【完結】50歳のおっさんだけど、伝説の攻略雑誌『ゲー○イト』を読んで全ての必殺技をマスターした俺は魔法国家に逆襲の即死コンボを叩き込みます

財宝りのか

【プロローグ】雑誌を読んだら最強に?

「ゲームセンターを100倍面白くする本」

 俺が呼んでいるその本の表紙には、ゲームセンターなんて、聞いたこともない文句が書かれている。

 そして中央にはデカデカと不思議な白い服を着た男が、空に向かって拳を突き上げる絵が描かれている。


 中をめくると、こんなことが書かれていた。


「独占スクープ! あのストリートマスターズⅡに続編登場!ついに四鬼神も使用可能にならぞ!」


 読み始めた頃は、書いていることが全く理解できなかった。

 聞いたこともない言葉ばかりが並んでいるし、ほとんどの絵が横並びの男たちが戦っているものばかりだ。


 だいたい、ならぞって……

 まぁ、あとあとわかったけど、この本の名物でもある、誤表記なんだけど。


 そんな、妙な本をもう暗記できるほど繰り返し読んでいる、俺の名前はヨル。

 50歳。独身。貯金ゼロ、家族ゼロ、家ゼロ。そして──魔力も、ゼロ。


 俺のいる王国ではカンパニーと呼ばれる、国を支配している巨大企業が主導で10歳になると必ず、魔力適性審査を受けなければいけない決まりがある。

 その数値ひとつで、その後の進路を決めるためらしい。

 

 その検査結果が……



──魔力量、「ゼロ」──



 これが、俺が出した魔力適性値だった。


 その結果、10歳にして、王国最果ての地下ゴミ処理場に送られることになったわけだ。


 なかでも俺が任されたのは、魔力汚染物処理場。

 この場所に送られてくるのは、魔力ある者が触れると呪いや魔力暴走が起こってしまうような危険な古文書や魔導ごみ。

 これを仕分けしていく作業。

 

 だが俺には魔力がまったくないから、適任なのだという。

 

 ──便利な言い訳だ。


 それから、このクソみたいな地下で汚染されたゴミを仕分けするだけの生活がいつの間にやら……



 40年も経っていた。


 50歳になってしまっていたのだ



 嫌なことを思い出したな……

 

 一人さみしくため息をついたとき。



 突然、部屋全体が、ぐらりと揺れた。

 ゴミの山が崩れて始める。


 そして、巨大な天井ががきしみを上げてきた。

 

 地震だ。


 ヤバい。このままじゃ──潰される。


 こんなところで死んでたまるか。

 俺は、未だ何も成し遂げていない。


 今こそ、あの本を読んで研究してきた力を試す時だ。

 

 そう、あの本というのが俺に力を授けてくれた本。


 

【ゲーメイト】


 俺はゲーメイトで得た知識を思い出すため焦らず目を閉じた。

 そして超高速で頭を回して現状と対策を検討することにした。


***************


 ある日、「不要古文書」と書かれた箱がゴミの中に紛れていた。

 気になって開けてみると、そこには数百冊の薄い本。


 読み始めると、最初は書いている文字もこの国で使っている文字ではなかったので全く理解できなかった。

 

 理解できなかったはずなのに。


 何故か、不思議と内容がどんどん頭に入ってくる。

 知らない文字のはずなのに頭が理解している感じだった。


 改めて表紙のタイトルを読んでみた。

 それが、【ゲーメイト】だ。


 ゲーメイトは創刊初期はシューティングゲームがメインだったが、60号前後からストマス2が流行することになり、格闘ゲームの特集が多くなる。

 この、格闘ゲームを特集するようになってから、本を読む手が止まらなかった。

 面白すぎる。

 

 中に書いてある事柄は、格闘家たちの最適な動きや攻め方が緻密に攻略されている。

 そして、各キャラクターのアクションがとにかく派手でかっこいい。

 

 読み進めるうちに、その本に載っている数々の技が、その技たちの特徴が、俺の頭の中ではっきりと“形”になっていくのを感じた。


「……なんだこれ、魔法より派手じゃねえか」



 しかし、他のゲームと呼ばれるものの内容はさっぱり頭に入らなかった。

 特に、「家庭用」と呼ばれるゲームのページは少なかったがむしろ不愉快だった。

 ほとんどが、俺の嫌いな剣と魔法の内容だったからだ。


 でも、読者投稿コーナー「ゲーメイト パラダイス」は面白かった。

 特に、投稿者、「ダイヤモンド荒北」という人の漫画はいつも面白かった。


 話し相手もいないし、仕事以外やることもないから毎日毎日「ゲーメイト」を繰り返し読んでいた。



***************

 俺はゲーメイトを読み、そこで得られた攻略情報と技の数々をイメージトレーニングしてきた。

 

 崩れ落ちる天井。それは置き換えれば巨大な敵が上空から襲ってくることと同じ状況だ。


 上空から襲い来る敵に対してはこれ以上ない技がある。

 あの、表紙に描かれていた技だ。


 足を踏み込む。腰をひねる。ググッと拳を握り込む。


 コマンドをしっかりイメージ。

 前、下、斜め下、パンチ。


 40年分の“イメージ”を、一撃に込める──


 天井が落ちてきた。全てが崩壊しようとしている。


 いくぞ!


「上──翔──拳──ッ!!」


 思い切り上空へ勢いを付けて飛び上がる。


 落ちてくる天井を轟音とともに、俺の拳が天井を突き破る。

 そのまま空高く舞い上がり、40年ぶりにおれは地上に現れることが出来た。

 

 見ることもなかったまぶしい太陽の光に目がくらむ。



 飛び上がったのち、下降した後、ゆっくり目を開ける。


 そして、目の前に現れたものは全く予想だにしない景色だった。


「なんだ・・・これ?」


 眼前に広がるのは、俺がうっすら覚えていた、ごみ処理場があった田舎の景色ではない。


 空をも貫く巨大な魔導建造物群。

 空中を列車が走り、都市全体が光と魔法で覆われている。



──《アークメガロ》。



 それが、魔導文明最大の都市国家の名だと知るのは、もう少し後のことになる。


 つづく


************

《次回予告》

必殺、上昇拳を使って勢いよく出た地上は全く見知らぬ景色!

そこで出会うのはお約束のお嬢様!さぁ、何が起きるのか!

次回「羅王咆哮拳を使わざるを得ない!」

************


ここまで読んでいただき、本当にありがとうございます。


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これからも、毎日連載続けていきますので、

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