様々な兵装や装備を試すも、彼は冷静に対処をしていく。
「例のシステムはそう動くのか。面白いな…」
彼はそう呟きながら分析を進めていた。
戦うこと三分。彼は自ら動き出す。戦機システムでは追えない速さで動き始めた。
一瞬で間合いを詰めて私の首筋に一撃の手刀を叩く。
「あ…が…」
彼を前にして理解した。絶対に勝つ事は出来ないと。地面に伏せてしまい、立つことも出来ない。視界が暗くなっていく。
「すごい装備だったが…システムに頼りきっていたな。」
その言葉を最後に私の意識は無くなった。
目を覚ますと私はベッドの上にいた。そして横に目をやると誠也は静かに本を読んでいた。私の意識が戻ったのに気が付いた彼は「大変だよな。お前は。」と口にする。
「不憫で仕方がないよ。その歳で親に振り回されてこうなっている君が。」
「…バカにしないで。お前が家族を…」
私の言葉に彼は「ふむ。」と息をついて「俺のせいではないな。」と答えた。
彼は言葉を続けた。聞いていると確かに、彼は何も特別な事はしていない。したとしてもあの時、彼が私を助けたことぐらいだ。
「まぁ、いいか。だけど勝手に試合を申し込んで、そんな装備を持たせてもらってこのザマだ。君の居場所がこの後あるのかが不安だ。」
「ある。」
食い気味な私の反応に彼は薄く笑った。
「本当か?」
彼の言葉に私は頷くと彼は「そうか、でもまぁ、すぐに答えは分かるか。」と口にした。
「俺は少し席を外す。」
彼はそう言って部屋から出ていった。入れ替わるようにお父さんが部屋に来た。
「お父さん…ごめんなさい。」
私の謝罪に対してお父さんは大きなため息をつく。その雰囲気は怒りを通り越した呆れだった。
「ふむ、麗華。システムが悪かった。それと俺の教育が。」
その後も少しお父さんと話をして、お父さんは帰っていった。
しばらくして誠也が戻ってきた。
「どうだった?」
「あなたの予想は外れたとだけ答えるよ。」
私はイヤミっぽくそう答えた。
彼は表情を柔らかくして「それならよかった。」と答えた。
「君が危険な目に遭わせたらどうしようと思っていたからな。」
「意味が分からない。」
「まぁ、君が安全だと思うならそれでいいと思う。んじゃ俺はそろそろ行くよ。また会えたら、話を聞かせてくれ。」
彼はそう言ってこの部屋から去った。
翌朝、私が家に帰ると私の荷物が纏められていた。
部屋も片付いていて驚く。
そしてお父さんに呼び出され部屋に入るとすぐに私は抗議した。そんな声を聞かないお父さん。
「麗華。お前は政府に見てもらうことにした。俺たちだけではお前を見る事が出来ないし、才能を伸ばしてやる事はできない。」
それを聞かされた私は頭が真っ白になってしまう。
いつの間にか私は車に乗せられていてとある大きな建物にやって来ていた。
何やら政府の人が説明していたが、理解が追い付いていなかった。
そのまま私は眠らされて気が付いたら窓に写る空は暗く星が輝いていた。周囲を見渡すと点滴やバイタルサインを計測する器具が付けられていて、私は何かをされたのだと気がつく。
しかし体には違和感が無い。何をされた…?
しばらくしていると看護師がやってきた。そしてここはどこなのか、私に何をしたのかを問う。看護師は私に何をしたのかは答えなかった。というか知らなさそうだったが、ここはどこなのかだけは教えてくれた。ここは政府の研究施設兼基地なんだそう。
今日は何だか疲れた。寝よう。
翌朝、私は運ばれてきた食事を静かに食べていた。
あまり美味しいものではない。虚無を食べている感覚。
食事を済ませてぼーっと外を見ているとノックが聞こえた。「失礼します。」の後少し間が空いてから扉が開いて看護師が入って来た。
「望月さん、よく眠れましたか?」
そんな当たり障りのない質問が来る。
私は頷いて外を見続ける。看護師は忙しい。一人で複数の患者を相手にしないといけないし、記録を書いて他の看護師のサポートや他職種との相談などもしないといけない。だから私はその人にさっさと出ていってほしかった。何より、一人になりたかった。だからこう言う。「出ていって。」と。
またノックが聞こえ、何も言わずに誰か入ってきた。
医者だな。その見た目は。
なんというか、話し方が機械的で人間っぽさを感じない。
話の内容的には、リハビリなんだと。手術後の運動という名目での。
私が連れてこられたのはどう見ても訓練施設。
装備を渡されたので何をするのかは想像が着いた。
ブザーが鳴り響くと目の前にロボットが現れる。こいつらを倒せという事だろう。
早速戦機システムを起動してその軍隊へと突っ込む。
体がなんだか軽い。そして直感的に動ける。次に何をするべきか、どの兵装が適切か瞬時に分かる。この時に私は理解した。私に施された手術は戦機システムに最適な体にするものだと。そして向けられた敵意を認識して更に最適な動きを示してくれる。
このリハビリという名の検証はしばらく続き、ある日私の元に新しい装備が送られてきた。
戦機システムデバイスという刀だった。見た目は日本刀で、全体的に黒く、蒼いラインが入っているのが特徴だ。
それからはこれを使っての訓練が始まった。それを使い始めてから私の能力がさらに上がったと感じる。
幾重にも調整が重ねられ、その都度私の体も弄られ、人間のように扱われていないと思った。
だけどそのおかげで私は強くなった。理論上は七強と張り合えるらしい。
