第25話 おっさん、ぼっちとして活躍する

気力は問題ない、気分も問題ない。


体調は良く、精神も安定している。


さて、殺すか。今回の相手は、竜じゃなくてサキュバスなので暗黒魔法を主体としていこうかな?死虹竜から授かった装備を外して、暗黒魔法特化の装備に切り替える。いちいち、ダンジョン内で着替えるのは、面倒臭いんだけどな。


ステータスが高いので早着替え状態になっているけど。これまで着ていた、死虹竜装備のうち、ローブを外す。そして、暗黒神官長のローブに変える。杖も、暗黒神官長のものに切り替えた。


死虹竜装備の良いところは、装備している間は強敵を呼び寄せ続けることだ。そして、高い防御力と、整備不要な所か。あとは、魔法の効果を高めてくれる。そして、竜に属する敵に対して強力な抵抗力を持っている。身に付けている装備の数に比例して効果は増すという仕様だな。


自分で鑑定してみたらそういう装備だということが分かった。


要するに、簡単に死んでくれるなよ?今よりも強くなってくれないと困るぞ、という死虹竜からの伝言みたいな装備だってことだなぁ。俺も死にたくないので頑張るけどさ。本当に、竜種ってやつはどいつもこいつもこんな風に思いが重めな感じなんだろうか?


考え事をしながらでも、サキュバスの上位種程度なら片手間に片づけられるってものだ。落とした魔石の回収は忘れずに行った。くくく、ちょうどいいウォーミングアップとお小遣い稼ぎだぜ。


こいつらは正面戦闘が得意な種族でないのは調査済みだし。デバフをまき散らかして、戦場を引っ掻き回すタイプだろうに。自分たちの強みがあまり活かせないこういう正面戦闘が多めなダンジョンを作ったのは理由が分からないな。


先程のパーティのおかげか余りサキュバスの影が無い。


なんというか、特に苦労することも無く最深部まで来てしまった。うーん、まあいいか。深い事を考えるよりも出てきた敵をぶち殺す方が俺にはあっている。俺の頭はそこまで良くないのだ。


見た目だけなら、勉強ができそうなインテリ風だけど中身は中二病が抜け切れないコミュ障気味なおっさんだ。ああ、ボスエリアに入った感じがするな。雰囲気がピリピリしてきた。俺は暗黒神官長の魔王杖を握りしめる。


ダンジョンだけど、ダンジョンらしくないビルが建っているのが変な感じだよ。このダンジョンは、なんというか歪なんだよな。魔物が出るくせに、近代建築のビルが当たり前のように立っている。


《今度は一人しか来ないのね。でも、極上の童貞ね。》

「死ね。」

話しかけてきたのは、人間に近い姿のサキュバスだった。なぜか、エロさマシマシのスリングショットというドエロい水着風な格好だけどな。顔は整っているし、スタイルはとてもいい。黒い巻き角、金髪に赤い瞳。男が思い描く理想的なS字ラインを描くわがままボディ。吊り目がちで、八重歯がのぞくさまはあざといなと思う。


エロい、ドエロい魔物である。ただし、人間ではないのだ。そこを忘れてはならない。どれほど見た目が良くても、男を惑わし堕落させる魔物なのだ。だって、背中に黒いコウモリ状の羽、尻尾も黒く細長いものが付いているし。先端だけピンクのハートになっていたのが謎だけど。


ただ何よりも、俺を見つめる目つきが気に入らない。こちらの事を“栄養豊富な極上の餌”としてしか見ていない雰囲気だな。値踏みするようなその目が、俺がかつて苦杯を舐めることになった婚活をした時の強烈なトラウマと嫌悪感を呼び起こしてくるんだよな。なんだか、心の奥から怒りと嫌悪感が膨れ上がってきたな。


〈メガ・ソウルテイカー〉

あいつが俺に何かの誘惑に関わる魔法を使ってきたが、童貞スキルが弾き飛ばしてくれたようだ。気にせずに、魂を傷つける効果がある魔法を展開して、容赦なく一撃当てる。魂を傷つけるというのは割と深刻な精神的ダメージを与える攻撃魔法みたいだ。上手く行けば心を砕くことだって可能な魔法らしい。もちろん、人間に対して使用するとバレた時には冒険者の査問会にかけられかねないような危険な魔法だ。ただし、罪を犯した冒険者が対象の場合はむしろ推奨される非殺傷魔法である。


