2章

第18話 親子の雑談配信①

「えー、こんばんは。Vランド6期生の花咲ベイビです。そんなわけで今日はデビューして2回目の配信です」


 翌日夜。場所はマンションの自室。

 学校終えたて夕飯も食べた俺は今日も配信を開始した。


「ちなみに本日の配信もフツーの雑談回の予定です。次回辺りからはそろそろ本格的にゲーム配信とかやっていきたいな~って思ってるんですけど、まあゆーても前回がほぼファンネーム決めになっちゃってリスナーさんたち……じゃなかったバブ友のみんなとあんまりお話とかできなかったのでご了承ください」


【コメント】

 :おk

 :いいよ

 :了解!


「あっ、あと例のごとく今日もなぜか親子同伴です」

「こんママ~。Vランド3期生の花咲ママミです。みんなよろしくね~」


【コメント】

 :こんママ~

 :まーたん!!

 :こんばんは~!

 :なぜかwww

 :もしやまた侵入されたのかw


「そうですね。ふと見たらもう隣にいましたね」

「ママも気がついたらいました。ビックリ」

「いやビックリて。俺はともかくそっちはおかしいでしょ。どう考えても自分でカギ開けて入ってきたんじゃん」

「だって気がついたら開けてたんだもん」

「気がついたら開けてた!? なにそれ無意識でやってたってこと!? 手慣れすぎでしょ! そっちのが逆にビビるよ!!」


【コメント】

 :草

 :それもう夢遊病やんw

 :たしかにこえーな笑

 :当たり前のように息子の部屋に不法侵入する母親

 :鍵開けがもはやライフワークと化してもーてるやんw

 :空き巣もビックリの手際


「空き巣もビックリ……いやほんとそれですよ。もう犯罪者予備軍だもの。……えっ、一応聞くけど俺がいないときとかはさすがに入ってないよね?」

「え…………………………うん、任せて!」

「おぉい嘘だろその間はどう考えても! 任せてってなんだよ!」

「でもでも、やっぱり定期的に掃除しないとホコリとか溜まっちゃうし……」

「いやいいよ! するよ掃除くらい自分で!」

「え~ホントかなぁ? ほっとくとたっくん、すぐゴミ箱にティッシュの山作っちゃうんだから」

「だぁあああ! それは言わないで!!」


【コメント】

 :ティッシュの山……?

 :んん?

 :はてなんの山やら……

 :おい、なんかこの部屋栗クサくね?


「あの……ついでに聞くけど掃除以外はなにもしてないよね?」

「うんまぁ……勝手にいろいろ触ったらたっくん怒るかなと思って特には。へ~たっくんのお部屋ってこんな感じなんだな~と思って覗めたりはしたけど」

「……ほんとに?」

「うん、ほんとほんと」

「それならまぁいいけど……」

「あっ、強いて言えばパソコンの中はチロッと見ちゃったかな」

「うぉおおおおおおお!!! それ一番ダメなやつだろ!!!!」


【コメント】

 :w

 :wwww

 :数ある中でも最悪の行為で草

 :エグいw

 :悪魔の所業やんww


「いや~たっくんがまさかああいうサイトを見てるなんて。ずっと小さいままのイメージだったけど、いつの間にかたっくんも成長してるんだね。ママ、少し寂しいかも」

「…………」

「そりゃあ思春期の男の子だし、ママだってその辺の事情については一定の理解はあるよ? でもね、学校の勉強だってあるしほどほどにしないとダメよ? まあたっくんの場合は成績もいいからそこまで心配はしてないけど」

「…………」

「ただね、どうしても見るにしてもジャンルは絞るべきだって思うな。もちろんあくまでフィクションだからいいけど、痴漢とかってやっぱり犯罪だし少なからず悪影響だと思うの。だからママとしてはあんまり教育上積極的に見てほしくはないかな。他にも――」

「あの……もう勘弁してもらえませんか?」


【コメント】

 :草

 :まさかのガチ説教突入w

 :始まって早々これはかわいそすぎるw

 :唐突に性癖を暴露されてしまうたっくんw

 :羞恥プレイにもほどがあるww

 :しかもこれが新人Vの配信2回目という事実

 :地獄やw


「というわけで、今後は母子おやこのイチャイチャ甘々モノ以外認めません。お気に入りに登録してあったのもすべて一新しておいたので後で確認しておくように」

「いやなんだその謎の結論! てゆーかえええ!? なにしてくれてんの!?」


【コメント】

 :まーたん……w

 :まーたん「ママ以外は許しません!」

 :ダメだこの母親、早くなんとかしないと

 :つーか地味にとんでもないことしてるw

 :お気に入り解除か……俺ならキレてますね

 :素人ものとかタイトル分からないのっていったん外すと探し直すの面倒だったりするんだよな


「はぁ……」


 マジか……俺がせっせと集めた珠玉のコレクションたちが。

 てか部屋の鍵もそうだけどなんでPCのロックも当たり前みたいに解除されてんだよ。俺パスワードちゃんとかけてたよな……?

 ……まあいいや、あとでなんとか履歴から復活させよう。



【コメント】

 :そういえばだけど、ファンネームは決まったけど開幕の挨拶は変えないの?


「え、開幕の挨拶?」

「あーたしかに! せっかくかわいく“バブ友”ちゃんに決まったんだし、たっくんの挨拶もなにか新しく考えてもいいんじゃない?」

「んー……言われてみればたしかにアリかも。それじゃああれですかね、同じバブつながりで『こんバブ~』とかにしてみますか? 捻りなさすぎ?」

「えっ、いい! かわいい!」


【コメント】

 :ええやん!

 :悪くないと思う

 :なんならそれ以外ないまである

 :カンペキ!

 :意外とすんなり出たな


「マジっすか? なんか完全思いつきなのに予想外に好評でうれしいんですけど。えっ、じゃあもう決定でいいですか?」

「いいんじゃないかしら? ママは大賛成よ」

「そっか。――よし、なら早速使ってみますか。え~では改めましてみなさん……こんバブ~」

「こんバブ~」


【コメント】

 :こんバブ~

 :こんバブ~

 :こんバブ~


「おお~」


 すごい、見事な一体感。なんとなく感激。

 てかマジで普通にうれしい。こういう自分の配信だけの要素とかがあるとどんどん自分がちゃんとVTuberになっていってる感があっていいな。

 よっしゃ、それじゃあ思いがけず挨拶も決まったことだし今日も入り切って配信していきますか!



――――――――――――――――――――――――――

どうでもいいあとがきコーナー


こんバブ!(いつもお読みいただきありがとうございます!)

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