6-1.小休憩

「ミリカ」

 一階の広場へと降りたステラたちは、休憩に入っているミリカとピグリティアの元に赴いていた。

「あらぁ、ステラちゃん。私の辞どうだった?」

 褒めてほしそうに目を輝かせてステラの言葉を待っている。少女はそれを流して言葉を続けていく。


「ピグリティアも、お疲れ様」

「んぅ~、本当、疲れちゃったわぁ……でも、これが終わればしばらくはお休みが貰えるから、頑張らなきゃね」

「もうっ、ステラちゃん!褒めてくれたっていいじゃないのよぉ」

 頬を膨らませて拗ねるミリカ。


「あははっ、ごめんごめん。ミリカも良かったよ」

「んふふ~、それでいいのです」

 満足げに笑ってステラへと抱き着いた。


 他愛もない休憩時間。繰り広げられるその会話に、

「失礼」

 と、口を挟む声があった。


「そちらの方は?」

 そう聞くのは、アレグリア家の当主だった。

 どうやら、ミリカとピグリティアに挨拶を済ませていたところだったらしい。近くで見ると、その美しさはより一層強く感じられ、直視するのも少しきつい。


「あらぁ、ごめんなさいねフォルグラ。この子はステラちゃんっていうの。ちょっと訳があって古い知り合いから預かっているのよぉ。ステラちゃん、こちら、アレグリア家当主のフォルグラよ」

「以後よろしくお願いします」

 フォルグラ、と呼ばれた女性は手を差し出しステラへと握手を促す。ステラもそれにつられ、手を差し出して握る。


「こちらこそ、お会いできて光栄です」

 この数日間でステラは、礼儀作法も叩き込まれていた。まだ粗はあるものの、付け焼き刃にしては様になっているように感じられるものだ。

「礼儀作法も備わっているみたいですね。この年で、さすがです」

 フォルグラも少し驚いている。


「この子、覚えが良いのよ」

 にこにこと笑顔を絶やさずに言う。

「フォルグラ……さん、とお呼びすれば?」

 ステラの問いに、ええ、と微笑を返す。


「貴女も今年から学校に通うのですか?」

「はい、だからここで預かってもらってます」

「そう、私の娘も今年からなの。それにしても、ピグリティア様もミリカ様も敬称を付けずにお呼びするなんて、とても豪胆なのね」

「まあ、良いかなって。母さんの知り合いだし」

 その言葉にピグリティアは咳払いを挟んだ。


「まあ、この子の話はいいのよ。あなたの子はどうしたの?」

「ああ、そうですね。トニートル」

 ピグリティアの言葉に答え、側に控えていた少女へと声をかける。

「はい、お母様」

「挨拶しなさいな」

 フォルグラの言葉に会釈で返事をし、その少女は皆の方を向いて喋り出した。


「皆さま、ご機嫌よう。トニートル・アレグリアと申します。アレグリア家の一人娘として、研鑽を積むために入学しました。以後よろしくお願い致します」

 透き通った声がまた耳を癒す。明瞭な聞き心地だった。

「あらぁ、行儀が良いのねぇ」

 気の抜けるような声でミリカが言う。


「恐縮です」

 ミリカにお辞儀で返す。ピグリティアが声を上げる。

「ああ!書類で拝見しているわ。今年の適性検査で満点だそうじゃない」

「ええ、一応。得意分野が多くて助かりました」

 謙遜の意を示して胸に手を当てる。


「そうでもないでしょう。十分な実力が無ければ満点は取れないように指示しているから。学力、体力共に申し分ないみたい。優秀ね」

 そんな、と手を振る。隣の母が口を開く。

「ええ、とても。この学園でさらに磨きがかかるように願っています」

「それは任せてちょうだいな。あなたも此処を卒業してるのだから分かるでしょ」

 そうですね、と頷く。


「今後も、期待しています」

「……はい、お母様」

 少し、トニートルの声が沈んだことをステラとユニは微かに感じ取り、気づいた時にはステラは、トニートルの手を掴んでいた。


「トニートル、だっけ」

「え?」

「トニートルは、楽しい?」

 は、と驚いた声が口から洩れる。


「ステラちゃん……!」

 ユニが制するが止まらない。

「楽しくない?」

「……何を」

 と、トニートルが口を開いた時に、フォルグラがステラの手を振りほどいた。


「すみません。あまり変な事を言うのはよしてもらえますか?」

「あ……ごめんなさい」

「もう、何してんのよステラ!」

 ピグリティアがステラの首根っこを掴み、持ち上げる。


「まったく、わんぱくさも少しは抑えなさいったら」

 持ち上げられたステラは不貞腐れた顔を見せていた。

「ごめんなさいね、二人とも」

「いえ、大丈夫ですよ。以後気をつけていただければ」

 そう言うとステラから数歩離れて対峙する。


『あと少しで組分けを開始しますので、ご自身のお席へお戻りいただきますようお願いいたします』


 アピスのアナウンスが場内に響くと、フォルグラは切り替えて言葉を発する。

「そろそろ席に戻りましょうか。組分けのこともありますし」

「あら、そうね。ミリカ様戻りましょう。ユニちゃん、ステラちゃんの事お願いね。その子目を離したらすぐ勝手なことするから」

 そうして皆、席へと戻っていった。ステラも釈然としてはいなかったが、ユニと共に元の位置に戻った。

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