真実探求

森本 晃次

第1話 勾留中にて

この物語はフィクションであり、登場する人物、団体、場面、設定等はすべて作者の創作であります。似たような事件や事例もあるかも知れませんが、あくまでフィクションであります。それに対して書かれた意見は作者の個人的な意見であり、一般的な意見と一致しないかも知れないことを記します。今回もかなり湾曲した発想があるかも知れませんので、よろしくです。また専門知識等はネットにて情報を検索いたしております。呼称等は、敢えて昔の呼び方にしているので、それもご了承ください。(看護婦、婦警等)当時の世相や作者の憤りをあからさまに書いていますが、共感してもらえることだと思い、敢えて書きました。ちなみに世界情勢は、令和6年5月時点のものです。お話の中には、事実に基づいた事件について書いていることもあれば、政治的意見も述べていますが、どちらも、「皆さんの代弁」というつもりで書いております。今回の事件も、「どこかで聞いたような」ということを思われるかも知れませんが、あくまでもフィクションだということをご了承ください。


 事件が起こったのは、今から三カ月前のこと、一人の女性が、遺書を書いて、自殺を図ったかのように見られた。

「勾留中による死亡」

 ということで、マスコミも結構騒いでいた。

 というのも、まだ彼女は、あくまでも犯人ではなく、重要参考人という立場から、取り調べが行われた中で、警察から、

「証拠隠滅や逃亡の恐れあり」

 という理由にて、裁判所に逮捕状請求が行われ、

「逮捕状発行による逮捕」

 ということであった。

 逮捕された彼女は、抵抗らしい抵抗はほとんどなく、おとなしいものだった。

 それだけに、

「逮捕勾留というのは、正しい判断だったのか?」

 ということで、警察の対応を糾弾するかのような新聞記事が主流だったのだ。

 確かに、逮捕されただけで、

「その場で自殺をする」

 という人は、ほとんどいないと考えられる。

「最初から、自殺を考えていた」

 ということであれば、犯行を犯した時点で、自害を考えたことだろう、

 何も、警察に捕まるまで待つという必要もないわけで、警察というものの取り調べの厳しさによって、衝動的に自殺をしたということも普通は考えられない。

 なぜなら、警察は勾留する時、所持品なども当然、入念に調べるということだってするだろう。

「思い余って自殺」

 という人も、可能性としてはゼロというわけではない。

 また、逆に、

「容疑者に、このまま死んでもらいたい」

 と考えている人がいたりして、お弁当を差し入れてきた人が、

「その中に毒を混ぜる」

 などということをして、殺害せしめんとしたことも、昔にないわけでもなかった。

「容疑者には、容疑者のまま死んでもらおう」

 ということを考えたり、

「警察で取り調べを受けている時、真犯人が、自分にとって都合の悪いことを喋られると困る」

 ということでの殺害ということである。

 しかし、それも、

「持ってきた人物は分かっているのだから、持ってきた人が最初に疑われるのは分かり切ったこと。そうではないとすると、なかなか難しい犯行であり、実際には、殺人未遂くらいにとどめておいて、それよりも、被疑者にしゃべるなということを言いたいだけであれば、それだけで、脅しとしては十分だろう」

