追放少女とドラゴン

轟音と閃光。

そして巨大な扉の隙間から吹き付ける熱風。


その向こうで、モンスターと人間たちの壮絶な戦いが繰り広げられているのだろう。

ミナは霊体化し、壁をすり抜けて内部の様子を探ってきた。


「お姉ちゃん……中に、人間たちもいる。いっぱい、たおれてる……!」


ミナの震える声に、凪咲は表情を引き締めた。

さらに激しい音が扉を叩く。

その衝撃を受け変形した扉の隙間から見えるのは、床に倒れ伏した人影たち。

その中で、ただ一人立っているのは――かつて凪咲をパーティーから追い出したリーダーだった。


(アレン……)


憎しみはなかった。

あの時、自分が弱かっただけだ。

人を傷つけるのが怖くて、戦えなかった自分の責任だ。


だが今は違う。


「……ミナ、行くよ」


「うん!」


ふたりは呼吸を合わせ、壊れた扉を駆け抜けた。


「援護する!」


凪咲は叫び、すぐに居合の構えを取った。

ミナも霊体化でドラゴンの視界を乱し、凪咲にチャンスを作る。


だが。


「来るなッ!」


アレンが怒声を上げた。

振り返った彼の目は、激情に燃えていた。


「貴様に助けられるくらいなら、死んだ方がマシだ!」


凪咲は思わず足を止めた。

ミナも驚いて、宙でぴたりと止まる。


(……まだ、私を、認めてないんだ)


その瞬間、ドラゴンが大きく翼をはためかせ、巨体をひねった。


ガアアアッ!!


地響きのような咆哮と共に、ドラゴンの尾がしなり、鋭く振るわれる。

回避の隙を失ったアレンは、真正面からその一撃を受けた。


「ぐっ……あぁ……!」


吹き飛ばされ、無残に床に叩きつけられる。

剣も手から離れ、彼は動かなくなった。


「アレン!」


凪咲は駆け寄ろうとするが、ドラゴンが再び咆哮を上げる。

怒り狂った魔竜が、今度は彼女たちを狙って動き出していた。


「……今は、迷っている場合じゃない」


凪咲は静かに刀を抜いた。

隣には、震えながらも必死に浮かんでいるミナがいる。


「お姉ちゃん……いっしょに、たたかおう!」


「うん、一緒に」


凪咲とミナは視線を交わし、うなずき合う。

ドラゴンの巨体が地響きを立てて迫る。

だが凪咲の心は、今までになく静かだった。

居合の呼吸。間合いの見極め。

すべてが、過去の恐怖を乗り越えた今、研ぎ澄まされていく。


「いくよ、ミナ!」


「うん、おねえちゃん!」


二人は一斉に飛び出した。


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