ヒーローたちが跳梁跋扈する世界で、僕が与えられたのは大好きなエロ動画の女優を具現化する力だった
翔龍LOVER
第1話 青天の霹靂はピンク色の髪
強く思ったことがもし叶うなら、何を願う?
僕は、ずっとヒーローになりたかった。
六畳一間の自室のベッドで横になり、テレビをつけると18時のニュースが始まったところだった。
【今日の午前7時頃に発生した銀行強盗及び人質猟奇殺人事件ですが──】
【今日の午前12時頃に新宿で発生した通り魔連続殺人事件の続報によると──】
【今日の午後2時頃、反政府組織アズリエルと見られる武装集団が首相官邸にロケット弾を数発打ち込み──】
景気の低迷や未来への絶望なんかが影響したのか、ある時から飛躍的に増加した凶悪犯罪。大切なものを一方的に
それと同時に、とある技術革新が世界を
人間の「思いの強さ」を、一人につき一つだけ、現実に存在する強大なエネルギーへと変換し思いのままに操れる科学技術「
平たく言うと、漫画やアニメに登場する特殊能力みたいなのをマジで使えちゃうやつだ。
この地球上は、余すところなく
これがどういうことかと言うと……全ての人間は、世界中のどこにいようが「強い思い」を抱いた時点で、特殊能力やら超能力やらに、ある日突然目覚めることができる仕組みだということだ。
そして、その能力に目覚めた人間は「ヒーロー」と呼ばれる。
【──なお、首相官邸にロケット弾を撃ち込んだ武装ゲリラは、ヒーローギルド『ゲイボルグ』のトップチームによって事案発生から1時間後に殲滅されました】
テレビには、この国が誇る超有名なヒーローギルドのエースヒーローが映し出されていた。
彼の名は「
僕と同じ高校一年生──というかクラスメイトだ。
いつだったか、メディアのインタビューであいつは「この世のありとあらゆる悪を叩き斬る能力を、残りの寿命すべてと引き換えでもいいから欲しいと思った」と語っていた。その思いが誰よりも強かったから、
僕もヒーローになりたいな……。
何の取り柄もないし、クラスでは虐められ、女子とはまともに喋ったこともない。
学校が終われば家にこもってひたすら漫画やアニメやゲームに没頭する毎日だ。まあ別にそれが悪いって思ってる訳じゃないから、この先ずっとこの調子でもいいかなって思ったりすることもあるけど。
それでも、やっぱり最後にはいつも思うんだよね。
ヒーローになって、悪を倒して、みんなから認められて。
人生を変えたい、って。
かなり自分本位な動機だってのは自分でも自覚してます……
だって、インタビューされたヒーローたちが告白する「強い思い」は、まさに正義の味方って感じだから。
この世に
でも、彼らが口にする動機はちょっと怪しいと思ってる。
その理由は、「強い思いを抱くのは家族を殺された者か陰キャの専売特許」なんて言われちゃうくらいにヒーローには陰キャが多いから。よほど僕らは
陰キャには聖人君子が多いって?
そんなアホな。インタビュー用に用意されたのとは違う本音が、絶対に彼らにもあるはずだ。
僕が抱く動機の不純さなんて人間なら誰しも持ってて当たり前の範疇だし、
未だ「
あの華城だって昔は陰キャだった。
自分の意見を強く言えず、言葉を口にしたかと思えば言ってることは極端で、だから友達もいなかった。確かにあいつは病的に真面目な奴だったけど、「犯罪を犯した奴は全員死刑」とか極端なこと言ってるほうが思いが強いって判定されるのか。
はぁ、とため息を吐き、PCを立ち上げて無料のアダルトサイトにアクセスする。
ストレスの解消はこれに限る。ストレスも性欲も溜め込むのはよくない。
僕がモニターに映した動画のサムネイルには、僕が陶酔しているいつもの女の子が映っていた。
ピンク色でロングの髪に、幼さの残る可愛い顔。
張りと柔らかさが共存したようなHカップの馬鹿デカい胸。
肋骨のラインがわかるほどにスラッと細まったウエスト。
腰の細さが際立つハリのあるお尻と肉付きのいい太もも。
奇跡のカラダを持つ現在20歳の彼女の名は、リリーといった。
アイドルや女優はもちろん可愛いと思う。だけど、リリーを知ればそんなものには興味が湧かなくなってしまう。
アイドル顔負けの可愛い顔と暴力的としか言いようのない魅惑のカラダを持つ少女が、カメラの存在を忘れているとしか思えないほど乱れ狂って性の獣と化すんだ。そんじょそこらの芸能人で太刀打ちできる訳があるか?
今日は、まだ一度も見ていない彼女の最新作がアップされていた。しかも僕の大好きなNTRだ。
心・具・体の準備を全て整えた僕は再生ボタンをクリックした。
エロ動画とは、視覚と聴覚を最大限に活用して僕たちユーザーを性的興奮のるつぼへと
よってその最大の特徴は、普通に暮らしていたら僕のような恋愛最下層民が決して見ることなどない色々な女性の体を鑑賞することや、ノーマルな行為だけでなく仮に付き合ってる彼女がいても容易には体験すること叶わぬ異常な行為を覗き見れることに他ならない。
性的嗜好は多岐に渡るため心底満たされるにはある種の困難性を伴う。その状況下で自らの渇きを懸命に癒そうとするユーザーたちは、真の理想といえる作品になかなか出会えず日々ストレスを溜めている。
そんな僕たちにとってリリーは救世主だ。
シチュエーションによって様々な役柄を演じ分けるものの、彼女は主にSを生業にしている。
ハード・ソフト問わず支配されたい男の潜在意識を強力にくすぐる反面、強気な彼女がたまに見せる恥じらいや
まぁ色々あるが、しかしセールスポイントを一つに絞れと言われたらそれは彼女が
彼女の声が、動きが、体の変化が。
どう見ても
もちろん「女優」だから演技が仕事なのはわかってる。でも、彼女だけはそうじゃないと僕は信じてる。
すっごいなこれ……過去最高傑作かも。
気がつけば四時間が経過していたが、もうやめよう、もうやめようと固めた意思を嘲笑うかのように僕の体の一部はどんどん熱を帯びていく。
とうとう六時間が経過した頃、新品のティッシュ箱が一つ空になった。
こっちも空っぽだ。すっからかん。ていうか痛い。あー、もうこれ以上は無理……血が出る。
背中を椅子に預け、免疫力がゼロになるまで徹底的に余力を吐き出し切ったうえでの賢者モードを堪能しながら呆然と天井を眺めていると、僕の真横で急に誰かの気配がした。
見ると、僕の部屋のはずなのになぜか一人の女の子が立っている。
ピンク色でロングの髪、僕の通っている高校指定の制服であるブレザーと膝下丈のスカートを着た、見たことのある──というかついさっき6時間くらいかけてカラダの隅々まで見逃さないように観ていた女の子が、僕のことを静かに見下ろしていたんだ。
パンツを上げることも忘れ、放心したように彼女へ尋ねる。
「なんで君がここに」
「初めまして。
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