これなら、アイツを倒せる。私はそう思った。そして研究者に対人戦をしたいと話し、彼を指名した。三日後に日時が決まって私はそれまでに奴を倒せるように対策も準備してその日を待った。
とうとうその日がやって来た。私は静かにコートで待った。目を閉じて彼をイメージする。何度も彼を倒すシュミレーションをした。
そして私の前に彼の気配を感じて目を開ける。彼の姿はどこか暗く憔悴していたものだった。
「それじゃ。始めようか。」
彼はそう言って構えた。覇気を感じない。戦う意思すらも感じない。
そんな彼を倒して私は満足なのだろうか…いや、チャンスだ。どの状態であれ、彼を倒せばその実績は手に入る。
「手加減は…できないから。」
私は紅い甲冑を身にまとって六本の刀と共に誠也へと襲いかかる。
この前戦った時はこの時点で回避行動なりとっていたが今回の彼は構えすらしない。
彼の頭上から刀を振り下ろす。当たった。そう思った。しかし彼には当たらなかった。彼はいつの間にか背後に回っていて手を伸ばしてきた。
その手を払って私は反撃をする。しかし彼のロボットのアルムにそれを防がれてそれは誠也を運んで距離を取った。
「マスター…!しっかりして!」
「…あぁ。悪いな。」
彼は掠れた声でそう反応する。
そして彼は俯いて「…こんな気分でやってられるか。」と呟く。
「アルム。下がっていろ。手は出さなくていい。」
彼はそう言うがそれは拒否していた。主人の事が心配で守りたいのだろう。
彼は溜息をついてそれの電源を落とした。
「悪いな。見苦しいところを見せた。…続けようか。」
何かおかしい。さっきから戦機システムが自動で推奨行動を示してくれない。これでは戦えない。
飛び込む事を躊躇していると目の前の彼は一瞬の踏み込みで眼前へと距離を詰めた。
「っ…!?」
反応が遅れた…!そしてシステムが反応して推奨行動を示したがそれでは間に合わない。
目の前には拳が飛んできている。まともに食らったら意識が飛ぶ。終わった。
私は思わず目を閉じた。
…
……
衝撃が来ない…?
私は恐る恐る目を開けるとデコピンが私の額を弾いた。
思わず額を押さえて距離を取った。
「俺は君と戦うつもりは無い。」
彼はそう言う。彼からの戦意も感じない。でも、またいきなり攻撃をするかもしれない。
私はゆっくりと距離をとる。彼は追ってこない。
彼は笑っていた。何故だろう…そう思った次の瞬間、私の胸を光線が貫通した。
「え…?え…?」
どこからの攻撃?辺りを見渡すと四方向に小さな板みたいなのが浮遊していた。彼を運んでいたものか…!
防御をする前に私は蜂の巣にされて気を失った。
「俺はそうだったかもしれないが、アルムは違ったみたいだな。…おつかれ、アルム。」
「マスターの名演技があってこそだよ!」
気を失ってからもそんな会話が聞こえる。次第にその声すらも遠のいて行った。
…
…
「目が覚めたか?」
「…何。また何か言いに来たの?」
「まぁ、大体そういう所だ。一緒に飯を食べたくてな。」
彼はそう言って二つの弁当箱を並べた。そこそこ大きく、一人では食べ切るのが大変そうだ。
彼は丁寧に箸を二膳用意していて私と弁当を食べる気だ。
「…いらない。お腹すいてないし。」
「そうか。残念だな。君は最近まともな食事を取れてないから今日はチャンスなのに食わないのは本当に勿体ない。」
彼はそう言いながら弁当のおかずを取って食べ始めた。
見ていると美味しそうに見えてくる。
ぐー…
「…!」
「ほう?」
「ち、違う…!」
「そうか。」
だめ、お腹が…
美味しそうな匂いが私の嗅覚を刺激する。この感じはさっき出来たばっかりのものなのだろう。
癪だけど我慢ができない。
「…私も…食べる。」
「そうか。遠慮なく食べろ。」
私は箸を手に取り早速弁当にあるものを食べ始める。
箸が止まらない。美味しい…
いつの間にか私は弁当を平らげていた。
その様子を暖かく見守っていた彼は「美味かったか?」と聞いてきた。それに対して私は「…美味しかった…」と答える。彼は「食べたい時はいつでも言ってくれ。」と暖かい笑みを浮かべて言う。
それから数日、彼は私に会いに来てくれた。その中で色々話して交流を深めた。
彼はとても優しく、暖かかった。彼に抱いていた恨みはいつの間にか消えていて罪悪感が湧いた。今では私が彼を恨んでいたという事に驚く。
彼が帰る度に私は寂しくなり、明日は会いに来てくれるのだろうかと不安と楽しみに揺れ動かされていた。
次の日、彼は私に真剣な顔でこう質問した。
「君は、その不本意に備えられたシステムでどうしたい?」
そんな質問をしてきた。私は少し考える。何故戦機システムを付けられたのかを。
親が勝手に付けたからその答えは分からない。
それを察した彼は「無理もないか。」と言う。
「焦らなくていい。そのうち答えが見つかるはずだ。」
「…探してほしい。」
「俺がか?」
「うん。その答えを一緒に探してほしい。」
私がそう言うと彼は頷き「できる範囲は限られているが、手伝う。」と言ってくれた。
でも都合が悪くなればきっと切り捨てる。あの顔も、言葉も、全部私への同情だ。
強い装備を貰った挙句生身の人間に無様に負けた私への。
嫌な人だ。でも退屈はしない。
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