ANKHER
小角 禮子
#000 プロローグ
かつて、地球には美しい緑があった。
青い空があり、浜に打ち寄せる波があり、囀る鳥たちがあった。
海面が蒸発して雨雲となり、降り注いだ雨は地を潤して泉となり、川を下って海へ還る。
全てのものは水によって生かされ、降り注ぐ陽光は分け隔てなく恵みを与えた。
生きとし生けるものはすべからく支え合い循環する為に存在し、共存する。
美しい世界がそこにはあった。
——時は2306年。
地表は、死の海と呼ばれるようになって久しい。
始まりは突如として宇宙から降り注いだ、直径約20kmにも及ぶ天体の衝突である。
隕石の衝突による衝撃波は地表を灼熱と共に薙ぎ払い、崩壊した地を津波が襲い、溢れたマグマが街を飲み込んだ。
舞い上がった塵は太陽から地球を覆い隠し——美しい世界は、一瞬にして姿を消した。
しかし世界を本当の終末たらしめたのは、後に最後の審判から名を取られることとなった巨大隕石、通称「Doom」の衝突により引き起こされた自然災害ではなかった。
それが現れ始めたのは、十数年の時をかけてようやく塵が落ち着き、地表に陽射しが戻った頃。
巨大隕石の衝突地点付近から突如姿を現したのは何処から生まれ出でたのか、知性を持ち得ず餌を求めて徘徊する魔物達であった。
それらは時には人のなりをし、時には四つ足の動物のなりをし、時には魔界から湧き出たような異形のなりをして、生き残った人間や動物を食い荒らした。
———やがて凶暴な未知の生物が地表の主に成り変わるまでに、そう時間は掛からなかった。
舞台は魔物の潜む廃墟となり果てた大地。
そして地球の内部、溶岩層よりも更に奥深くに作られた巨大都市の、とある研究室。
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