 今回は、いろいろ調べてみるが、

「自殺に間違いない」

 という警察の見解だった。

「服毒自殺」

 ということで、問題は、

「その毒をいかにして持ち込んだか?」

 ということであるが、調べてみると、

「よく、ミステリー小説に多雨飼われる手口」

 ということで、

「金歯を仕掛けた奥歯を思い切り噛むことで、毒薬が口の中に充満する」

 というやり方だった。

 それにしても、不思議なことはたくさんあった。

 そもそも、彼女は、容疑者ということで、逮捕状が出て、逮捕されたわけではあるが、あくまでも、

「動かぬ証拠」

 というものが確定しているわけではない。

 逆に焦っているのは警察の方で、

「容疑者を取り調べている間に、動かぬ証拠というものを探さないといけない」

 ということになっているのだ。

「警察も検察も。逮捕してからが難しい」

 といっている人もいた。

 つまり、

「警察の仕事は逮捕するまで」

 ということではなく、

「容疑者を被疑者にする」

 というのが仕事なのだ。

 犯罪が起こって、初動捜査が行われ、状況証拠を固めるために、被害者の身元を調べたり、犯行現場から、犯人に繋がる証拠、つまり、

「物的証拠」

 というものを確定させる必要があるということである。

 その物的証拠と、状況証拠から見えてくる、

「動機」

 さらに、死亡推定時刻の確定から、

「利害関係のある人たち」

 あるいは、

「動機があると目された人たち」

 それぞれの、アリバイが調べられるということになるだろう。

 もちろん、

「アリバイがある」

 という人間は、捜査線上から消えて、いわゆる、

「シロである」

 ということになる。

「動機があるかどうか?」

 というのが一番の問題で、

「たとえ、アリバイがない」

 といっても、動機がないのであれば、その人間を容疑者とすることはできないというものだ。

 それこそ、因果関係のないということで、

「衝動殺人」

 であったり、

「愉快犯」

 などという、犯人の精神状態が疑われるというような犯罪でもなければ、考えられないということで、基本は、

「動機あっての犯罪」

 ということになる。

 その動機というものにも、いろいろあり、

「復讐」

「金銭トラブル」

「金銭奪取のためのやむを得ない犯行」

 この場合は、

「身勝手な犯行」

 と裁判でみなされることが多いだろう。

 警察は、

「動機がしっかりしている」

 ということ、そして、

「動かぬ証拠」

 ということでの、

「物的証拠」

 というものを最終的に、

「逮捕勾留期間において確定させ、それを検察官が起訴する」

 ということで、

「警察から、裁判所に送検されることで、いよいよ刑罰が決められる」

 という方向に向かうのだ。

 それがいわゆる裁判というものであり、検察官と弁護士との闘いを、裁判官が裁くということになるのである。

 当然、検察が起訴するに至った証拠や動機というものについて、検察が攻めることいなるが、弁護士は、

「依頼人、つまり、被疑者の利益を守る」

 ということが一番の目的だということで、被疑者との間に事前の打ち合わせが行われ、作戦が寝られることになる。

 その時に問題になるのが、

「被疑者が、どれだけ本当のことを言うか?」

 ということである、

 確かに、警察、検察、裁判において、つまりは、

「弁護士以外」

 というものに対しては、

「被疑者の権利」

 ということで、

「黙秘権」

 というものが認められている。

 それは、

「自分に都合の悪いということを供述しないでもいい」

 ということで。

「しゃべってしまうと、自分に不利益になる」

 ということである。

 これは逆に、

「しゃべると、すべて証拠として取り上げられるということを意味している」

 ということである。

 それでも、昔の警察は、取り調べの際、暴行に及ぶことで、

「自白の強要」

 というものもあった。

 さらに、

「大日本帝国時代」

 において、治安維持法の中では、

「反政府組織」

「共産主義者」

 というものに対しての脅威から、

「拷問により白状させる」

 ということが横行していた。

 時代として、

「やるかやられるか?」

 ということが世界的に当たり前の時代だったことで、

「やむを得ない時代だった」

 ということなのかも知れない。

 だが、今は、

「疑わしきは罰せず」

 ということもあり、

「冤罪」

 という問題であったり、

「取り調べ時の自白の強要」

