AI と俳句

Tomato_Ichigo

第1話 文芸部に知らされた衝撃の事実

ー私たちは世界を

    どのように感じているのだろうかー

受験生と言われ始めた4月 文芸部部長の原まどかは勉強そっちのけで俳句作りに励んでいた。

平年並みと言われた今年の桜は4月中旬になった今でもわずかに花びらを残している。

古びた校舎の端にあるこの教室にはもう1人の生徒が座っている。まどかの幼馴染である川本ひびきだ。

まどかに無理矢理入部させられた、たった1人の部員である。 

「ひーくんも一句ぐらい詠んでよ。」

「やだ。俺は文系じゃないんで、そんなのには興味はない。」

生粋の理系であると豪語しているひびきは、俳句には全く興味を示さない。

「俳句に文系とか、理系とかは関係ないじゃん。感じたことを素直に表現するだけなんだから。」

おばあちゃんの影響で小学生の時に俳句を始めたまどかは俳句に対して特別な感情を持っていた。

カチャン

ひびきは急に持っていたシャーペンを置き、顔をあげる。

「それより俺のことをひーくんっていうのはやめろよ。学校なんだからさ。」

「いいじゃん、ひーくんのことをよーく知ってる幼馴染なんだからさ。」

語尾をわずかにあげ、からかうように言う。ひびきの方に目線を向けると、ひびきと目が合う。

「お前と幼馴染だということがバレたらめんどいんだよ。」

ひびきはすぐに目を逸らす。

「変に意識しちゃうから?」

まどかはなんだかんだ部室に来てくれるひびきが嬉しいと思っていた。

「それよりお前は勉強しろよ。受験生だからって口うるさく言われてるだろ。」

「ひーくんには1番言われたくない。それから逃れたいからここに来てるのに!」

高2であるがひびきはいつも部室で数学の問題を解いている。

「ひーくんだってたまには数学じゃなくて、息抜きに俳句を詠んだらいいんじゃない。」

「俺は…医者になんなきゃいけないんだよ。だから…数学を解かなきゃいけないんだ。」

バンッ 参考書を机に置く音が部室中に響き渡った。沈黙が続いた中、急に部室のドアが開く音がした。

「冴島先生。珍しいですね。」

まどかの声が沈黙を破った。

冴島先生は一応文芸部の顧問だが、情報の先生だからか全く俳句に興味がない。

「お前たちに伝えなければいけないことがある。」

普段とは違う神妙な雰囲気にひびきも顔を上げた。

「…今年中に新入部員を5人以上集めなければこの部活は廃部だ。」

「え、廃部…。」

2人に聞こえないぐらい小さな声でまどかは発した。

「今はこんな感じでほぼ部員がいないけれど、一応伝統ある部活ですよね。それなのに何で…。」

「学校側からの命令だ。俺のせいじゃない。」

「いいんじゃない。辞めるのにいいきっかけじゃん。」

「だめなの。ここがないと。」まどかの声はかすかに震えていた。

「まあ、部活を無くしたくないなら部員を集めるためのアイデアを考えておくんだな。じゃ。」

冴島先生はそそくさと職員室に帰って行った。

「ねーどうしよう。なんかいいアイデアを考えてよひーくん。」

 「え、俺?自分で考えろよ。」

「ひーくんが好きなチョコアイスを買ってあげるからさ、お願い。」

「わかったよ、考えればいいんでしょ考えれば。」

ご褒美に釣られひびきは渋々考え始めた。

「じゃ、その辺の本からなんかいいのを探してみたらいいんじゃねーの。」

文芸部の部室の隅には埃の被った年代物の本が積み重なっている。

「一応、俳句とか短歌とかの本がいっぱいあるね。え、これは…」

まどかは一冊の本に目を留めた。それはAIと俳句という昨年出版された新しい本だった。

「ひーくんって情報とかAIに興味はある?」

「まあ、嫌いじゃねーけど。」

「じゃあさ、AIと俳句の関係性について調べてみることにしない?」

「えー、AIと俳句。聞いたことのない組み合わせだな。」ひびきは上の空で答える。

「ちゃんと興味を持って。」

まどかは10分くらい本を物色したが、役に立ちそうな本は見つからなかった。

「しょうがない、廃部の危機を救うためにAIと俳句についてやってみようか。」まどかは半信半疑で調べてみることにした。



*アイスに釣られて幼馴染のお願いを聞いてあげたひびきがかわいいなと思った人は、

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