若干湿度のあるお部屋ですわね。
ナキの部屋。カーテン、ベッド。壁、天井、小物。被っている帽子。だいたいの物が暗色だ。そんな部屋で2人はカードプレイの為だけに10日と銀貨5枚を費やしてて作製したテーブルで向かい合う。
今回のフィールドは荒野。
見晴らしが良く、ギミックが少ない分、単純に戦術の熟練度が物を言う。
左に剣士と魔術師のコンビを展開させながらツナギは言う。
「君と始めて会ったのは、5歳の時の村の収穫祭だったか。君のお母さんが犬のぬいぐるみをくれながら2人で遊びなさいと引き合わせたんだよな」
「そうそう。急にほったらかしにされたらびっくりしたよね。そうしたら君が森の中の秘密基地に招待してくれて。このカードゲームをやっていたら、すっかり真っ暗で、村では2人が居なくなったって大騒ぎになって」
「そんで7歳になった時、落ち葉を集めて芋を焼こうとしたら突然君が指の先から火を出して⋯⋯」
ナキはツナギが展開した方向へ、双剣の騎士と黒魔導師を向かわせる。ナキの魔法で立体的に浮かび上がる絵柄。2人がサイコロを振りあった結果、ナキのカードに軍配が上がった。
「ツナギちゃんが上手く火が付かないって泣いていたから。それを見ていたマジフトのコーチが2人でペアになったらどうだって言って⋯⋯」
「泣いてないわ!⋯⋯まだまともな練習なんてしたことないのにさ。年上のチームの試合に放り込まれて。でも、上からナキが見ていてくれてると考えたら上手くプレー出来たんだよ」
「私もツナギちゃんがいたから頑張れたんだよ。凄かったよ。ガンガン走り回って年上の選手からボールを奪って」
「ナキの魔法が素晴らしいタイミングで来てくれるからね。俺が走り出した瞬間に風の魔法でスピードアップして。シュートブロックする時には土や氷の魔法を出して。⋯⋯ナキ、覚えてる?ビレッジカップの決勝戦の後半ラストプレーの時。もうロングシュートを狙うしかないって場面で、俺が右足を振った瞬間に、ナキの火魔法がドンピシャで来て、こうゴールに向かって渦巻くような軌道のフレイムショットがゴールネットを揺らして、何十年ぶりかの優勝!あのシュートが決まった感覚は一生忘れられませんわ」
「私もあの瞬間は、たまに夢に見るよ。ツナギちゃんならここからシュートを狙ってくるってビビっと来たんだよね。気付いたら杖を振ってた。あの時、相手のエースウィッチの魔法が私にところに来てたんだよ。それを箒に跨がったまま宙返りして交わして。それでいてツナギちゃんの足元にピッタリ魔法出来たから。グラウンドから見ても凄いけど、上から飛んで見てたらもっとあのシュートは凄かったよ。応援に来ていたら村のみんなの盛り上がりも凄まじかったし」
「あの場面は叫ぶよね。村長もウチの兄姉も大騒ぎでさ。⋯⋯というわけで大将を討ち取ったりぃ!」
「やられた」
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