第4話『陽菜、嫉妬の大爆発!』



朝の光が、カーテン越しに差し込んでいた。


俺は昨夜の会話を反芻しながら、ベッドでぼんやりと天井を見上げていた。

玲奈の言葉――

「家族としてかどうかは……わからないけど」「あなたのこと、もっと知りたいの」。


(……なんなんだよ、あれ)


姉と弟。

でも、あの瞬間だけは、それを超えていた気がする。


“ドンッ”


ドアが勢いよく開いた。


「ち、智紀くんっ!!」


入ってきたのは、陽菜。パジャマ姿のまま、髪はぼさぼさ。

だけどその目は、はっきりと怒っていた。


「……どうしたの、陽菜?」


「どうしたの、じゃないっ! 昨日の夜、ベランダで……見たんだからっ!」


俺の心臓が跳ねた。


「……見てたの?」


「見てたよ! ドアの隙間から! 玲奈お姉ちゃんと、智紀くん……なんか……なんか、すっごく“いい雰囲気”だったっ!!」


陽菜の頬が、真っ赤になる。

でもそれ以上に、目に涙がにじんでいた。


「ち、違うんだ。あれは……ただの会話で」


「“ただの会話”で、あんなに見つめ合ったり、肩に触れたりするの?」


「……」


言葉が詰まる。

否定しきれない。あれは確かに、ただの姉弟の距離感じゃなかった。


陽菜は唇をきゅっと噛みしめる。


「ずるいよ、玲奈お姉ちゃん。いつもクールで、余裕そうで、でも……本気出されたら、私なんて勝てるわけないじゃん……」


陽菜が、ぐしゃっと髪をかきむしる。


「ずっと考えてたの。どうやったら、智紀くんに“妹”以上に見てもらえるかって。可愛いって思われたいって。……私、ずっと……」


ぽろり、と涙が頬を伝った。


「……好きだったんだよ、ずっと。お迎えのときから。最初に“ただいま”って笑ってくれたときから……ずっと、ずっと」


陽菜が両手で顔を覆う。小さな背中が、しゃくり上げていた。


俺は立ち上がり、そっと彼女の肩に手を置いた。


「陽菜……ごめん」


「ごめんって、何?」


「……俺、誰かの気持ちに鈍くて。無意識に期待させたり、傷つけたりしてるのかもしれない」


「ううん……違う……違うけど……」


陽菜が、顔を上げる。その目は涙に濡れて、それでもまっすぐだった。


「今からでも、私のこと……“女の子”として、見てくれる?」


一瞬、時間が止まったようだった。


俺は返事ができなかった。

彼女の真剣さに――心が、追いつかなかった。


すると――


「……お邪魔だったかしら?」


廊下から聞こえたその声に、振り返る。


玲奈が、制服姿で立っていた。

冷静な顔、けれどどこか……鋭い目だった。


「朝から騒がしいわね。……“家族の会話”にしては、ちょっと過激だったけど」


陽菜の表情が凍る。


「……っ」


玲奈と陽菜――姉妹の間に、ピリッとした空気が走る。


(これ……まずい)


沈黙の中、玲奈がゆっくりと近づき、陽菜の耳元で囁いた。


「……本気なら、手加減はしないわよ」


陽菜も、涙をぬぐって睨み返す。


「それは、こっちのセリフだから!」


俺の部屋に、静かな朝とはかけ離れた緊張が広がっていった――。

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