7-2  ドーナツのレシピとケンとの再会

私は昨日見つけたBe:coffeeが気になっていた。

旦那の死後、ドーナツ作りをして持っていってるけど、若い頃してたカフェ巡りは喫茶店の仕事をしてからめっきり出来なくなっていた

「貴方もいなくなっちゃったし、退屈してるからまたカフェ巡りでもしようかしら」と遺影に向かって話す。

遺影の旦那はニコニコしてる。

素敵な笑顔で私を見守ってくれてる。


昨日、ドーナツを届けられなくてゴメンねと謝罪をお友達にしたら

気長に待ってるわ、よろしくねと言ってくれた。

また今度作る約束をした。


私はBe:coffeeに向かって歩き出した。


15分程歩くとお店が見えてきた。


ウェルカムボードには『ラーメン屋のような喫茶店』と書いてあった。

私の頭の中は『?』マークでいっぱいになる。

ラーメン屋のような?まさかチャーシューがクッキーやドーナツ代わりに出るとか?

と考えながら、とりあえずお店に入る。


いらっしゃいませ!と元気な声が聞こえる。


よく見たら昨日私のドーナツを拾ってくれた人がそこにいた。

「あら!昨日ドーナツを拾ってくれた方、あの時は助かりました。ありがとうございます。」と改めて彼にお礼を言う。

「いえいえ、当たり前の事をしただけです。」と謙遜する彼はとても礼儀正しい方だった。

彼は私を見ると、「カウンターはお怪我をされる危険性があるので…」とテーブル席になった。

怪我をするリスクを心配してくれる人は滅多にいない。

実際他のお店で高すぎるカウンターで足が届かず転落しそうになった事がある。


私はメニューに目をやると美味しそうなクッキーを見つけた。

マジックで一口サイズ、2枚一組と書いてある。


オススメはダブルエスプレッソのようだ。


私は彼を呼び、ダブルエスプレッソとクッキーを頼んだ。

その時に彼が私の目線までしゃがんで注文を取る姿が印象に残った。

ここまできめ細かいサービスがあるなんて、と私は初めて来たお店をすっかり気に入ってしまった。

注文を受けた彼は「ダブルエスプレッソ、クッキー各1つずつでお願いします!」とカウンター越しの男性に声をかける。

カウンター越しの男性は入った注文を復唱する。

ラーメン屋ってそういう事か!と納得した。

てっきりチャーシューが出てくるかと思った私は思わず一人で笑ってしまった。

コーヒーとクッキーを堪能した私は彼にお礼を言う。

名前を見ると『ケン』と書いてあった。


「こんなきめ細かいサービスは初めてです。

また来ます」と約束してお店を後にした。

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