第9話「戦乙女」
*
「え…、ま、マリ…!?」
ユリアと共に現れた、マリと瓜二つの顔をした白いメカニカルアーマーの少女に驚いたのは俺だけではなかった。
「え!?ま、マリちゃん!?」
「えぇ!?でも私はここに…っ!」
俺の隣にやって来た“魔砲少女”マギキュリィアインスことマチと、“魔法少女”マジョリティホワイトことマリも、目の前の少女を見て信じられないような顔をしていた。
「マリやないなら、まさか…っ!?」
「それにその姿…、って、いや、今はそれよりあのイカの魔獣を何とかしないと!」
マジョリティレッドことユウトが言いかけたセリフのその先は、俺達皆が思っていることだろう。
彼女がマリでないなら、目の前の少女の正体は、10年前に行方不明になったハズのマリの双子の妹の…!?
だが、それよりも今はマジョリティブルーことフレンダの言う通り、目の前に現れた魔獣、“イカゲッソー”を倒すのが先決だ!
『ギュリュリュルルラァアアアアアアアッ!!』
魔物である
しかし、足の再生中は他の攻撃などといった行動が出来ないらしく、海面付近で大人しくしている。
と、そこへ“マギアコンパクト”から、先程も聞こえた、聞き慣れない女性の声が聞こえてきた。
『あー、あー!聞こえるかい、“魔法少女”の皆?』
「あ、はい、聞こえてますけど…」
代表してホワイトが応答したが、その声には少し警戒感が含まれていた。
そんなマリの心情に構わず、声の主は声の調子を変えずに言葉を続けた。
『私は
「え、ヴァ、“
『うん、君達の知り合いである
それはともかく、彼女達“
そんな
『…というわけだ、諸君!
君達も色々聞きたいことはあるだろうが、全て後回しだ、まずは目の前の敵に集中してくれたまえ!』
『心配はいりませんわ、
「りょ、了解しました!」
『よし、じゃあ、イカゲッソーが足を再生していて動けない今の内に作戦を伝える!
まずは、マギキュリィアインスとマギキュリィゼロの二人は、“マギアロッド”の“
その間、マジョリティホワイト達と“
そしてイカゲッソーの“
「「「「「了解っ!」」」」」
こうして、俺達の魔物討伐実戦訓練は、魔獣討伐の実戦訓練へとシフトするのだった。
*
“
そもそもこの世界における魔獣は、マナの溜まり場である“マナプール”から発生するのだが、この時、マナに含まれる“魔力元素”の内の一つが“
そして、この“
言うならば、“魔法師”が魔法を使う際に使用する“魔石”が、魔獣でいう“
ちなみにイカゲッソーは、水の“魔力元素”を“
そして、この“
なので、これまでの“戦闘魔法師”の戦い方では、とにかく攻撃して、外皮を削っていき、内側に隠された“
だが、
「「モードチェンジ!“
『『CORE SEARCH MODE ACTIVATE.』』
アインスとゼロが、“マギアロッド”の
すると、“
そうこうしている内に、イカゲッソーの切断された足は全て元通りに再生し、再び俺達に向かって足を伸ばしてきた。
『ギュリュリュゥウウウウッ!!』
「皆っ!アインスとゼロを守るよっ!」
「「「「「了解っ!」」」」」
“
「「『サンダーカッター』!!」」
「『ファイアボゥル』っ!!」
「『アクアアロー』っ!!」
「『シャドゥカッター』!」
ホワイトとグリーンの雷の魔法と、レッドの炎の魔法、ブルーの水の魔法、そして俺の闇の魔法がイカゲッソーに炸裂する。
俺の闇の魔法は、まだまだ威力調整や命中率に難があるのだが、
『ギュララリィイイイイイッ!?!?』
イカゲッソーの全身から、青色の体液が噴き出すが、致命傷には至っていない。
「“
「“
すると、先程まで巨大な剣を持っていたユウナことヴァルキリールビーの周囲に、レーザー砲を搭載した小型ビットが複数現れ、先程までは刀を持っていたヴァルキリーパールの右手に一丁の
どうやら、剣や刀も含めて、彼女達の持つそれらの武器のことを“
「「
二人が叫ぶと、ルビーの
『ギュラリュラリュルルルルゥウウウウウッ!?!?』
それらの攻撃を受けて、さらなるダメージを受けたイカゲッソーは、攻撃を回避しようと海中深くへと潜り込もうとしていた。
「させないよ!ホワイト!」
「うん!」
「「『アクアウィップ』っ!」」
だが、海中深くへ潜り込む前に、ブルーとホワイトが水の鞭でイカゲッソーの足をまとめて結ぶようにして掴んだ。
「いっせーのー!」
「せぃっ!!」
『ギュリリリリリィイイイッ!?』
そして、二人はありったけの力でイカゲッソーを逆さ向きで持ち上げた。
