第7話:覚悟の午後

靴の音が、やけに大きく響いた。

一歩、また一歩。背後で夕方前の強い陽が背中を押す。

逃げ道は、もうない。


ポケットの中で、手のひらが汗でじっとりと湿っている。

心臓の音は、さっきからずっと乱れていた。


鼓動がうるさい。バレるんじゃないかと思うほどに。


向かう途中、何度も言葉を反芻した。

頭の中で、何度も、何度も。


しかし、


「もし、断られたら?」

「いや、そうなっても、平気なフリをすれば」

「そもそも、いるのか?」


このような不安が頭をよぎる。


だが、もうすぐそこだ。


あと三歩。

あと二歩。

あと一歩。


止まる。息をのむ。

指先が震える。これが、最後の関門だ。


勇気を、出せ。

いけ。お前なら、できる。

今、この瞬間を逃したら・・・。


ピンポーン。


「○○ちゃーん、あーそーぼ!」


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