 ということから、逆に弁護士の作戦として、

「わざと自白をしておいて、起訴された段階に、裁判から、検察の起訴状に間違いないか?」

 と聞かれた時、

「いいえ、私の自白は、警察の強要によるもので、無理矢理に自白させられた」

 などと供述すれば、元々の裁判というものが変わってくるということになるだろう。

 だから、今では警察の取り調べも、

「行き過ぎ」

 というものは極力なくなっていて。

「昭和時代にあった、ほとんど拷問に近いようなやり方は、警察内部でも許されない」

 ということになっている。

 特に、

「熱血根性」

 などと呼ばれていた時代の刑事ドラマというと、

「取り調べというのは、とにかく自白させてしまえばいい」

 というような雰囲気だった。

 取り調べの時に、容疑者が白状したことで、そのバックにいる組織に乗り込んで、

「一網打尽にする」

 などというシーンを毎週のように見ていたではないか。

 昭和の頃というと、前述のように、

「熱血根性」

 と呼ばれるものが、

「正義」

 と呼ばれた時代である。

 だから、

「優先すべきは、人情である」

 という考え方だった。

 今の時代の人間から見れば、

「昔の古臭い考え」

 ともいえるだろうが、逆に、今の時代は、

「形式的なことが多く。血が通っていない事務的な対応や、冷静な判断力というものだけで事件を解決している」

 といえるだろう。

 もっとも、今の時代が、このような時代になったのも、

「昭和時代のツケが回ってきた」

 ということなのか、

「熱血根性」

 というのは、無理矢理にことを進めるということで、肝心な部分を見落としてしまったりすることで、

「冤罪であったり、被疑者に対しての暴行」

 などというものが起こってくるというのである。

 特に今の時代は、

「コンプライアンス」

 などということで、

「容疑者に対しての対応」

 というものが厳しくなっている。

 暴行や、脅迫による、

「無理矢理の自供」

 というものは許されない。

 ただ、一つ疑問に思うことがあるのだが、

「そもそも自供というのは、私がやりました」

 というだけでは、

「自供を引き出した」

 ということにならないということである。

 あくまでも、容疑者が犯行を行ったのであれば、

「いつどのようにして」

 という裏付けが必要ということになるのだ。

 もちろん、

「犯人しか知らない事実を供述した」

 ということであれば、

「それだけでも、起訴するに十分に足りる」

 ということであるが、考えてみれば、

「容疑者が冤罪で、無理矢理に自供を引き出した」

 ということであれば、捜査するはずの裏付けとなる、

「具体的な犯行」

 というものに、辻褄というものが合うわけはない。

 それは当たり前のことで、

「やってもいないことをやった」

 というのだから、裏付けとなる証言は、

「容疑者がでっちあげるしかない」

 ということだ。

 それこそ、警察で組み立てた、

「犯行の青写真」

 というものを、まるでヒントのように、容疑者があたかも自供したかのように語らせ、いわゆる、

「誘導尋問」

 をすることで、

「犯人をでっちあげる」

 ということになるのだろう。

 これが、昭和時代の、

「警察の取り調べ」

 ということであれば、今の人間には信じられないといってもいい。

 昭和の時代には、

「飴とムチ」

 というものがあった。

「無理矢理に自供させる」

 というのが、ムチだとすると、雨というのは、

「泣き落とし」

 と呼ばれるものだ。

 昔の刑事ドラマなどでは、ベテラン刑事の中には、必ず、

「泣き落とし」

 というものに長けている人がいて、

「落としのヤマさん」

 などと呼ばれる刑事がいたものだ。

 それに、刑事ドラマでよくみられる、

「タバコの提供」

 であったり、

「出前のカツ丼」

 などが、昭和の刑事ドラマでは、当たり前のようにあったものだ。

 しかも、昔は今の時代と違って、

「どこでもタバコが吸える時代」

 だったわけで、事務所でも、電車の中でも、さらには、取調室でもタバコが吸えた。

 会社であれば、会議室などでタバコを吸っているのは当たり前のことで、警察の取調室でも同じように、

「金属製の丸い灰皿の上に、吸い散らかしたタバコの吸い殻が、突っ込まれているというシーンを結構見たものだ。

 それは、面白いことに、そのシーンだけを映像にしていれば、それが、

「取調室」

「会議室」

「雀荘」

 のどこなのか?

