時代劇短歌一首。
某 《ソレガシ》が
刀を手放した
理由はな
恥ずかしい故
教えない
で、こちらです。⬇
一人の男を囲んで五人の男達が刀を向ける。
五人の男達の一人が上限の構えから一人の男に刀を振り下ろした。
それをひらりと躱す男。
横から別の男が左肩から右腰骨に向かって刀を振り下ろす。
それすらひらりと躱す男。
また一人の男が刀を突き出した。
刀を躱し、二歩ほど前に進み刀を突き出した男の首筋を手刀する。
それを皮切りに次々と襲ってくる残り四人の男達を手刀で倒す一人の男。
彼は剣豪と名を轟かせた男であった。だが今、彼の手に刀はない。
「剣豪様!! なにゆえ刀を手放しになったのです!! あなたほどの方が!! 」
近くで見ていた若者が剣豪に声をかける。
「刀を持っていれば、数秒もたたずに薙ぎ払えたことでしょうに!! 」
刀を捨てても、剣豪の名をしり挑んで来る者は後を絶たない。
「いつか、いつか、あなた様に何かあったら私は、私は…… 」
弟子として認められてはいないが、師としたい側にいる若者であった。
剣豪の彼も情が移り、側においていた。
「なにゆえ、刀を手放したのでございますか!! 」
若者は心配でならない、いくら剣豪だとしても刀に触れれば怪我をする。怪我ですめばよいが、命まで取られたらと。
「刀は持たぬ。」
「剣豪様。」
剣豪は遠く空を見上げた。
「息子を、傷つけるところであった…… 」
「息子様を…… 」
若者は口をつぐんだ。
剣豪の呟いた言葉に何も言えなかった。
(大切な息子様を傷つけそうになった為、刀を手放されたのか…… )
若者は去りゆく剣豪を静かに見送った。
それは数年前。
ほろ酔い気分の剣豪に、何人もの刺客が現れ返り討ちをし帰路についた日。
剣豪は酔っていた。
剣豪は高揚していた。
そのまま眠りについてしまった。
「いたっ!! 」
痛みによって布団の中で目を覚ます剣豪。
布団にはおびただしい赤い血が。
股の脇から流れる血。
剣豪は何故かむき出しの刀を布団に巻き付け、抱きかかえて眠っていた。
布団を破り刃が太ももを傷つけていた。しかも内側。
「あ、あぶねぇ!! お、俺の息子が!! もう少しでばっさりと!! 」
そうもう少し上なら剣豪は大切な息子と離れ離れになっていた。
「刃物こわ!! 刀こわ!! 」
剣豪は恐怖あまり刀を持てなくなったのであった。
【完】
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