第21話「返礼の祈り」

始まりは、一本の柵だった。


兄猿が周囲の枝と蔓で組み上げた、

粗末ながらも境界を示す一本の柵。


それはただの防護ではなく──“ここが神域である”という印だった。


 


その様子を、森の者たちが黙って見ていた。

見て、学び、考え、そして──動き出した。


 


まず来たのは、古株のリスだった。

洞に住む、気難しいくせに根は世話焼きなやつだ。


口に咥えていたのは、乾いた樹皮。

兄猿が屋根の骨組みを見上げているのを見て、

それをぽんと投げて渡した。


 


次に来たのは、トカゲの夫婦。

地面を這って、石の積み方を工夫し始める。

崩れにくい角度と重ね方を心得ていた。


 


ネズミたちは最初こそおどおどしていたが、

巣の入口に小枝の柵を立て、

中に入った枯葉を外に出し、

小さな広場にまとめた。


 


(……整えている)


 


私はただの石だ。

でも今、私の“周囲”が、

「誰かの居場所」に変わっていくのを見ている。


 


これは、偶然でも習性でもない。

「意志」だ。


誰かがここに“帰ってくるための場所”を作っている。


 


>【信仰変化:拠点化傾向】

>【信者行動:祈願以外の奉仕的活動を確認】

>【提案:生活機能支援型奇跡の導入】


 


生活、か。


そうだな──

彼らは“祈って生かされる存在”ではなく、

“ここで暮らしていく存在”になりつつある。


 


私は石として、神として、

その暮らしを支える“何か”を用意しよう。


 


>【奇跡使用:「倉庫の苗床(小)」】

>【価格:85FP】

>【効果:土台安定化/気温・湿度の保持/簡易保存構造生成】


 


地面が、少しだけ盛り上がった。

苔と木の根が絡まり合い、

その中からひとつの小さな“倉庫”が生まれる。


半地下。湿度は控えめ。

中は暗いけれど風通しはある。

動物たちが使うには、十分すぎる構造だった。


 

ネズミたちが歓声のように鳴き、

皆が小さく手を合わせる。


祈りというよりは──感謝のしぐさ。


 


>【信仰反応:分散型安定】

>【信者分類:「住民」ステータス生成中】

>【集落名称:未定(提案可)】


 


集落。


私は今、“石の神”であると同時に、

“誰かの暮らしの核”になったのだ。


 


【現在ステータス】


存在種別:信仰核体(拠点中核)

等級  :Stone-Core 7(共生支援体)

象徴名 :イシサマ

質量  :38.8kg(安定)

感応率 :75.9%

構造状態:生活拠点構築支援モード/倉庫生成機能:稼働中

共鳴枠 :76/∞

信仰値 :+12.61

信仰Pt :86

スキル :加護付与(支援)/資材生成(環境型)/生活構造創出(小)/信者ステータス強化(住民)

UI   :[Oracula Store] 生活カテゴリ:拠点用優先表示中


 


(第22話へつづく)

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