第47話 私と心先生とビアガーデン

「夏! ビール! 屋上!」

「開放感あっていいですね」

 今日はたまには趣向を変えて、職場近くのビアガーデンに来ている。

 夏らしいことを一切やっていない私たち。

 そんな私たちの前に迫ってきたのは夏の終わり。

 人生一度切り。

 夏だって何百回と来るわけじゃない。

 なら、今年の夏を逃したら駄目だ。

 そんな使命感に駆られて、ビアガーデンへと突撃した。

「うー、おいしい! 屋上って熱いけど、その分ビールの冷たさが全身に駆け巡る感じがしてたまんない!」

 先生はその小さな体にぐんぐん夏を取り込んでいく。

 少しだけ額に滲む汗が、乱雑に釣られた灯りに照らされて、なんとも言えない色香を生み出している。

 うん、来てよかった。

「ほら、千夏も飲んで! せっかくの夏が逃げちゃうよ」

「逃げはしないと思いますが、でも、楽しまないと損ですね」

 私もぐいっとビールを喉に流し込む。

 周囲の人々も声も楽し気に弾んでいる。

 私たちの飲酒ペースも自然と速くなる。

 結果、二人してげっぱんげっぱん。

 なんとか比較的近い私の家までたどり着けたけど、その後の記憶はない。

 唯一、先生が固いフローリングにおでこをつけながら『夏、おでこに当たり強くない?』と言っていたことだけは覚えている。

 夏は魔物。

 私たちはその正体を確かめるために、次なるビアガーデンへと足を運んだのであった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る