第21話
陸将補訪問Xデーから6日前。このさらに前日にヴィーグル社がボラマまでのルートチェックを行っていた。当日と全く同じルートでコースをチェックしてくれたのである。もちろん完璧に当日と同じ状況になる訳ではないが、道路状況、所要時間、ルート周辺地形、人流量、天候といった生の情報を持ち帰ってきてくれるのは陸自側からすると本当にありがたい。またしても司令棟の会議室にて現状報告の打ち合せだ。エーリクが肉眼で確認した周囲の状況を陸自側に伝えている。
“That’s all. Beyond the city of Zeila, it’s mostly desert and sparse scrubland—just as shown on the digital twin. Borama itself is urbanized and has steady foot traffic. Urban movement will likely be limited to Borama only. Any additions or questions?”
『以上、ゼイラ市街地を超えるとほぼ砂漠または低灌木の荒地ばかりが続く。これは
「敵の予想攻撃地点をさっき4つばかり提示してくれたが、特に危険な地点は?」
“You just pointed out four likely enemy attack points — which one of those is the most dangerous?”
1中の濱口2曹が手を挙げ質問。
“The most hazardous point, in my view, is just beyond Gabdalgardia, roughly five hours into Somalia. Near the Ethiopian border, the area has wadis and hills ideal for ambushes.”
『私が特に危険だと思う地点はソマリアに入って5時間ほどのガブダルガーディアを越えた辺りだ。エチオピアとの国境に近く、地形的に枯れた川と丘陵があって伏撃に適している』
地形図が共有される。各々ARグラス等でで確認すると確かにエーリクが言うとおり国境沿いの丘陵地帯のようである。この地形に隠れつつ射線を確保して攻撃するという方針は確かにありそうだ。
“This area makes cross-border attacks from the Ethiopian side easy, and the terrain also allows for concealed withdrawal. We should take that into account.”
『ここはエチオピア側から越境攻撃が容易で、地形的に隠蔽しながらの離脱もしやすい。考慮すべきだろう』
「なるほど、ありがとう」
"I see.Thank you."
濱口2曹は満足したようだ。
“Anything else?”
『他には?』
エーリクが見回す。
“If I may, I have a question.”
『一ついいでしょうか』
珍しくあの銀髪の女性隊員、ルリエンナが手を挙げ発言した。
"Go ahead."
『もちろんだ』
エーリクが促した。ルリエンナは頷く。
“Due to range limitations, we plan to carry fuel and refuel en route from the outset. However, the exact timing for refueling hasn’t been specified. To avoid entering high-risk areas, shouldn’t we designate refueling points in advance?”
『航続距離の関係で、当初から我々は燃料を携行し、途中給油を予定しています。ですが給油のタイミングが明確に示されていません。危険地域を避けるためにも先に給油地点を明示すべきではないでしょうか』
陸自側が一斉にルリエンナを注視する。もともと無口だが頭は良さそうだと皆思っていたが、ここまで理路整然と提案ができると知らなかったのだ。
「確かにな。それならより安全な地点を決めておこう。官兵衛、3地点候補を出せ。基本的に平地で見通しがいい地点だ」
“You’re right. Let’s designate safer refueling points, then. Kanbei, give me three candidates—preferably open, level ground with good visibility.”
藤井1尉が自分のAIOSに指示すると、すぐさま電子地図上に3点がプロットされた。ちなみに官兵衛とは藤井1尉のAIOSの呼び名である。どうやら藤井1尉は歴史好きのようである。
「ふぅん……、基本的にソマリアに入ってからの地点になるな。しかもPPで言うと中間地点の荒地が多いか」
“ most of these points fall inside Somalia. And by the PP markers, they’re mostly in the mid-route wastelands.”
基本的に予定ルートの後半は丘陵、灌木が多く隠掩蔽が容易そうである。そうなると前半か中間になるが前半はそもそもまだ給油するほど燃料を使っていないし市街地も多い。必然的に行程中間となるのは妥当だった。
「……ならPP6ジーディ通過前の荒野で各車給油はどうだろう?意見がある者」
“…Then how about refueling before passing PP4, in the open ground near Jidhi? Any objections or comments?”
藤井1尉が全員を見渡す。
『……なし』
"...none."
一拍置いて陸自側が口を揃え答える。ヴィーグル側も特に異論は無いようで、各々頷いていた。
「これでどうだろうか、ルリエンナ女史?」
“How does that sound, Ms. Lurienna?”
改めて藤井1尉はルリエンナに顔を向けると尋ねた。ルリエンナも頷く。
“No objections. Thank you.”
『異論ありません。ありがとうございます』
「よし、他?」
"OK. Anything else?”
『……なし!』
陸自の声が揃う。ヴィーグルも特にない様だ。
「……よし、これで追加のMMは終了する。ながながお疲れさん、気をつけ、分かれ!」
“…Alright. That concludes the additional MM. Good work, everyone. Attention—dismissed!”
『別れます!』
全員が起立し、各個のお辞儀の敬礼。ヴィーグルは挙手の敬礼。警護任務前最後のMMが終わったのだった。
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