 と聞かれたとしても、ハッキリと分かるというものではないということであろう。

 ただ、今の時代は、タバコに関しては、昔と違って、

「室内では、基本的にタバコを吸ってはいけない」

 という法律があることで、灰皿すらない。

 ただ、今の警察では、取り調べの際、与えられるものに、

「かつ丼の出前」

 というのはありえない。

 勾留中の取り調べであれば、決まった食事以外は与えられないというのが、決まりになっていて、それは、

「拷問」

 というわけではなく、むしろ、

「落としなどによって、自白の強要ができないような対策」

 ということであった。

 だから今は、昔に比べると、

「取り調べられている方の、人権やプライバシーというものが守られているようで、もっといえば、

「裁判で、弁護士にひっくり返されないようにする」

 ということのためでもあるのだ。

 今回の事件において、少なくとも、

「容疑者が自殺をするなんて」

 と誰もが感じたことであろう。

 当然、

「容疑者に対して、不当な取り調べが行われていなかったのか?」

 ということも言われた。

「もちろん、不当なことはない」

 ということで、実際に、警察の査問委員間の調査では、

「法律の範囲内での、正当な取り調べだった」

 ということに終始した。

 だが、容疑者は自殺をした。しかも、容疑者は、何やら遺書のようなものを書いていたということだ。

「その遺書がいつ書かれたものなのか?」

 というのは分からない。

 少なくとも、遺書を用意していて、毒を口の中に隠し持っていたということは、

「衝動的」

 かどうかまでは分からないが、

「自殺というものを、最初から考えていたということだ」

 ということになるわけであろう。

 今度の事件は、そこでいったん打ち切られ、再度時間が経ってから、捜査されることになったが、それ以上、何も出てこないことから、

「被疑者死亡」

 ということで、送検され、事件は、

「曖昧になってしまった」

 ということであった。

 実際の被害者の遺族も、納得がいくわけもないのだろうが、

「被疑者死亡」

 ということであれば、納得いかずとも、警察の捜査に従うしかないということになるのであった。

 その被疑者が勾留中に、毒を煽ったということであるが、それは、勾留期間も結構長くなりかかった時期であった。

「もう、二週間くらいが過ぎていて、そろそろ警察の方に焦りが出てくるくらいの時期ではないか?」

 と思われた時期であった。

 被疑者とすれば、

「もう少しの辛抱だ」

 ということだったであろう。

 この被疑者にここまで手間取ったというのは、この人に限らず、

「黙秘していた」

 ということがその一番の理由である。

「自分に都合の悪いことを言わなくてもいい」

 ということであるが、これが結構苦しいというものではないだろうか?

 相手はこちらに、何とか白状させようと、いろいろなことを言ってくるだろう。

 容疑者も人間なのだから、

「カチンとくる」

 ということだってあるに違いない。

 ただ、本当に犯人だということであれば、

「人を殺めてしまった」

 ということでの罪悪感から、

「何を言われても仕方がない」

 と腹をくくる人もいる。

 しかし、それはあくまでも、自分の中だけで納得できることだということであり、まわりからの攻撃が、自分の身体や精神をいかに貪っているかということを本人の自覚がないということになれば、

「次第に病んでくる」

 ということになるだろう。

 だから、病院に入院するような、

「精神疾患」

 に罹ってしまったりする人だっていることだろう。

 そのせいで、

「警察が糾弾される」

 ということもないわけではない。

 中には、警察の捜査というものの監視が、

「自分の仕事」

 というように、警察を張っているという、ジャーナリストもいるかも知れない。

 犯罪捜査というもので。

「罪を憎んで人を憎まず」

 とはよく言われるが、それも難しいことだ。

 それを誰もが納得しているということであれば、

「復讐」

 などということはないだろう。

 特に、昔では、

「仇討ち」

 ということもありえないことであろう。

 だが、江戸時代などでは、

「仇討ち」

 というものは、藩に願い出て、許しが得られれば、

「正当な行為」

 ということで、許されるのである。

 今の時代であれば、

「すべては、警察に委ねられ、警察の正当な手順での捜査によって、犯人を特定し、そこから、逮捕、起訴、裁判という

「正規の手順」

 によって、厳かに刑を確定させるということになるだろう。

 この時、

「自殺した容疑者」

 というのは、精神疾患があったというような報告もなく、誰もそんな雰囲気を感じている人はいないということであった、

「あくまでも、正規の手順による取り調べが続いていた」

 ということである。

 それは、

「相手が黙秘をしていた」

 というのであるから、それも当たり前のことだといえるだろう。

 しかし、不思議なのは、何といっても、自殺した骸の前に、

「遺書があった」

 ということである。

 そして、その遺書の内容というのが、何といっても、実に不思議な言葉であった。

 内容は、抜粋しておくが、意味としてはよく分からないものだった。

「お金の力に負けた」

 というようなことが書かれているのだが、

「どのようなお金」

 あるいは、

「それが正当なお金なのか?」

 ということが書いてあるわけではない。

 そして、その後に書かれているのは、

「お金よりも何よりも怖いのは、人間だ」

 ということであった。

 こちらも、その言葉を臭わせるような内容ではあるが、

「この事件とどこに関連があるというのか?」

 ということであった。

 それこそ、

「精神疾患ではなかったのか?」

 ということであったが、

「死んでしまった以上、精神鑑定ができるわけではない」

 ということだったのだ。


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