【完結】裕福で不満なんてなかったのに異世界に転生させられた俺だけど、性格よくて可愛いギルドの受付嬢や奴隷少女たちと一緒に幸せライフを満喫します。
白田 まろん
第一話 お決まりの
——まえがき——
新作です。よろしくお願いします。
——まえがきここまで——
よくある話だ。
「
キタコレ! 憧れの異世界転生だ! なんて言うとでも思ったか?
自慢じゃないが四十一歳の俺は今日まで独身だった。しかし別に人生に嫌気がさしていたとか生活に困っていたとかいうわけでも何でもない。両親は事故で亡くなっていたし他に家族もいない。親戚とも疎遠だった。これだけだと天涯孤独、それは認めよう。
しかし職場はブラックではなくむしろホワイト。残業はあっても月に十時間程度。超大手IT会社でプロジェクトマネージャーを務めており、年収は優に三千万を超えていて人間関係も良好だった。
さらに父は外資系大手の重役だったので、遺産は俺がこの先一生贅沢に遊んで暮らしても食い潰せないほどある。加えて莫大な額の生命保険も下りた。
俺が選り好みしていただけで女に困っていたということもない。つまり悠々自適な生活を送っていたというわけだ。異世界転生を望む理由など一ナノメートルもなかったのである。
「まず確かめたいのだが、アンタは神様なのか?」
「いえ。私は女神ルナユーノー様の雇われ天使です。ただルナユーノー様はアース、地球の神ではなくルサムディアという世界の惑星ジースの女神様でして」
「雇われ天使? そんなのがどうして手違いで俺を死なせたんだ?」
「そんなの……これでも私にだってラフィエルという名前があります!」
「ラフィエル? ラファエルじゃなくて?」
「ラファエル様は地球の天使様ですね。かの大天使様と名前が似ていることは光栄ですが別天使です」
「まあいいや。で?」
「実はシステム開発でうっかり一条様のデータを
「はっ? アンタはルサムなんとかって世界の女神に雇われた天使なんだろ? どうして地球人の俺のデータを消したんだよ?」
「少し前に地球のプログラムを参考にしていたのですが、そのまま開発環境と間違えてしまったんです」
開発環境とはテストする環境のことだ。システムには基本的に本番環境と開発環境があり、この二つは多少の違いがある場合もあるがほぼ同じ構成となっている。新たにプログラム等を開発した場合にまず開発環境でテストして、問題がなければ本番環境に実装するというのが一般的な流れだ。
本番環境について簡単に説明すると、実際にユーザーが利用するシステムを指す。ユーザーとは必ずしも一般個人だけではなく企業も含まれるが、ここではコンビニシステムを例に取ろう。
大手コンビニにはほとんどの店舗にマルチメディア端末が設置されているのはご存じの通り。チケットの購入やグッズの購入、住民票の交付なども取り扱われている。
この取り扱い商品が時々入れ替わっているのだが、ユーザーが利用する前にアイコンが正常に表示されるかなど、開発環境で確認してから
コイツの言うシステムが当てはまるのかどうかは知らないが。
「誤って削除したならバックアップから戻せばいいじゃないか」
「それが参考にしていただけのつもりだったため直前のバックアップを取っておらず……」
「おいおい、開発環境ですら前後比較用とか定期的にとかでバックアップを取るのが常識じゃないのかよ」
「申し訳ありません。私の怠慢です」
「ふーん。で、どうしてくれるんだ?」
「その、元に戻すことは出来ませんので、ルナユーノー様と相談してルサムディアに転生というのはいかがでしょうということになりました。一条様のいらした日本という国では異世界転生が流行っていて、望んでいる方も多いと地球の神様から聞きましたので」
「最近はネタギレのような感じではあったけどな。それで? スキルとか加護とかそういうのをやるからルサムなんとかで生きていけってか?」
「はい。よくある話です。地球の神様からも最大限の便宜を図るようにとキツく言われております」
「よくある話ねえ。具体的には?」
現実によくあってたまるものか。
「まず翻訳はジース全域で通用するように致します。例えばジースのとある国ではではニンジンに似た野菜はピュカマルヤと発音しますが、自動的にニンジンと翻訳されます。レン・イチジョウ様が発音したニンジンは逆にピュカマルヤと訳されます。もちろん読み書きも同様です」
なぜニンジン。
「それがないと生きていくのは辛いだろうから当然だよな」
「は、はい。(これだけでも凄いことなんですが)」
「なんか言ったか?」
「あ、いえいえ。それからそう! 魔法です!
