第7話 「嬢ちゃん達には無理だな・・・」
「嬢ちゃん達はどうしてここへ来たんだ?まぁ、十中八九オレに用があって来たんだろうけどな!」
その人物は4人に対し、話しかけながらも、腕を曲げ上腕二頭筋を見せつけたり、そのまま両手を頭の後ろに組み、腹筋をアピールしたりと様々なポーズをとっていた。
4人全員がそのポーズを見せつけられ、苦笑いしかできない中、だれが最初に話しかけるかを決める雰囲気となり、桜、ひまわり、ビオラが一斉にヒガンバナの顔を見る。
少し顔をしかめながらも、仕方ないかという様に小さくため息をつき、話しかける。
「私達クロカタゾウムシってヒト探してるんですけど、もしかして貴方がそうですか?」
「おっ!いかにも‼︎オレが昆虫騎士団、12幹部の1人、クロカタゾウムシだ!ちなみにオレは幹部の中でも下から数えた方が早いぐらいの実力だがな!ファッッハッハッ!」
豪快に笑いながらも腕や足を動かして新たなポーズをとるクロカタゾウムシ。
一応、まともな会話は出来そうだと感じたひまわりが質問を投げかける。
「えぇ~と、さっきからしてるそのポーズは何なんですか?」
「いい所に気がついたな嬢ちゃん!これはサイドトライセップスって名前だ!」
そう言いながら手を後ろに組み上腕三頭筋に力を入れてアピールをしている。
「人類が滅びる前、男達はボディビルという、己の筋肉を見せつけ、その大きさや美しさで序列を決めていたらしい。オレもそれを見習って、こうして日夜様々なポーズを研究してるってわけよ!」
「昆虫騎士団のヒト達って毎日こんなことしてるの?」
「絶対そんなことないよ!あのヒトがちょっとおかしいだけだから!」
ひまわりが小声で呟いた疑問にビオラが激しく否定する。
これ以上この話は続けさせまいと、今度はビオラがクロカタゾウムシに質問をする。
「昆虫騎士団の幹部が何しにここへ来たの?まさか、今更仲良くしましょって話をしに来た訳でもないでしょうし」
「見た目の割に強気な嬢ちゃんだな!まっ、隠すほどのことじゃねえし教えてやるよ。ベゴニアが持ってる八尺瓊勾玉を奪ってくること、それがオレがここに来た理由だよ」
その言葉を聞いた瞬間、4人全員の目つきが変わり、戦闘態勢に入った。
ひまわりは拳を前に出し構え、ヒガンバナは両手を開き腰を少し低く落とす。桜は左腰の刀に手をかけいつでも抜ける体制をとり、ビオラはアサルトライフルの銃口をクロカタゾウムシに向けた。
「おいおい、いきなりどうした?別に嬢ちゃん達に何かしようって訳じゃねえんだぜ。オレは勾玉さえ手に入ればそれでいいし、無駄な殺生は嫌いだからな」
4人の剥き出しの敵意に一切怯むことなく、むしろ余裕の表情で答える。その際もボディビルのポーズを止めることなく続けていた。
その姿を見て警戒心を強めた桜が問いかける。
「ずいぶんな物言いですね。アナタに
「ああ、殺せるさ」
あっさり答えると、これまで取っていたポーズをやめ、両腕を組み話し始める。
「ちょっと試したら分かるだろうが、・・・大人しくベゴニアの所まで案内してくれるなら、さっきも言った通り何もしねえさ。ただ、それが嫌って言うんなら、オレも手を出すしかなくなるな」
これまでの明るい表情とは一転、無表情で機械的に淡々と話すクロカタゾウムシ。
少しの沈黙の後、最初に動いたのはビオラだった。
「ド・ヴィゼーニャ」
掛け声と共にビオラがアサルトライフルの引き金を引く。
放たれた銃弾は、確かにクロカタゾウムシの胸に当たっていたが、身体を貫くことはなく、別の方向へ弾かれていた。
「なんっ・・・で?」
「おいおい、いきなり撃つなんて頭のネジがぶっ飛んでるな!オレじゃなきゃやられてたぞ」
困惑した顔のビオラとは対照的に余裕ある表情を見せるクロカタゾウムシ。
胸の辺りを拳でコンコンと叩くと種明かしをするかの様に口を開いた。
「鍛え抜かれた全身の前には銃弾など無意味!・・・・・・と言いたい所だが、これはオレの身体の性質のおかげだな。オレの皮膚は、昆虫騎士団随一の硬さを誇っている。この皮膚・・・いや、もはや装甲だな!この装甲は、そんなチンケな銃弾なんか通さねえよ・・・!」
「なら、違う場所を狙うだけよ!ドゥヴァ、イェデン!」
2発の銃弾がクロカタゾウムシの両目に当たる。
しかし、これもただ当たっただけで効果はなく、いとも簡単に弾かれてしまった。
「銃の腕はすげぇな嬢ちゃん!ここまで正確に両目を撃たれたのは初めてだ!ただ、オレの伝え方が悪かったみたいだな。皮膚だけじゃなく、オレの全身あらゆる所が同じ硬さを持っている!だから、どこ狙っても変わらねえよ」
「くっ!それなら次は・・・!」
「冷静になりなさい、ビオラさん!」
なおも銃口を向け次の狙撃に構えるビオラを、桜が刀を銃口の前に出して制止する。
「今のまま撃ち続けてもあまり効果は期待できません。焦る気持ちも分かりますが、今は耐えてください。少し、あの方とお話したいので
「さ、桜お姉ちゃん・・・」
優しく微笑みかける桜の顔を見て、少し冷静になったビオラが小さく頷く。
「良い子です。さて・・・・・・」
小さく息を吐き、刀を鞘に戻すとクロカタゾウムシの方を向き話し始める。
「クロカタさん。貴方の目的は分かりました。
クロカタゾウムシを真っ直ぐに見つめ、堂々と啖呵を切る桜。その表情を見て何が可笑しいのか、フッと鼻で笑い口を開くクロカタゾウムシ。
「悪いがそれは無理な相談だな!オレだけならまだしも、オレの部下は今ここにはいねぇからな!既に全員皇居に向かわせた所だ。1000はくだらねぇ数を連れて来たから、もう手遅れかもな!」
「そっ、そんなに!」
1000という数に驚き、ひまわりが声を上げる。
桜はクロカタゾウムシの言葉を最後まで聞くと、目を閉じ息を深く吸い込み、長く吐き出す。そして刀の柄を軽く握り、目を開き鋭い目線をクロカタゾウムシに向ける。
「なら悠長にお喋りしている暇はありませんね。貴方を倒し、すぐに部下も止めに行かせていただきます!」
「嬢ちゃん達には無理だな・・・」
クロカタゾウムシがそう呟くと同時に、桜は切りかかっていった。
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