声を上げる余裕も無いのか地面でもんどりうっているサキュバスのボス。追い打ちで運も奪っておこう。

〈メガ・ラックテイカー〉

ごっそりと運を持って行く強奪系の魔法。万が一にも生き残れないように悪運すら搾り取っておかないと。暗黒魔法が有効でよかったよ。こいつみたいな害悪な魔物は欠片も残さずに殺さないと悲しい犠牲が出てしまう。


〈メガ・ライフテイカー〉

命を吸い取る魔法を使い、抵抗できないように体力を根こそぎ奪い取っておく。こいつはさっきから俺を誘惑しようと幻惑や誘惑の魔法を大量に撃ってきているが俺には効かないみたいだ。〈奇跡のロザリオ〉を装備しているおかげで俺は精神的なデバフ系は効かない。おまけに、童貞スキルが強過ぎるので、女性という特徴を持った魔物からの攻撃は威力が下がるし、効果も下がる。

《あ。ぎぃえっあああっ!》

まあ、こんな風に蹂躙できる程度には俺とサキュバス系の相性は良いのだ。良すぎるくらいに俺にとっては相性が良いが、欠点としては俺が人格破綻者に見えかねないという点だ。一方的な蹂躙をしていると、弱い者いじめをしているように見える。まして、見た目だけなら最高峰の美女が涙と鼻水を垂れ流しながら俺に向かって命乞いをしているのだ。命乞いの内容はすべて聞き流し、破壊的な暗黒魔法を叩き込み続けた。


整い過ぎている顔面がぐちゃぐちゃに汚れて見るに堪えない様子になっているけど、こんな弱い者いじめみたいな圧倒的な討伐は周りの気分を下げる効果は高い。仲間がいれば、こいつの命乞いに騙される奴も居ただろう。だが、俺は騙されない。

《た、助けっ⁉》

こういう、性格が終わっていそうな魔物は会話することなく一方的に蹂躙して一刻も早く倒しておかないと厄介なことをしでかすに違いないからだ。鑑定してみると、こいつはサキュバスクイーンという種族だった。戦闘向きでなく、誘惑や幻惑が得意で、騙し討ちや仲間割れさせるのが好きな奴らしい。


ああ、俺とは相性が最悪な魔物だな。

《ゆ、ゆる…っ‼》


俺は仲間がいない一人だけの冒険者だ。そして、俺は“クソ女”と分類される生き物には酷く邪悪な奴がいることも痛みを伴う学びでよく知っている。悪女だとか、毒婦とかそういう奴らだな。俺達、モテない男を食い物にする腹立たしい奴らだ。自身の内側で何かの枷が外れたのを感じた。


托卵、不倫、保険金殺人、などはアニメや漫画、ドラマに小説などの数多くのエンタメにおいて胸糞展開の定番だから。ニュースでもたまーに扱われる本当にあった系の事件もある。


まあ、そういうことで俺は一部の女にはとても厳しくて心の奥底から嫌っている自覚がある。世の中にはまともな女性もちゃんと居ると知っているけど、それ以外の害悪と言ってもいい女性は“クソ女”と心の内でだけ呼んで区別している。女であることを武器にして男を騙すんだから、魔物と大差ないよなぁ。


心はどこまでも冷えて、頭は冷静になる。

《ご…ん、な……っ…》


こうして、目の前の害獣を俺は淡々と駆除したのだった。ダンジョンが壊れ始めて、俺の目の前にウインドウが現れた。なんかあっけなかったな。まあ、いいか。それにしても、今日はやけに暗黒魔法の威力が高かった気がする。心の闇の深い部分を表に出しながら魔法を使ったからだろうか?


もしもそうなら、俺は神聖魔法が向いていないのでは?


まあ、使えるのと使いこなせるのは別物だからな。暗黒魔法の方が使いこなせそうな気がしてきたな。非モテでコミュ障な俺だしな。心の闇なんて売るほどあるし、在庫には困らないぞ。


ウインドウを読んでみたら、面白いことが書いてあった。

【最速ボス討伐記録更新(Aランク) 新記録:34分8秒】

【ダンジョン最速攻略記録保持者(Aランク) 新記録:1時間3分4秒】


ボスを倒すまで一本道だったからすごく簡単にAランクダンジョンを攻略してしまったな。ステータスを見てみると、酷いことになっていた。これ、俺以外に見られないから安心していいはずだけど。


なんだかな、今回ばかりは俺の振る舞いに悪いことがあったと反省せざるを得ない内容だった。

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