「どうですって言われてもなあ……他には?」
「他に……あ、
「金は?」
「お、お金ですか? とりあえず一カ月ほど生活するのに必要な額をご用意致します」
「おいバカ天使!」
「ば、バカとはなんです!?」
「バカだからバカって言ったんだよ! いいか、耳の穴かっぽじってよく聞け!」
俺は自身の資産、親父の遺産、生命保険金など数十億の資産があったことを告げた。さすがにラフィエルは驚いていたようだが他にもまだある。
「逸失利益って知ってるか?」
「逸失利益……? ルサムディアにはない言葉です」
「俺は今四十一歳だ」
「はい」
「六十五歳が定年だとして、あと二十四年は働ける計算になるのは分かるな?」
「ええ、もちろん」
「俺の年収は三千万を超えるが仮に三千万としよう。三千万を二十四年間、それに退職金なども加えると予定収入は単純計算でおそらく七億から八億円くらいになる。逸失利益はここから税金や生活費などを引くわけだが、どんなに少なく見積もっても最低二億は残るだろうな」
「そんなに……?」
「定年後は年金だってもらえる。それをたった一カ月生活するのに必要な額だと? どこかの旧道路公団と似たようなもんじゃねえか。ふざけるな!」
「ならどうすれば……?」
「今回俺に落ち度はないんだよな?」
「ま、まあそうです」
「まあじゃねえよ。落ち度はないよな!?」
「ありません!」
「なのに努力して魔法を覚えてがんばって生きて下さいって、なんの謝罪にもなってねえだろ!」
「ですから他より高いステータスと憧れの異世界転生ということで」
「今の生活に満足してたんだ。異世界転生に憧れる要素なんざこれっぽっちもねえよ! 俺が転生を拒否したらどうなるんだ?」
「そ、それは困ります! 女神ルナユーノー様は上司として責任を問われ神格を失い、私は堕天させられてしまいます!」
「ほう。しかし一人の善良かつ幸福な人間の人生を奪ったんだ。当然の報いだろう?」
「そこを何とか……」
「だったら俺の要求を全て聞き入れろ!」
「よ、要求とは……?」
まず地球での資産の補償と慰謝料を合わせて日本の物価を基準に百億円相当の金。ルサムディアに現存する魔法に加えて、俺がイメージした魔法も含めて全て無詠唱で使えること。
HP、MP、STR、DEFをルサムディア最強の生物(お約束だがドラゴンらしい)より二桁多く。一桁でもよかったが、ドラゴンのステータスが仮に99だったとすると100でも一桁違いになってしまう。しかし二桁なら同じ条件で最低でもほぼ十倍となる。いや待て、なら最初から百倍でよくないか。よし、ここは百倍にしておこう。
もちろん常に最大出力では女性の手も握れないのでオンオフは俺の意思によることとした。普段は一般人レベルにしておき、俺のステータスを覗き見ても本来の値は見られないようにする。
他にも状態異常無効に即死無効、病気耐性、それから魔法耐性に苦痛耐性に精神耐性。これらはルサムディアが剣と魔法がひしめく、文明が中世程度のよくある異世界だから必要なのだ。日本人は特に殺人に対する忌避感が強いので、精神耐性は必須だろう。
普通に日本で暮らしていれば痺れて動けなくされたり毒を盛られるなんてこともない。事故にでも遭わない限り即死なんてまずあり得ないのだ。よほど難病や奇病に罹らなければ、発達した現代医療でほとんどの病気は治る。
しかし中世程度の文明ではそれら全てがリスクとして存在するわけだ。俺が被るいわれはない。
あとは鑑定眼、容量無制限で時間停止機能付き、遠隔収納可能で中に入れた素材の解体まで可能なアイテムボックス。転生体の年齢は十七歳で容姿端麗、超絶イケメンで絶倫であることなどを要求した。不本意に異世界に転生させられるのだから、このくらいイージーモードでなければ困る。
これでも俺はかなり譲歩したつもりだ。ルサムディアは王侯貴族がいる封建社会らしいが、爵位などは求めなかったからな。なのにラフィエルのヤツは渋ってやがる。しかし無理なら転生は認めないと言うと了承せざるを得なかったようだ。
そうして俺が降り立ったのはケルブスと呼ばれる大陸にある、シュロトヘイム王国の王都ラドルファスだった。国王の名はオーガス・ラドルファス・シュロトヘイムだそうだ。名前長えよ。冒険者ギルドや商業ギルド、生活ギルドなどがあり、エルフや獣人なども住んでいるという。
そう、よくある話だ。
——あとがき——
本日はもう一話公開します。
次話では早速ギルドの受付嬢と……
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