つまり今、イカゲッソーは、全ての足をホワイトとブルーの『アクアウィップ』で結ばれた状態で、足を上にした状態で持ち上げられているわけだ。
「水中に逃げようたってそうはいかんってこっちゃ!『ファイアパンチ』っ!!」
『ギュリリリィイイイッ!!』
持ち上げられたイカゲッソーの頭部に向かって、右手に炎を
「“
すると、今度はルビーが“
「はぁああああああっ!!」
そして、それを両手で持って振り下ろし、イカゲッソーの張った『アクアシールド』を斬り裂いた。
『ギュルリッ!?』
「今だよ、レッドっ!!」
「サンキュー、ルビーっ!!せやぁあああああっ!!」
斬り裂かれた水の盾の間から、レッドがイカゲッソーの懐に飛び込むと、イカゲッソーの頭部めがけて『ファイアパンチ』を叩き込んだ。
『ギリリリリィイイイイイーッ!?』
頭部を下にしたイカゲッソーが、炎に包まれながら叫び声をあげた。
と、そのタイミングで、アインスとゼロの“
「皆さん!“
「了解した!じゃあ、ボク達で外皮を削るから、ゼロ達は魔砲の準備を!」
ゼロの報告を受けたグリーンが、改めてゼロとアインスに指示を出す。
「任されましたわ!」
「了解!」
「「モードチェンジ!カノンモード!」」
『『CANON MODE ACTIVATE.』』
二人の持つ“マギアロッド”がガチャンガチャン!という機械音を立てながら、先端が鋭利な槍状へと変化する。
「「『バスターキャノン・フルバースト』っ!」」
『『BUSTER CANON BURST CHARGE.』』
そして、“マギアロッド”の先端に大量のマナが集束していく。
『ギュリリリュゥウウウウウウッ!!』
自身のピンチを悟ったのか、イカゲッソーが、口から『アクアアロー』をイカ墨のごとく大量に放って攻撃してくる。
「ゼロとアインスの邪魔はさせないよ!『サンダーアロー』っ!!」
「“
グリーンの雷の矢と、パールの居合斬りのような攻撃が、イカゲッソーの放った水の矢をことごとく撃ち落としていく。
そんな三者の攻撃をかいくぐりながら、俺はイカゲッソーに接近し、“
命中精度に難ありだが、ここまで近付けば外すことは無い!
「はぁああああっ!!『シャドゥボゥル』っ!!」
『ギュララリリリュゥウウウウウウッ!?!?』
俺の放った闇の魔法は、イカゲッソーの頭部の外皮を吹き飛ばし、中に隠されていた青い塊、“
『『FULL CHARGE.』』
そして、ちょうどそのタイミングで、アインスとゼロの“マギアロッド”から、魔砲に必要なマナの収束が完了したことを告げる機械音声が聞こえてきた。
「準備出来たよ!皆、離れてっ!」
アインスの言葉で、イカゲッソーを捕まえているホワイトとブルー以外のメンバーが、その場から距離を取った。
「いきますわよっ!!」
「「『バスターキャノン・フルバースト』!ファイヤーッ!」」
『『BUSTER CANON FIRE!』』
次の瞬間、ズドンッ!!という空間を震わせるような振動と共に、収束された魔力の塊が一直線に放出され、イカゲッソーの露出した“
『ギュリリリリィイイイイ……ッ!!』
二人の魔砲で“
ちなみに、ブルーとホワイトは魔砲が当たる直前に、その場から退避していたので、無事だ。
『ミッションコンプリート!
よくやったぞ、諸君っ!!初めての“3GMS”による共闘ミッションでこれだけの成果を上げるとはっ!!実に素晴らしいっ!!』
そこへ緑川博士からの通信が入った。
何やら聞き慣れない単語が耳に入ったが、俺はそれよりも気になっていたことを確認するために、ヴァルキリーパールの元へと駆け付けた(本当はヴァルキリールビーとなっているユウナとも話をしたかったのだが、ユウナもここは空気を読んでくれて、視線で「行け」と言ってくれていた)。
俺と同じように、マリ、マチ、ユウト、フレンダも、ヴァルキリーパールの周りへと集まっていた。
「あ…、えっと…、な、何でしょうか…?」
突然俺達に囲まれて、戸惑っている様子のヴァルキリーパール。
その顔は、見れば見るほどマリとそっくりで、やはり行方不明となっているマリの双子の妹、マミなのではないかと思ったが、彼女がマミだとすると、俺達幼馴染とおよそ10年ぶりに再会したというのに、この反応はおかしい…
「えっと…、あなた、名前は…?マミちゃんじゃ、ないの…?」
マリの質問に、ヴァルキリーパールはこう答えた。
「えっと…、私の名前は
「
「
彼女の名前が
「あ、でも、この名前は
「「「「「ええっ!?」」」」」
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