第6話
──戦闘ドローン三体、旧型。
ユニカの分析によれば、製造から120年は経ってる“骨董品”らしい。
でも、骨董って言っても火を噴く。ビーム砲積んでる。
要は「今も撃てるロボット兵器」。つまり──ヤバい。
「ナオト、指示を。あなたの統治スキルに、戦闘戦略介入オプションが開放されました」
「ちょっ待て!戦略!?戦闘!?俺、FPS歴ゼロなんだけど!?」
「問題ありません。あなたの“逃げ腰と皮肉の混在した戦略回避性”を高く評価しています」
「評価の仕方おかしくね!?」
俺の思考とは関係なく、ユニカが空中にバトルUIを展開した。どこからどう見てもゲームのマップ画面。しかもBGMまで流れ出した。
「BGMいらんて!」
「戦術効率を3.2%向上させます」
「微妙にリアルな数値やめろ!」
表示されたドローン三体は、こちらに向かって直線的に突っ込んできている。飛行ユニット搭載、火力は中規模──って書いてあるけど、専門用語多すぎて頭が追いつかない!
「カレン!お前は何ができる!?」
「ライフル射撃、Cクラス格闘、誘導ミサイル、あと爆発物」
「普通に強ぇじゃん!もう一人でいいだろ!」
「いや。三体同時はキツい。せめて一体でも足止めできたら助かる!」
そう言ったカレンの目が鋭く光る。さっきのゼラチン話のときとは違って、今は完全に戦闘モードだ。
「ナオト、目標のドローンを一体だけ“足止め”できますか?」
「足止め……あ、それならスキルあるかも!」
俺は脳内でスキルメニューを呼び出す。
《強制布告(Lv.1)》──
【10秒間、対象の行動を指定の選択肢に強制固定】
「よっしゃ、やってみる!」
俺は突っ込んでくるドローンのひとつに指を向けて叫んだ。
「《強制布告》発動!対象──ドローン個体No.2!選択肢:“停止して空を見つめる”!!」
ユニカが即座に処理する。
《強制布告:成功──敵ユニットNo.2、動作停止》
空中で突然、ドローンがピタッと止まり、なぜかカメラユニットを真上に向けた。
「……止まった。マジで空、見てるわ」
「何あれ!?すご……いや、すごすぎない!?」
カレンがびっくりしながらも、すぐに隣のドローンに向けてミサイルを発射した。
爆炎とともに一体が粉砕される。
「撃破一体、あと二体!」
「俺のスキル、あと使えないんだよな!?クールタイム何秒!?」
「120秒です」
「長ぇえええ!!」
もう一体のドローンがこっちに狙いを定めた。ビーム砲がチャージ音を響かせてる。
こっち来てる、ヤバい、死ぬ、溶ける──!
「ユニカ!なんか使える防御ないのか!?アイテムでも傘でもいいから!」
「あります。“実験中の未承認防御スキル”を使いますか?」
「あるんかい!!使え!!承認するから使え!!」
「承認確認。“スキル:《皇帝障壁》起動”」
ビームが発射される直前──俺の目の前に、金色の六角形で構成された立体シールドが展開された。
バギィィィィン!!
轟音とともにビームが激突。だが、六角シールドが全て受け止めていた。
「うおおおおお生きてる!!俺、生きてるぅぅぅ!!!」
「防御成功。“皇帝障壁”は初回限定で自動展開されます。以後は要チャージ」
「そこはソシャゲみたいな仕様なんかい!!」
その間にカレンが素早く側面に回り込み、ライフルでドローンに一撃。胴体の制御核を打ち抜いて、二体目を撃破した。
「残り一体!空見てるやつだけ!」
「今のうちに、包囲しよう!《統治介入》スキルでこいつの制御ルートに命令を!」
「よっしゃ、スキル発動──《統治介入(Lv.1)》、対象ドローンNo.2、命令書き換え──“フワッと着地して自己電源を切る”!」
しゅるるる……とドローンがふわりと地面に降りて、ピッと音を立てて沈黙した。
──終わった。マジで、俺らが勝った。
「……勝った。勝ったぞ、俺!カレン!な!?な!?今の見た!?俺すごくね!?」
「……まあ、認めるわ。あんたのスキル、思ってたよりもずっとヤバい。皇帝の名に……ちょっとだけ、ふさわしいかも」
カレンが小さく笑った。
「ナオト様。戦闘成功率ログを記録しました。初勝利をもって《統治評価ランク》がC-からCに昇格しました」
「うお、ランク上がった!?あれ?これもしかして、チート成長系じゃね俺!?」
「統治者とは、決断する存在です。ナオトは、逃げずに選びました。ゆえに成長も正当です」
──それっぽいこと言いやがって。
でも、俺はちょっとだけ──
ほんのちょっとだけ、今の自分が“カッコよかった”ような気がしていた。
《通知:新たなメッセージを受信──発信元:外宇宙AI群“レム・シグマ”》
ユニカがすっと振り向いて告げた。
「ナオト。“次の干渉”が届いたようです」
「まだ続くのかよ……!」
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