第9話 漆黒の剣士
リリスが加わってからというもの、三人の足取りは幾分か軽くなっていた。
とはいえ、魔王城の中に流れる空気は、依然として緊張に満ちていた。目指すは残る“四天王”たち。果たして敵として現れるのか、仲間となってくれるのか──それは会ってみなければ分からない。
そんな中、三階へと続く階段を登り切り、重たい扉を押し開けた瞬間だった。
風を切る鋭い音と共に、レオンの頬にうっすらと血が滲んだ。思わず足を止めた彼の視線の先、広間の中央に立っていたのは、漆黒の鎧に身を包んだ一人の剣士だった。
風のような静けさと、雷のような気迫──その両方をまとった存在だった。
「ミノタウロスに妖魔……お前たちの存在は知っている。だが……」
その鋭い視線がレオンに向けられる。
「お前は何者だ? ここで何をしている?」
声は低く、だが威圧感に満ちていた。
レオンは一歩前へ出て、恐れを押し殺しながら答える。
「俺はレオン。故郷を支配する暴君を討つため、この城の“四天王”を仲間に加えようとしている。」
静寂が訪れた一瞬後、剣士の唇がかすかに持ち上がった。
「……ふん。四天王を、仲間に……か。ならば、その覚悟、力で示してみせろ!」
その言葉と同時に、剣士の足が床を鳴らした。
動きはまるで風。咄嗟に身をひねったレオンは、最初の一撃を何とかかわしたが、すぐに放たれた二の太刀は、回避しきれなかった。刃が迫り、レオンは必死に剣で受け止める。
重い衝撃が両腕に響き、手から剣が滑り落ちる。だが、そこで倒れるわけにはいかなかった。
「くっ……だが、まだだ!」
地を這うようにして剣を拾い上げると、すぐに盾を振りかざして相手の体勢を崩す。その一瞬の隙を逃さず、反撃の一閃──
レオンの剣先は、剣士の喉元すれすれで止まった。
静寂の中、レオンの息が荒く響く。そして、問いかける。
「……これでは満足できないか?」
しばらくの間、剣士は何も言わず、ただレオンを見つめていた。やがて、口の端をわずかに上げ、静かに剣を納める。
「……なかなかやるな。驚いたぞ。」
彼はゆっくりと兜を外し、鋭い目を細めて名を告げた。
「俺はアゼル。“四天王”と呼ばれる者の一人にして、剣に生きる者だ。お前の信念と腕、確かに見た。……俺も、お前に力を貸そう。」
レオンは力を抜き、ゆっくりと肩で息をついた。リリスとゴーンは、後方から静かに頷いている。
こうして、三人目の“四天王”アゼルが仲間に加わった。
剣のように鋭く、理知的で誠実なその存在は、レオンたちの旅に新たな安定と力をもたらすことになるのだった。
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